第〇三説|とある、欠片のおはなし。
これまでも様々な、沢山の作品を創作してきた。携えた鞄の中身も随分と増えたし、それが持つ色も変わったりした。そんな様々な欠片の中にも、飛翔刹那として、或いは四条都葩として世に出る前、まだ何者でもない頃に生まれた欠片も存在する。
その中の一つ、仮称として「demo_hanikamu.wav」とするが、これが生まれたのは、もうかれこれ四、五年も前の話だ。当時僕は何となく、僕じゃ無い誰かに曲タイトルを決めてもらい、そこから曲を書こうということした。ありがたいことに、幾つもの良い名前があり、今もその原案をときたま漁っては、書き直したりということもしているが、その中に只一つ、とんでもなく素晴らしいものがあった。その名前はいつかその曲が世に出た時に、またお話することにするが、その曲が仮称「demo_hanikamu.wav」である。その名前をもらった当時から、歌詞を書いては直しというのを何度もやっているものの、中々しっくりくるように出来上がらない。それをもう何年も繰り返していた、今年の春、遂に部分的にではあるが、曲が完成したのである。当時僕は「街」という曲のdemoを書き進めていたのだが、何とも偶発的、いや最早運命的に、この「demo_hanikamu.wav」が出来上がったのである。この曲は歌詞と曲自体のリズムなどが同時に生まれたのだが、これが出来た瞬間の胸の高鳴りというモノは本当に凄まじいものであった。
「こんな素晴らしいモノを、一体全体どうやって世に出せばいいのか、到底現状の技術知識レベルでは創り上げられない」という考えと同時に、「こんな素晴らしい曲、早く世に出したい」という何とも矛盾する相対的な感覚に蝕まれることになっていた。今でもこの答えは出せずに、曲を世に出せずにいるが、出すからには、やはり素晴らしいカタチで出したいという気持ちが強いのである。そんな曲の断片的なモノを、いつか白黒版で出せたらと、考えながら、今日も僕は創作をするのであった。