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第10話 対照的な僕と彼女

僕は榎田に連れられ、お昼ご飯に待ち合わせていたショッピングモール内のレストランへ向う。



あぁ…緊張する。

この向かうまでの時間は、ネガティブな僕自信が僕のことを精神的に追い詰める。



自らのイメチェンに冷汗をかきながら、榎田に連れられ待ち合わせ場所へ到着した。



「お、先に来てたのね

 おまたせ~」



榎田は相変わらず陽キャ全開に挨拶し、席へ向かう。。

どうしたらそんなラフなテンションで女の子に絡めにいけるのか。



「実は春江君…おしゃれすると爽やかイケメンになるのでした~」



おい!!

勝手にコーディネイトして、勝手にハードルを上げるな!!



僕は内心怒りにも似たツッコミをかますが、そんな事を口に出して言えるわけもなく、言われるがまま彼女たちの席へと連れていかれた。



「あれ!春江君、すごく似合ってるじゃん!」


最初に口を開いたのは名雪さんだった。

彼女は目を輝かせ、その美しい瞳で僕のことをまじまじと見つめてくる。



――やめてくれ。



恥ずかしいから、今すぐにでも他の話題に移ってくれ。



「春江普段からその格好すればもてるぞ」



にやにやと笑い語り掛けてくる秋山さんも僕に追い打ちを仕掛けてくる。

もちろん褒められてる自覚はある。



しかし、それ以上にイメージチェンジをした僕を見られているこの空間がきつすぎる。



「春江~好評でお父さんはうれしいぞ」



「親目線かよ」



いつもは僕が榎田に内心でツッコミを入れていた言葉を今日は秋山さんが代弁してくれていた。

ありがとう秋山さん。



「今日は一日この格好でいてくれるみたいだぞ」



「おい、誰もそんなこと…」



「あ、店員さん。

 とりあえずドリンクバー四つ」



榎田は僕の言葉を聞く気はないらしい。

正確には聞こえているが無視をしている気がする。


僕の"変化"を楽しんでいるに違いない。





――昼食後


ようやく僕への集中砲火は落ち着いたのか、いつもの四人の他愛のない日常が戻っていた。

といっても僕は未だに気まずく、ドリンクバーで取ってきたオレンジジュースをストローに口をつけ、会話に入れないように装っていた。



「あ、そろそろ映画の時間だよ」



名雪さんが腕時計の時間を確認すると、映画上映の20分前を指していた。

ナイス時間と名雪さん。



僕らはそそくさと会計を済ませ、同じくショッピングモール内の映画館へと向かう。

道中僕は未だに会話に入れず、彼らの一番後ろについて歩いていた。



「ねぇ、似合ってるよ」



――また…彼女は小声でそうやって…


僕の心をわかっているかのように名雪さんは僕にしか聞こえない小声で囁いてくる。

榎田と秋山さんは先に映画のチケット前売り売り場でこれから見る映画のチケット購入をしてくれている。



「あ、ありがとう」



前回の僕とは違う。

僕だって名雪さんに抵抗がついたんだ。


内心誇らしげに、彼女の言葉に勝った気分になっていた。



「あれ?前みたいにのけぞらないね」



彼女はニヤニヤしながら僕のことをからかってくる。


彼女は僕の反応を楽しんでいるんだ。



もちろん悪意はないだろう。

僕を単純にからかいたいだけなのだろう。


しかし、以前の僕ではないのだ。

内心どや顔を浮かべてるつもりだった。



「何ニヤニヤしてるんだ春江」



榎田…僕は顔に出ていたのか…。


慌てて平常心を取り戻すと、僕は榎田から映画のチケットを受け取った。



「榎田ありがとう

 あと、にやにやはしていない」



僕ははっきりと否定してやった。


そんなことを考えていると映画は上映を開始した。

両隣にはしらないおばさんと榎田。



どうせなら名雪さん達を隣が良かった。

なんて考えてみたりする。



映画の内容は最近人気のアニメの映画であった。

特殊な力を得た主人公の少年が、世界の平和とヒロインの女の子と最後には結ばれるという少年誌にありがちな無難な内容だ。


人気の声優と時勢に合った内容であった為か大ブレイクした為、予算をかけた豪華なアニメーション制作と大スクリーンの臨場感に圧倒され、僕も終盤に差し掛かる頃には映画の世界に引き込まれていた。



特殊な能力は抜きにしても、人生はこんな順調にハッピーエンドを迎えることはできない…。

映画を楽しむ自分と、それを否定する冷めたアンビバレンスな自分たちが評論をする。


もちろんこんな事を言えば空気を読めないと嫌われるのはわかっている。

だから全て心の中に留めておく。



「ねぇ!よかったよね!」



そんな内心を知る由もない名雪さんは、僕に映画の感想を共有してくる。



「う、うん…面白かった」



同意したことにより、彼女の顔をぱあっと明るくなりさらに映画トークが弾ける。

彼女がアニメや声優さんへの造詣が深いことは意外であった。


僕はてっきりにわかファンの類ではないのかと思っていたのだが、改めて人の事を見た目や印象だけで判断していけないと感じさせられた。



しかし…。

榎田と秋山さんの姿が見当たらない。

映画終了後の退場の人込みに流されてはぐれてしまったのか。



「アキちゃんたちお手洗い行ってから行くから、ゲーセンで合流しよだって」



名雪さんは自身のスマホを見ながら僕に話しかける。

どうやら二人は一緒にいるがトイレに行く際はぐれてしまったらしい。


映画館からゲーセンまではそんなに遠くないし、ゲーセンで待ち合わせするのが得策だろう。



僕は名雪さんと二人で映画館を出ることとなった。



「ねぇねぇ、今日の春江君やっぱりかっこいいよね

 いつもの大人しい感じもいいけど」



――名雪さん?


距離が近い、二人を待ってる間誰も助けは来ない。

こんな台詞を…この距離感で…

僕にはハードルが高すぎる…

なんだこの全肯定美少女は。



「あ、そうだ」



彼女は何かを思いついたかのように自分のスマホを取り出す。

何をするつもりなんだ?



彼女はカメラアプリを起動し、画面には自分と彼女がリアルタイムで動いている。


ま、まさか…



「はい!春江君、笑顔で自然に!」



「え、ちょっまっ…」



名雪さんは僕の顔に近づき、二人で写真を…。

スマホのシャッター音が僕の脳内に響き渡る。


周囲の買い物客は僕らの事なんて見ていない。

きっと僕だけがこのシャッター音の余韻を感じている。



「はははっ!

 春江君かたすぎぃ」



なゆきさんは笑いながら撮れた写真を見せてくる。

僕の顔はぎこちなく、とても強張っていた。


それと対照的に名雪さんの眩しい笑顔が納められている。



「これはこれで面白いから送るね!」



名雪さんは僕のラインへ写真を送信してくる。

最近四人でグループラインを作り、そこから名雪さんと連絡先を交換していた。


といっても、個人的にメッセージを交わすのは初めてである。



初めての女性からのライン。

しかもそれは不器用な僕と器用な彼女。

あまりにも対照的すぎる。



しかし、彼女は満足げに写真を眺めている。

これはこれでいいのかもしれない。



「ありがとう、名雪さん」



僕は笑顔を浮かべる彼女を横目に、送られてきた写真をしっかりとスマホに保存した。

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