プロローグ
俺には憧れてる人がいる。
静まり返ったフロアの中、一室だけ煌々とした明かりが漏れている。
聞こえてくるのは軽快なメロディと、タン、タンと規則正しく刻まれるリズム。
ドアを開けるとそこにはやっぱり、俺が想像してた人がいてーーーー
ピピピピピピ!!という耳障りな音に夢は掻き消される。
目覚まし時計を壊す勢いで叩き潰して、音を止める。
朝から最低な気分だ。
今でもまだ思い出すなんて。
必要最低限の身支度を整え、鏡をチェックする。
「よし、今日の俺もイケている」
鏡の中に映るのはどこをどうとっても申し分のないイケメンだった。
それも当然その筈。
自分は今人気急上昇中の5人組アイドルグループ「reveal」のリーダー、柊秀であるのだから。
テレビをつけて最近の流行りをチェックする。
ある程度情報を仕入れておけばどこかで役立つかもしれないため、朝の情報番組を見るのはかかさない。
その時。
テレビがアイドル特集を始めた。
写っているのは「paradox time」。
同じく人気急上昇中のアイドルグループ。略称ダイム。
3人組のグループで巷の女子高生たちの間で大人気だそうだ。
その中でも一等目を奪われて仕方ないのは、グループのエース的ポジションの明日凪奏斗だった。
ムラなく染まった茶髪に通った鼻筋、優しそうな相貌をしているというのに瞳は意思のある強いまなざしをしている。
画面の中の彼はキラキラと輝いていて、神に愛されて生まれてきたかのような男で。
彼は、俺がこの世で1番嫌いな人間だった。
「な〜にが、俺には憧れてる人がいる。だ!!!憧れてないっての!!!」
クッションを壁に叩き付ける。
それでも怒りは収まらない。
「お〜お〜、今日は荒れてるねぇやっぱ。でも正直ダイムと番組被るのは仕方ないだろ。なんてったってお互い人気急上昇中のアイドルなんだから」
「そんなに嫌い?明日凪くん。俺は好きだけどなぁ〜」
そんな風に茶化してくるのはグループメンバーの、隼斗、蒼真だ。
「なんべんも言っているだろう!俺とヤツの確執は!」
「あ〜はいはい、お前がいじめっ子と間違えられた話ね?」
隼斗がおどけて言う。
「でも、勘違いだったんでしょう?それをいつまでも引きずらなくても良くない?」
心配そうな顔で蒼真も畳み掛けてくる。
そう。ただ勘違いされただけなら、こんなに嫌わなくたっていい。
違うんだよって訂正してそれで終わりだ。
興味のないやつにどう思われようがどうだっていい。
でも、それで終われないのは。俺があいつに…
「はーい!もう出番だよ!準備して!」
思考をかき消すようにプロデューサーの声がする。
どうやら今日の番組が始まるようだ。
「reveal」のリーダーとしての自分に切り替え、メンバーに声をかける。
「行くぞ、今日も俺たちが1番だ。」
番組ではトークをして歌って踊って。
サングラスをかけた司会と、最近行ったおすすめの店の話なんかをする。
歌もダンスもいつも通り完璧だった。
出せうる限りの力を出したと思う。
懸念点はダイムの番で観客が俺たちと同じくらい湧いていたことだが、問題ない。
俺たちの歓声の方が大きかった。と、思う。
番組中、明日凪とは一度も目が合わなかった。
それも当然だ、仕事中なのだから。そうはわかっていても無性に腹が立って仕方なかった。
だが、そんなことはおくびにもださない。
何故なら俺はプロのアイドルだからだ。
そんな風に仕事に集中して、アイドルの鏡として振舞っていた時、番組から重大発表がなされた。
「reveal」と「paradox time」のコラボ楽曲発表!!!
そんな訳のわからない発表が、サングラスの司会の口からなされたのだ。
初めましてこんにちは。
作者の05と申します。ここまでお読み下さりありがとうございます。
続きは今晩にでもアップ出来たらなと思っております。
夢で見たBLを現実にしたくて書いてみました。
短編は書いたことあるのですが、長編は初めてなので頑張りたいと思います。
ぜひ引き続き読んでくださると嬉しいです。