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1-3話 こちら思い出のミートボールです。


さっきの無愛想なウエイターとは違い気さくな笑顔に少し安堵した。



「食べたい物は決まってるんですけど、仮ってなんですか?」と聞いてみると、彼はいきなりぱあっと表情が明るくなり語り出した。



彼曰く、ここは開店して間もない店らしい。



「だからまだメニューも決定はしてなくてお客様次第でメニューも決めていこうと考えてるんですよね」




(成る程、だから店内は無人だったのか)

納得してるといつのまにかウエイターが横にいたので「わっ」と驚く。



相変わらず仏頂面で表情を変えない。



何事と思ったが、ペンと注文表を持ってるのが見え彼は注文を取ろうとしてると理解し、さっき入り口で見たリハプッラを注文した。



リハプッラには、周吾との思い出がある。 




彼が初めて連れて行ってくれた多国籍料理店で食べた料理である。



それは、フィンランドのクリームソースがかかったミートボールだ。



何度もミートボールと言うと、その度に彼にリハプッラだってと言われながら食べたフィンランドの家庭料理である。



日本のミートボールとは違い、外はカリカリで中はジューシーな味に、いつも食べてるミートボールより美味しいと驚いた記憶がある。



それまで彼とのデートは洋食のレストラン中心だったが、彼はこの時自分に初めて「実は言ってなかったけど、多国籍な料理が好きなんだ」と打ち明けた。


旅行が好きな彼だからすんなり納得したが、彼は引かれないか不安だったらしい。



今となっては付き合い始めの初々しいエピソードだ。



楽しかったな。あの頃はー。



回想に浸っていると、横にウエイターの気配がした。



何ごとかと思ったらウエイターは手に籠を持っていた。



荷物入れだ。



荷物を入れろという事なのだろう。



一応接客するつもりはあるみたいだ。



ジッと見られ、いる?と聞かれたみたいな表情だったので籠を受け取りお礼を言うと、またウエイターはガラスに対面した入り口付近に戻って、待ちの姿勢で立つ。



そこにいると入り口開けてもお客入ってこないんじゃないかなと思っていたが、初めて入った客が彼に注意するのは気が引ける。



ふとスマホのアルバムを見返す。



デートや外食したご飯と周吾との写真ばかりだ。



前は一人でファミレスやカレー屋に行くにも勇気が行ったが、彼とのデートで今は同僚や後輩に美味しいご飯屋を教えてたりできるまでになった。



スポーツはしない方だったけど、周吾が食べてばかりでは脂肪がつくからと一緒にストレッチしたりして、付き合っていない頃と随分自分も変わったなと思った。




そうしているとキッチンから良い香りがしてお待ちかねのリハプッラが出てきた。 




ウエイターは一言「お待たせしました」と言ってコトッとセットメニューが運ばれてくる。




うわ、美味しそう!

つばきは料理に見入ってしまった。




メインのリハプッラにパンと小さいスープ、かわいくカットされたフルーツがサラダも付いている。



本当にセットであの値段なのかと疑問に思う。



いや、頂くが。




食べる前に写真を撮らないと思い、シャッターを構え躊躇してしまった。



店内には自分一人しかいなく、シャッター音が響くと考えられた。



「あの」とついにウエイターを呼ぶと彼は猫背のままこっちに来る。




「ここって写真撮っても大丈夫ですか?」と聞くとウエイターが答える前に奥から「いいですよー」とコックのよく通る声が聞こえた。




よかったと安堵しているとウエイターはまた猫背のまま元の位置に戻っていく。




許可は貰えたので、料理をカメラロールの額面に収まるように綺麗に写す。




頂きます。そっと手を合わせいよいよ一口目を味わう。



ー美味しい!ー



つい笑いが出そうになって慌てて水を飲む。



ウエイターに見られてないか気になったのだが、どうやら彼はキッチンの奥にいるのか、店内には自分一人だけだ。




リハプッラは周吾と一緒に食べた時とは違い味にクセがない。



たしか一緒に食べたのは細かく切ったオリーブが生地に入っていた。


今食べてるのは日本人用にアレンジされていたがこれはこれで美味しい。



彼がいたら、そういう事を話しながら今食べていたのかなと思うと少しゆっくり食べる事にした。



結論。魔窟の料理はとても美味しかった。



交互に食べたパンも、付け合わせもどれも口に合い食べ終わる頃にはこれから買い物した後はリピートしようとと決めた。



お冷を飲み切って満腹感に浸っていると、いつの間にか店内に戻ったウエイターがお冷を持って来た。



「••ありがとうございます」とグラスを渡すと無言で受け取り水を注いでいく。その間ウエイターを横目で観察する。



無愛想だけど絵にはなるよな。 



爽やかではなく、髪はもっさりしていてパーマだろうか。



若干うねっていて下を向かれると目が合わせづらい。



スタイルも良さそうだが彼は気を抜くと少し猫背じみている。



同じ接客をしているので目に余るところはある。



周吾とはまた違ったタイプだ。



彼は接客業だからと髪型は気にする方だ。



確かに周吾もオフの日はラフな髪型になってるけど。



そこまで思い出し、ふと

(私、なに考えてんだろ)

とお冷を飲み干す。




後は会計だけになり、改めて店内を見渡す。



細長い鰻の寝床のような作りの建物は、カウンターの席の他に対面式のテーブルが二つ。



決して広いとは言えない。



なんだかまるで「定食屋見みたい・・・ 」



「そうなんですよ!」


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