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悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい  作者: 唯野晶
対人模擬戦闘
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それぞれの夜_セシルとミーナ

セシルは一人屋上で空を見上げていた。


――――俺はセシルがまさか戦闘で防御に入るとは思わなかったけどな


昼間ガレンに言われたセリフがずっと頭の中を渦巻いていた。

僕は魔法の戦いの場で一番自由でいたかった。

魔法が飛び交う中を紙一重で躱して、誰にも捕まらず、一番自由なのが僕だったはずだ。


(そう……それが僕の魔法で、強くなる理由だったはずだ)


戦場で一番自由であるためには一番強くないといけない。

そして、生まれつき才能があったのか、特段の苦労もなく僕は誰よりも強くなっていた。

難しい魔法であっても少し練習するだけで大体の物は使えるようになった。

魔法の腕を上げると周りからは称賛されたが、特に達成感の類を感じることもなかった。

それでも新しい魔法を身に着けるとまた少しだけ自由になれた。

誰よりも早く戦場を駆け、それが世界で一番心地よかった。


(――――でも……)


ガレンに言われるまでもなく、僕が戦いの場で誰かを守るなんてことは初めてだった。


誰かを守るなんて枷以外の何物でもないはずだ。自由からはかけ離れている行為なのに、なぜか地に足を下ろし、アリシアを守っている瞬間は、戦場で駆けているときと同じくらい心地よかった。


フェンスを乗り越えて屋上の縁に腰を掛ける。夜風が髪を揺らす音さえ響くような静かな夜だった。


(……アリシアに言われたから?)


別にアリシアとはこの学校に来てから知り合った仲だ。

生徒会メンバーではあるけど、これまで特別親しいという訳でもない。


(……アリシアの考えに興味があったから?)


実際に見たアリシアのオリジナル魔法は凄かった。もし僕も僕自身のオリジナル魔法なんて言うモノが使えたらもっと自由になれるかもしれない。

それは確かに心が震えるけど、あの守っていた時はオリジナル魔法の存在も知らなかったから関係ないはずだ。


(……じゃあどうして……?)


自分の心が分からなかった。こんな風になったことは今まで一度もない。

アリシアに言われたから?アリシアの作った武器を見て心がざわついたから? 考えれば考えるほど答えは見つからない。考えれば考えるほど胸の中がもやもやしてくる。


この学園に来てから面倒な事もどんどん見えてくるようになった。

【貴族主義】だって当然知ってはいたけど、正直そんなもの真に受けている人はいないと思っていた。


(みんなもっと楽しく生きればいいのに)


やっぱり慣れないことはするものじゃないと立ち上がり大きく伸びをする。

セレスティアル・アカデミーが高台にあることもあり、どこまでも見渡せるような夜空が広がっていた。


(……ん?あれは?)


旧魔法訓練場の屋根の上に見慣れた緑髪が星を反射して光っていた。一歩屋上から踏み出し、夜の闇に身を投げる。


「華麗なる風の舞踏、我らを包み込み、奏でよう!優雅なる旋律、シルフィードダンス!」


魔力を込め、風を纏い、夜を切り裂くように駆けていく。


「やあ、なにしてるんだい?」

「わわ!セシルさんじゃないですか!こんばんわです!」


夜も更けた時間だと言うのに、ミーナはいつもと変わらない笑顔を向けてくれていた。


「こんな夜更けに一人で出歩いていたら危ないよ?」

「それはセシルさんもですよ!」


それもそうかと僕は笑った。この子も実に不思議な子だ。イグニスの猛攻を躱し、その上最後の一撃を見事に決めて見せていた。


「そうだ、ちょっと時間もらってもいいかい?」

「もちろんです!」


ややこしいことを考えるのは一旦やめて、今夜はこの素敵な風魔法使いと夜風を全身に浴びながら、駆けることにした。



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