プロローグ
「怒り」
それは、感情の中でもっとも抱きたくない一番扱いにくいものである。
そして、それは他者に向ける事もあれば己にも抱く。
しかし、動物の中には怒りをコントロールするものがいる。
そう、人間だ。
人間は予想不可能だ。
彼らは怒りを扱い方を間違えてる事もあるが、糧にし生きながらえるものである。
そして、人間の凄さはそれだけじゃない。
他の動物に比べて知恵が発達している。
ここで昔話を一つ。
知恵。
それを持つ事は人類の侵した最初の罪だった。
天国で暮らしていた女は蛇に唆され、神から食べてはいけないと言われていた禁断の果実を食べ知恵をつけた。
やがて男も女に勧められ、その実を食べ同じように知恵をつけた。
お互いはそこで自分達が裸だと気付き恥を知った。
男と女はそれぞれ木の陰に隠れる。
それを神が不審がる。
『なぜお前達は隠れるのか』
『私達が裸だからです』
『あれを食べたのか!』
知恵を持ち神の怒りに触れて下界に堕とされた。
知恵があるということは疑うことを知る事。
「疑う事」 それ自体が即ち罪である。
昔々まだ地球に人間がいなかった時の話。
そして、それから壮大な時間が流れ一人、楽園からではなく魔界から地球に堕とされた者がいた。
その者こそがこれから始まる「物語」の「主役」なのかもしれない。