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45 魔導具作成

 くじの結果、オレはエメラルドの迷宮特別研修生として、ダンジョン探索の許可を得るためギルドに登録した。

 結局3人でダンジョン攻略に向かうのだから、誰が誰の研修生でも変わらないとおもうんだが……


 手続きを終えると、イリヤは夕食を作りに道場へ戻っていった。

 今日はイリヤが夕食当番だったっけ。

 

「……アスラン先生、私行きたいところがあるんです」


 エメラルドは妙に真剣な顔をしていた。

 

 ――昼下がりの王都をエメラルドと歩く。

 街外れまで歩いて来たが、食堂街と違って閑散としている。


「ここです」

「こんなとこにも道具屋があるんだな」


 古ぼけた看板には瓶の絵が描かれている。

 瓶と液体っていえばポーションのことだろうから、道具屋だろう。


「失礼します」


 エメラルドはそう言いながら店の扉を開け、オレを手招きした。


「おや、この店には珍しいね。

 アンタみたいな別嬪べっぴんさんが何の御用だい?」


 店の奥から老婆がヨタヨタと歩いて来た。


「ええ、魔導具についてご相談がありまして」


 エメラルドの言葉に老婆の眉毛がピクリと動き、一瞬店の奥に視線をやった。


「……ヨハン目当てのお客か。

 あの子は忙しいんだ。

 普通の冒険者だったら、この店にある吊るしの品で充分だろ?」


 老婆は店の商品を指し示した。


「なるほど、ただの道具屋じゃないのか」


 ポーション、毒消しなどの道具の他に武器や防具、宝石や魔物素材まで置いてある。


「魔導具屋か」

「はっ……多少は目利きが出来るようだがね」


 老婆は鼻で笑った。


「すぐにでも付与術で魔導具を作って欲しいんです」


 エメラルドの発言に熱がこもっているのが、老婆にも伝わったようだ。


「フン、情熱はあるようだね。

 魔導具に必要なもの言ってみな」

「はい」


 エメラルドはうなずいた。


「中心となる武器や防具などの『種』、種に彫金などで施された、『魔法陣』。

 魔物素材などの属性ごとの『触媒』、それと『付与術士』……そして魔法を込める『魔導士』」

「……正解。

 勉強くらいはしてきてるようだね」


 老婆の顔から険しさが取れた。


「でもね、お嬢ちゃん。

 それだけ、魔導具作成は素材と工程が多いんだ。

 すぐって言われてもね……ゆっくりでいいならうちで面倒見てもいいけどさ」


 老婆は優しい声をかけてくれた。


「もし、すべて揃えてきたのであれば、すぐに取り掛かってもらえますか?」

「フン、貴重な素材が必要なんだよ。

 そんなにすぐ揃えられるもんかね」


 エメラルドは持ってきた袋を開き、道具屋のカウンターに品々を並べた。


「そして、これも」


 エメラルドはドレスの背中から、剣を取り出しカウンターに置いた。


「おい、どこにしまってたんだ?」

「背中に仕込んでましたけど?」


 ひょうひょうとエメラルドは言い放った。

 ドレスにそんなもん入れてたら歩きづらいと思うんだが……

 

「へえ、驚いたね。

 柄に魔法陣を彫り込んである精霊銀の剣か。

 触媒は……驚いた氷精の宝玉じゃないか」


 老婆はまじまじと青い宝玉を見つめた。


「我が家に伝わる秘宝です。

 これで魔導具を作るためのすべてが揃ってると思います」


 エメラルドは店の奥に視線をやった。


「付与術士ヨハンさんは奥にいらっしゃるんでしょう?」

「うちのことよく知ってるじゃないか、ヨハンには会わせてあげるけどね。

 肝心の魔法使いがいないじゃないか」


 エメラルドが右手の指から氷柱を出した。


「申し遅れました、私エメラルド・クレイと申します」

「……人が悪いね、アンタ。

 クレイ公爵家の天才魔術師長エメラルド様がこんな可愛い娘っ子だなんて思わないじゃないか」


 老婆はブツブツ言いながら奥に声をかけた。


「ヨハン、どうせ聞いてるんだろ?

 出ておいで!」


 ドタドタと足音が聞こえた。


「あ……ようやくおばあちゃんのお眼鏡にかなう人がいたんだね」


 茶色のくせっ毛をボサボサに伸ばした少年が奥から現れた。


「ヨハン、アンタ髪くらい梳かしなさいっていつも言ってるだろ?」

「あはは、おばあちゃん。

 今はそんなのどーでもいいんだ。

 僕に付与術をかけて欲しいんでしょ?」


 あまりに伸ばした髪で前が見えないのか、ヨハンは大雑把に紐で髪をまとめた。

 好奇心を表したような大きな灰色の瞳。

 そばかすの似合う人懐っこい笑顔の少年だ。


「へえ……大した人だね。

 わかった、付与術をかけてあげる」


 ヨハンはこちらを見た。


「そりゃそうだよ、こちらのお嬢さんは元宮廷魔術師長なんだ。

 控え目に言ったとしてもこの国一番の魔術師であることに疑いはないよ」


 老婆はうなずきながらそう言った。


 ヨハンは首を振った。


「きっとお姉さんも凄い魔術師なんだろうけど……僕が魔導具を作ってあげたいのはそっちのグレアス一刀流の剣士さんだよ」

「……驚いたな、なぜオレの流派がわかる?」

「前にもグレアス一刀流の人に作ってあげたことがある。

 立ち姿でわかるよ、無駄な力が入ってないからね」


 ヨハンはひょうひょうと言った。


「じゃあ、持ち込み素材をチェックするね。

 間違いない! 精霊銀の剣に、氷精の宝玉!

 やったああ!」


 ヨハンは嬉しさのあまり両手を天に突き上げた。


「こんなに良いもので僕が魔導具作っていいの?」


 ヨハンはキラキラした瞳でこちらを見た。


「ええ、ブレンダン火山を攻略したいものですから」


 エメラルドは真剣な瞳でヨハンを見返す。


「火山のモンスターを倒すための氷属性の剣か。

 オーソドックスな考えだけど、効率的だね。

 なんと言っても、氷精の宝玉を使えるのがいいね!

 威力が段違いになるよ」

「宝玉が威力を司るのですか?」


 エメラルドは魔導具づくりに興味があるのか、身を乗り出してヨハンの話を聞いている。


「……お姉さん、いい質問だね!」


 ヨハンは早口でまくし立てた。

 あ、ヨハンも人のことを考えずに、好きなことを早口でしゃべり倒すタイプの奴だ。


「魔導具は、魔法陣の描かれた道具に、魔法を食らわせながら付与術をかけて出来上がる。

 その時に魔力を蓄える役割をするのが宝玉なんだ。

 だから、宝玉がいいものだと強い魔法がバンバン繰り出せる魔導具が完成するんだよ!」


 エメラルドは瞳をキラキラさせて胸の前で両手をパチンと叩いた。


「……先生、強い剣が出来そうですよ!」

「そうか、良かったな」


 エメラルドとヨハンはきょとんとしていた。


「なに他人事みたいにしてるの?」


 ヨハンはむすっとしていた。


「そうですよ、今から先生の最強剣を作るんですから」


 エメラルドは唇を尖らせた。

 なぜか二人にオレが責められている。


「オレの剣?」


 質問すると、二人はずずいと近づいて来た。


「そうです!」

「そうだよ!」


 二人は熱くなっていた。


「先生のための氷剣を作ってもらいに、今日はここに来たのです!」


 エメラルドはオレの両手を握り、オレの眼をじっとみつめていた。

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