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15 魔力適性を調べる

3章スタートです!

 冒険者になって一週間ほど経った今日、冒険者ギルドがようやく魔力適性を判定してくれることになった。


 何でも魔力適性を見るには、『物見の魔術師』という、資格を持った専門の魔術師でないと難しいらしく、その魔術師は希少なため、王国中をあちこち回っているらしい。

 

 久しぶりにその魔術師が王都に戻るということで、急遽、オレも魔力適性を見てもらうことになった。


「先生、今日魔力適性がわかるのですよね!」

「ああ」


 食堂で、エメラルドは嬉しそうに話した後、魚の酢漬けをほおばった。

 エメラルドはナイフとフォークを扱う仕草など、何気ない仕草が美しく洗練されている。


 美味しそうに魚を食べているエメラルドを見て、オレも魚をいただく。

 おお、これは……

 酸味とともに旨味が口の中に充満する。

 

「この魚、美味しいぞ」


「……嬉しいです。

 今日の朝食は私が当番ですから、腕によりをかけて作りました!」


 朝飯に腕によりをかけて作るのって大変じゃないか?

 と思ったけど、エメラルドは機嫌が良さそうなので黙っておく。


 ここ最近、住み込みのエメラルドとイリヤと一緒に朝食を取っている。


 門下生の指導のために、エメラルドとイリヤはここに住まなければならないらしく、住み込みの駄賃として、二人が食事と洗濯等の家事を分担してくれることになった。


 『門下生が一生困らないように』というグレアス一刀流の方針で、門下生は誰であっても、煮炊き洗濯を仕込まれる。


 『実家では一切家事などしたことありません』と豪語していた公爵令嬢エメラルドも、グレアス一刀流の教えによって、見事身の回りの家事は自分一人でできるようになっていた。


「先生の魔力適性を知りたいところですが、私は今日実家に呼ばれているのですよね」


 エメラルドは残念そうにため息をついた。


「魔力適性の検査くらいオレ一人で行ってくるよ」


「フフ。

 ボク今日暇だから先生について行くよ、先生の魔力適性、ボクも気になるからね」


 イリヤはそう話した後、恐る恐る魚を口に運んだ。


「うう……酸っぱい……けど、美味しいかも」


 イリヤの祖国ガーファ王国は内陸国で、魚はあまり食べつけてないらしいけど、配膳された分はきちんと食べ終えていた。

  

 ★☆


 イリヤの褐色の肌とその美貌は、ユトケティア王国ではひときわ目を引く。


 その上、白いスリットの入ったロングワンピースから、ちらりと美脚をのぞかせているのだから街行く人の視線が集中するのも当然かもしれないな。


 今日は休日だからなのか。

 唇に紅を引き、花を模した大きな髪飾りをつけたイリヤは、楽しそうに王都の広場を見て回っていた。


 腰にぶら下げた双剣がなければ、イリヤのことを、ガーファ王国騎士団長を務めた猛者だなんて誰も信じちゃくれないだろう。


「先生、美味しそうな肉いっぱい」


 イリヤが手招きしていた。

 

「さっき食べたばかりなんだが……」


「先生、色んな色のロウソクがある。

 どれ買う?」


「買うのが前提なのかよ……」


 どうしてそんなにはしゃいでいるんだか。


 とはいえ、他国の王族であるイリヤには王都ディオラの大広場を見て回る機会など、あまり無かったのかもしれないな。


 仕方ない。

 イリヤがそんなに楽しみなんだったら、オレで良ければ、多少買い物に付き合ってやるか。



 ――つい、時間を忘れて買い物を楽しんでしまった。

 急がねば、物見の魔術師が帰ってしまうかもしれない。


「はあ……はあ……」


 慌てて走ってギルドについた時には、レイラは呆れていた。


「あのさ、アスランさん。

 何の用があれば、そんなに大量のものを市場で買い込むことになるんだい?」


 カラフルなロウソクや燻製肉、マントにカラフルな布地……冷静に考えれば、急ぎ必要なものは何もない気がする……


「買い物って怖いね……気づいたらいっぱい買ってた」


 イリヤは腕を組み、体を震わせていた。

 ……ノリノリで買ってたくせに。


「とりあえず、魔術師の部屋に行きなよ。

 すぐ見てもらえるからさ」


 レイラに案内され、薄暗い部屋に通された。

 

「さあ、肩の力を抜いて椅子に腰かけるがよい」


 随分と声の幼いその部屋の主に促され、椅子に座った。


「子ども?……あ、いやエルフなのか」


 ……びっくりしたとはいえ、失礼な発言をしてしまったな。

 

 お団子状にまとめた金色の髪に、大きく見開いた真っ青な瞳。

 黒いローブからのぞく手足や背丈を見ると子どもにしか見えないが、尖った耳を見ればわかる。

 

 長命種であるエルフか。

 

 子ども扱いされ、エルフはむすっとした顔をした。

 

「そなた、エルフを見たことがないとでも?

 こう見えてもわらわは常人を逸した魔力をもっておるのだぞ?

 それに、わらわはお主よりも随分長生きだと思うのだが?」


「いや、済まなかった。

 こちらの非礼だ、お詫びする」

 

 丁重に頭を下げた。


 エルフは特に子どものころは体の成長が遅い。

 子ども扱いすると怒るから気をつけろと、オレも先代から聞いたことがあった。


「そうか、わかればいいのだ。

 わらわは懐が広いからの」


 エルフは心が広い自分に酔っているようだ。

 そういうところも随分、子どもっぽいのだが……そう言うと怒るだろうな。

 やめておこう。


「それでエルフの先生、できれば魔力適性を見て欲しいんだが……」


「お、そうだったな。

 わらわのことは先生と呼ばずともよい。

 まだ弟子を取る年齢ではないからな。

 ルミエル・バティクルだ」


 そう言うと、ルミエルは水晶玉を取り出して大きな器の上に置いた。


「水晶式で見るとしようかの」


「ルミエル、オレはどうすればいい?」


「力を抜いて水晶に両手を当て、そなたの真名を言うがよい」


 息を吐いて呼吸を整え、水晶に両手を当てる。


「アスラン・ミスガル」


 水晶玉の周りに光が集まり、すぐに消えた。


「え……すぐに光が消えたんだが」


「大丈夫だ。

 正しく判定が出たぞ、そなたは魔絶型じゃの」


「……魔絶型?」

「要するに、魔法適性は全くない」


 ルミエルの顔は真剣そのもの。


「そうか……ちょっとばかり落ち込んでしまうな」


 がっくりと肩を落とした。

 オレは剣士だけど、せっかく冒険者になったんだからエメラルドみたいに魔法と剣を駆使して戦ってみたかった。


「……まあ、悪いことばかりではないぞ?」


「単なる慰めならいらないぞ」


「まあ、聞くのじゃ。

 魔絶型は、外界と自分の精神がきちんと隔離されてるから、精神干渉魔法が効きにくい。

 眠らせたり、誘惑したりが効きづらいってこと」


 ルミエルは立ち上がり、オレの肩に手を置いた。

 元気づけてくれてるのだろうか。

 

「ただ、自分の身体に魔力を通すことも、魔力を放出することも苦手だから魔法使いになるのはあきらめた方がいいだろうな。

 それに……いざというときにとんでもない馬鹿力を発揮するとも聞く。

 ただ、これは噂の範疇を出ないのだがな」


 ポンポンとルミエルはオレの肩を叩いた。

 こいつ、偉そうにしてるが割といい奴だな。

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