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悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい  作者: 唯野晶
物語の終わり、創造の始まり
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何事にも挫けず全ての悪しき運命を切り開く守り神

「ほら!喰らえ!」


ノーランから次々と光線が放たれる。

防壁を貼って防ぐが、今までと何かが違う。爆発で破壊されるというよりは、防壁が侵食され消え去っていくようなそんな感覚だ。


「みんな気をつけろ!直撃したらそのまま消えてしまう!」


実紗希が声を張り上げる。


「消えて……って!?」

「文字通りだ!」

「そうだよなぁ!お前はこれでアルドリックを消したんだもんな!」

「うるさい、黙れ!」


実紗希が叫び、ノーランに斬りかかる。


「待って!実紗希!危ない!!」


ノーランはにやりと笑い、杖に魔力を込めた。


「っ!!」


一斉に光線が実紗希に向けられる。単身で飛び込ませることがノーランの作戦だったのだろう。


「実紗希!!」

「それがなんだ!!!」


ディヴィニティ・エンブレイスから放たれた魔力砲を実紗希の刀が次々に切り裂き、そのままマルドゥク・リヴェラムに肉薄する。


「また2つに切り裂いてやる!!」

「今度こそ本当に無駄なんだよ」

「くそっ!なんでっ!!」


先ほどと異なり、今度は刀がマルドゥク・リヴェラムの障壁に阻まれる。


「当たり前だ!これコレは理外と理外を重ね合わせたものだ。ゲーム内の攻撃で倒されるような存在じゃねーんだよ!」


ノーランが杖を掲げ、マルドゥク・リヴェラムの周囲に魔法陣が現れる。そしてそこから今度は竜巻が発生し、実紗希を襲う。


「うわっ!!」


実紗希は吹き飛ばされたものの、空中で体制を整えた。しかし、そこに再び魔力砲が放たれる。


「……っ!?」

「ストーンバリアっっっ!!!」


何重にも展開されたストーンバリアが実紗希の目の前で魔力砲を防いだ。


「そうか、それも理外の魔法だったな」

「実紗希!」


吹き飛ばされた実紗希に駆け寄る。


「ナタリー、裏に回れ!」

「はい!わかりました!」


マリウスとナタリーが見事なコンビネーションでマルドゥク・リヴェラムをかく乱する。

先ほどのセシルほどではないが、ナタリーが狙いを定めさせないように四方から攻撃を繰り返し、その隙に魔法の詠唱を済ませたマリウスが巨大魔法を繰り出す。


「はは……いいコンビじゃないか……」


ノーランが笑う。

マルドゥク・リヴェラムも反撃するが、二人の息の合った連携に攻めあぐねている。


「大地の心臓よ、その眠りから覚醒せよ!我が呼び声に応え、その力を解き放て!大地震動、ガイアトレマー!!」


今まで防御に回っていたガレンもこのままだとじり貧だという事を感じ取ったのか、攻撃を仕掛けた。大地を割り巨大な地割れがマルドゥク・リヴェラムに襲い掛かる。


「はははっ!いいぞ!もっとだ!そしてお前たちの無力を感じ取るがいい!!」


ノーランが笑う。砂煙が巻き上がった中から魔力砲のエネルギー弾が放たれた。


「くそっ!ガレン!よけろ!」


マリウスの声が響き渡る。間一髪、ガレンが避けたがそのエネルギー弾は地面をえぐった。


「俺も!」


実紗希も再度ブレイズワークスを使いなおし攻撃に参加する。


「はははっ!いいぞ、いいぞ!!」


みんなの攻撃は直撃しているはずなのに、マルドゥク・リヴェラムの障壁は一向に破れる気配がない。

私も攻撃に参加したかった。でも、もう少し、もう少し―――――。


「うわぁぁぁぁっ!!」


実紗希がマルドゥク・リヴェラムに吹き飛ばされた。


「くそ……なんなんだよその障壁……!」


実紗希は砂を払いながら立ち上がった。


「だから言ったろ?理外と理外の融合だって」

「くそっ!」


こちらの攻撃はいくら直撃させても障壁を破れず、向こうの攻撃は掠っただけでも致命傷になりかねない。

しかもノーランの魔力はあのディヴィニティ・エンブレイスという杖の効果なのか、尽きる様子が無い。

こんな理不尽とも思える状況で、私は、今はまだ見ていることしかできなかった。


「ははっ、俺も今まで頑張ってきたんだ。もう少し頑張ってくれよ?」


ノーランが手に持った本に魔力を込めて、マルドゥク・リヴェラムとディヴィニティ・エンブレイスに魔力を送る。

ディヴィニティ・エンブレイスとマルドゥク・リヴェラムの足元に魔法陣が展開した。


「みんな!集まって!!」


私の合図で全員が一か所に集まる。そして全員で防御魔法を唱え防御態勢を取ると同時に、マルドゥク・リヴェラムとディヴィニティ・エンブレイスから特大の魔力砲が発射された。


「っ……!!」


なんとか耐え抜いたものの、辺りは焦土となっていた。


「ははっ、みんなで縮こまっていいざまじゃないか」


ノーランが笑う。


「俺の、この『アリシア』のオリジナル魔法でもダメ、一体どうしろってんだ……」


実紗希が唇を噛む。


「ねぇ、実紗希。この世界で「一番強い人」って誰か知ってる?」


実紗希は首をかしげた。


「一番強い人?あぁ、三賢者のだれかか?」

「違うわ」

「え?」


私は実紗希の肩に手を置いた。そしてそのままほほ笑んだ。


「『レヴィアナ』よ」

「レヴィアナ?お前ってことか?」

「違うわよ。私じゃなくて、『レヴィアナ』。悪役令嬢を演じてた、『レヴィアナ』」


実紗希は要領を得ていないようだった。


(うん、こんな戦い終わらせてちゃんと教えてあげないと)


なんで『レヴィアナ』が死んだのかずっと不思議だった。

攻略対象の4人全員が「自分よりすごい」と言った、天才魔法少女の『レヴィアナ』が、普通の魔法の暴走なんかで死ぬとは思えなかった。

でも、『レヴィアナ』のノートを読んでその謎は解けた。

この時のことを、こんな途方もない理外の存在を想定してたんだ。


「ノーラン、知ってる?」

「んだよ。レヴィアナも一緒に攻撃して来いよ。全部無駄だからさ」

「そう、みんなのおかげで完成したの」

「はぁ?相変わらずわけわかんねーよなぁ、お前」

「それで知ってるの?」

「何が」

「『何事にも挫けず全ての悪しき運命を切り開く守り神』の名前」


これまで攻撃に参加せず、ずっと仕込んでいた魔法陣も、みんなのおかげでようやく完成した。





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