表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい  作者: 唯野晶
モンスターシーズン
38/142

翠の嵐

「はぁ……はぁ……シルフィードダンス!!」


マナはまだ残っている。体力もまだ残っている。ナタリーとのコンビネーションも抜群だ。

モンスターの数は全然減っている気がしない。むしろ増えているようにさえ感じる。


「アイシクルランス!!」

「ありがとうございますです!!」


ナタリーさんの魔法で何体ものモンスターが凍り付いて動かなくなる。その横を2人ですり抜けて先へ進む。

こんな状況でも安心感すら覚えてしまうのがなんだか不思議だった。


「ナタリーさん!そっちに居ましたか?」

「いえ……!見つかりません!」


こんな状況なのに、夏休みにアリシアさんの故郷で行ったウサギ探しを思い出してしまう。


(楽しかったなぁ……)


郷土料理を作ってくれるというアリシアさんのお母さんの依頼で、みんなで野山を一日中駆け回って、泥だらけになりながら暗くなるまで探し続けて……。


捕まえてきたウサギをみんなで調理して美味しく食べたあの時間はついこの間の様に鮮明に思い出せる。


セレスティアル・アカデミーに帰る途中に寄り道したレヴィアナさんの家は敷地内で迷子になるくらいの豪邸だった。3賢者のアルドリックさんも本当に気さくにしてくれて、今度ぜひ遊びに来てくれと言ってくれた。


イグニスさんの家で身動きが取れなくなるくらい豪華なドレスを見に纏っての舞踏会は忘れられない思い出になった。


あの小旅行を経て、生徒会のみんなとすごく仲良くなれたと思う。

学校が始まってからも特にナタリーさんとは部屋を交代しながら、お互いの部屋の同じベッドで勝手に瞼が落ちるまでずっと話し続けていた。


そんなナタリーがこうして横にいていると、2人でシルフィード広場にお買い物を行っているような気すらしてくる。


『ミーナは将来何したいんだ?』


ウサギ狩りをしているときにノーランさんに聞かれた質問をふと思い出した。

あの時、ミーナは質問の意味が分からず首をかしげたが、今ならなんとなくわかる気がした。


(そっか……ミーナは……ミーナは……!)


「ミーナさん?どうしたです!?」


急に立ち止まったミーナをナタリーさんが心配そうに覗き込んだ。


「ううん!なんでもないです!」


首を振って、ミーナはまた走り出す。


(ミーナは……ミーナはずっと、ずっとこうしてみんなと遊んでいたいです!)


卒業式が終わって、またレヴィアナさんの家に行ってみんなでお泊りして、みんなでイグニスさんの家に遊びに行って、今度はちゃんとドレスを着ながら舞踏会をする。


今度はセシルさんの家にもいってみたい。本当にただ広い草原が目の前に広がっていて、思いっきり駆け回ってそこにみんなで寝転がるだけのお泊り会もしてみたい。


そんなことを想像したら自然と笑顔になってしまった。

こんなに楽しい時間を作ってくれたみんなと、もっともっと楽しいことをしていたい!


(そのためには……)


他のクラスメイトも見つけたい。でも、今はそれよりもここを離れて、ナタリーさんと無事に生き残るほうが……。


「ナタリーさん……――――っ!!」


―――――敵の攻撃も激しくなりましたしもう戻りませんか?


そう声をかけようと振り返った時だった。


「きゃっ!」


小さな悲鳴が聞こえた。ナタリーさんがモンスターに襲われそうになっている。


(あぶない……っ!)


とっさに魔法を詠唱しようとしたが、一瞬躊躇した。

無詠唱のエアースラッシュを放ってもこの強力なモンスターたちを退けるには至らない。

ガストストームを詠唱している暇は多分ない。


(でも……!)


迷っている間にもモンスターはどんどんナタリーさんに迫っている。


(迷ってる暇なんて……ないっ!)


手をかざして必死にありったけのマナを込める。


「――――エアロクラッシュ!!」


口が勝手に動いた。知らない魔法だった。不可視の衝撃がモンスターたちを吹き飛ばした。


(いまのは……?)


それでもモンスターの猛攻は止まらない。

またナタリーさんが襲われてしまう、と思った瞬間には体はもう動いていた。


「嵐の力を宿し、全てを防げ!猛威の嵐の盾、ストームガーディアン!」


再び使った事の無い魔法を詠唱する。ミーナとナタリーさんの周りには遥か上空まで渡る巨大な盾が展開されモンスターの攻撃を防いでいた。

今まで使っていたウィンドウォールとはけた違いの防御魔法だった。


(え?なんだったです……?いまの……?)


自分が使ったはずなのに、まるで自分ではない他の誰かが使ったような、そんな感覚だった。

得体の知れない力に恐怖を覚えながらも、必死にモンスターからナタリーさんを庇い続けた。


「稲妻と共に破壊せよ!破壊の嵐の瞬間、ブリッツストーム!」


風の刃が飛び交い、強大な嵐が現れ、一気にモンスターたちを殲滅していく。

たった数秒間の出来事だった。

辺り一面のモンスターは姿を消し、その代わりに赤い地面が広がっていた。


(すごい……すごい……!)


はじめて使った自分のオリジナル魔法の力に驚きを隠せなかった。


(ミーナが……やったです……?)


「すごい!すごいよミーナ!」


ナタリーさんが興奮して駆け寄ってくる。


「いつこんなすごい魔法を使えるようになったの?」

「わ、わからないです!なんか勝手に……?」


右耳に触れようかと思ったけどやめた。理由はどうあれ、この状況でこんなに強力な魔法を使えるようになったのは良い事しかない。理由は後で考えればいい。


(これなら……みんなを守れるです……!)


まだ気を抜くわけにはいかないけど、この力があればこの窮地を脱することはもちろん、当初の予定通り他のみんなを探すことも出来る。


「風よ、我を天へと導け!飛翔の風、レヴィテーションブリーズ!」


シルフィードダンスより何倍も体が軽くなった様に感じられる。風の力でナタリーさん体を抱きかかえて空高く舞い上がった。


「わっ!わっ!!」

「ミーナが運ぶのでナタリーさんは牽制してください!」

「うん!任せて!」


まだ魔力の残量も体力も十分残っている。これならなんとかなるかもしれない、と少しだけ迷って再び歩を前に進めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ