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【高校生の頃の私_3】

夢。夢を見ている。高校生になった私の夢の続きの続き。


あれから私は特に本当に何もなく、セレスティアル・ラブ・クロニクルの新作を買いに行く日までの毎日を自室でやり過ごした。


何をしていたか覚えていない。

ただただ、布団に包まって、ソフィアともほとんど話さず、どこにも行かず、ただ死んでいないから生きているような毎日だった。


『ぴろん』


ずっと約束してた親友からの連絡が入った。

やっとその日が来たみたい。待っているのが長かったのか、短かったのかも正直よく覚えていない。


『今日は家を出るのはやめたほうがいいです』


このところ私がお願いした通りずっと沈黙を保ってきたソフィアが、珍しく話しかけてきた。

機能として存在するのは知っていたアラートの音もこの時初めて聞いた。


「突然どうしたのよ」

『とにかく家を出るのを辞めることを推奨します』


そんなことを言われても今日はずっと楽しみにしていた約束の日だ。この日のために生きていたといっても過言ではない。


「そんなこと言っても、なんでなの?」


何度理由を聞いてもソフィアは教えてくれなかった。いつもは全部教えてくれて、それ以上の事までしてくれるのに今日はおかしかった。


あまり長い間ここでソフィアと言い争っていても仕方がないし、そろそろ家を出ないと待ち合わせの時間に遅れてしまう。

それに目的地までのルートは覚えている。ソフィアがいなくても到着することはできるだろう。

いつまでたってもアラート音を止めてくれないソフィアに少しだけ愛想をつかし、今日はソフィアを置いて外に出ることを決めた。


「お待たせー」

「さすが時間ぴったり。あれ?今日はソニカつけてないんだ」

「そういうあんただって」

「俺は最近ずっとつけてないよ。それに、なんか家出るときに急に騒ぎ出してさ」


相手にソニックオプティカがついていないというだけで少し安心してしまう。

もし同じように思ってくれてるのならうれしい。


「そっちもなんだ。うちのもそうだったの。目的地には到着できるでしょ!って置いてきちゃった」

「ふーん。なんかバグでも起きてんのかなー?」

「どうだろ?最近使ってなかったからすねちゃったのかも?」

「ま、いっか。それより早くいこ。俺実は行き方知らなくてさ」

「もー、何よそれ」


何か月ぶりの再開かもわからないのに「久しぶり」の一言もない。

それが私にはなんだか心地よかった。


「あ、そうだ。せっかくゲームなんて買いに行くんだからいっそのこと電車とか使ってみない?」

「あ、それいいかも!俺乗ったことないよ」

「私も。確かあっちのはずれに走ってたよね?」

「そうそう!乗ってみよ!」


少し小走りで記憶を頼りに目的地に向かって二人で向かう。


「あー、あったあった。意外とソニカ無しでもなんとかなるもんだな」

「そうね。正直私ちゃんと合流できるか不安だったもん」

「実は俺も。そっちもつけてきてないとは思わなかった」


乗りたいですと告げると、やけに嬉しそうに駅員さんが案内してくれた。

電車は思った以上に広く、乗客は私たちの2人しか乗っていなかった。自由に座って良いというから近くに座った。

進行方向に対して横に引っ張られて進む感じは不思議で面白かった。


「そういえば別れたんだって?風のうわさで聞いたよ?」

「全くいつの話してるのよ。もうそろそろ1年になるわよ?」

「だってお前全然学校来ないんだもん」


私たちの話を聞いている人はだれもいない。世界で2人きりみたいだった。

シミュレーションじゃない、正解のない探り探りの会話。


「というかそっちこそ、最近学校行ってないって聞いたけど?」

「うーん、なんか飽きちゃって。それよりさ、今度のセレクロ、リメイクだけど新要素もちゃんと入ってるみたいなんだよ!マリウス様の新しいシナリオとか入ってないかな?」


もう『マリウス様』の事を語りだしたら止まらない。


2人きりの電車の中、何度もキャラクターの見解の相違で言い争った。

何度したか分からない、いつもの会話。

喧嘩して、叫んで、そうじゃない!と否定して、口を利かなくなって、でもずっと近くに座ったままで、またどちらからともなく話し始めて。それでまた喧嘩して。


「だってマリウスって絶対マザコンだって!!」

「マリウス様の事そんなこと言うな!!!」

「ぜーったいそう!!結婚したってお嫁さんよりもお母さんのほうを大切にするんだって。私にはわかる!!あー!アリシアがかわいそうったらないわよ」

「イグニスバカのあんたに何がわかるっていうのよ!!」


きっと何にもならない時間をずっと過ごしていた。

お互いがあんなに熱を入れて一生懸命主張したのに、10分後にはきっと何も覚えていない、そんな喧嘩。


でも楽しかった。

何を言っても絶対にこのマリウスバカは意見を曲げないだろうし、私も何を言われても曲げない。そうして、言いあって、自分の好きなキャラのいいところを挙げあって。


――――たぶん、私と同じだったんだと思う。

この世界に少しだけ疲れていた。


さっき言ってた「なんか飽きちゃって」っていう言葉はとてもしっくりきた。

世界はとても小さくて、全部知ることができて、あんなに楽しみにしていた恋愛も知ってしまって、そういうものかと思っていた。


「そんなこと言って、そんなこと言ってるくせに実はセシルとかの事のほうが好きになっちゃうんだって」

「そんなことないわよ!私はセシルとくっつくくらいならマリウスとかガレンと一緒に居たほうが絶対楽しいと思う!」

「イグニス好きはどこに行ったのよ……それにマリウス様は絶対に渡さないから!!」

「とかいって、実はセシルの事好きなんじゃないの?」


ずっとこのまま電車が着くなと思っていた。

私がそんなことを願ったからだろうか。

電車は永遠に目的地に着くことはなかった。


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