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ヒーローがいるのに平和な街の表 13

13の記号がない!?どうすりゃいいんだこれ!!

「運び完了。それじゃあ……頑張れよ、刀銃! 気張れ! お前なら出来る!」

「はい! ありがとうございました! 行って来ます!」

 最後に高梨さんに激励された俺は、久貝田大学の校門前で降りた。上を見ると、叶があゆみを抱いたまま佇んでいる。どうやらまずは屋上まで行かないと話にならないらしいな。しょうがねぇ、行くしかない。

「待ってろよ、あゆみ! 叶!」

 大声を叶に向けて放ったが、当の叶は全く相手にせずに無視していた。いいぜ。そんな対応して後で後悔すんじゃねーぞ、叶。

 校舎に入ると、叶と一緒に過ごしていた時間が光景が変わる度に思い出されていった。

 入口。ああ、そうそう。叶と出会って少ししか経ってない時だ。あいつがいきなり飛び掛かってきて、「レポートうつさしてー刀銃ー!」って泣きながら言ってきたんだったよな。無理だって言ってんのに、突っ掛かってきて。欝陶しかったけど、嬉しかったのを覚えているぜ。今でもな。

 エレベーター。ここで確か、あいつと地獄やらの話しをしたっけ。そういえば、ヒーローとSMしたんだよな、叶の奴。あれ聞いた時はドン引きものだったなぁ。あいつら本当にやったんだろうか。要確認だな。うん。

 エレベーターの中。……ああ恥ずいっ! あいつ、誰もいないからってあんなことしなくてもいいだろ。頬舐めるくらいで止めとけよな。おかげで体裁失うどころかそれ以上の物失うところだったっての。

 ……畜生。

 何だよ、これは。

 楽しい思い出しかないじゃねーかよ。

 なのに……何でだ、叶?

 お前は何で……。

 ゆっくりと上がるエレベーターの中。この大学のエレベーターは屋上にまで繋がっているので、直行で叶を見ることが出来る筈だ。

 そう思い返してみると、叶との思い出の中に屋上はなかった。普通は行かないからな、屋上なんて。当然といったら当然なのかもしれない。

 叶……お前は何で久貝田大学を選んだんだ……?

「何で、良い思い出しかない大切な場所に、俺を向かわせたんだよ」

「アハハ? ああ、うん。それはね、刀銃の思い出を一つ増やして上げようと思ったからだよ」

 エレベーターの扉が開くと、叶が上空にあゆみと共にいた。叶の下には屋上の地面がない。あそこからあゆみを落としたら、即死は免れないだろう。

「あゆみを渡せ、叶」

「アハハハハ。いーやっ」

 歩み寄りながら、俺は言う。内心、ビビっていた。

 こんな状況……思い浮かぶのは一つしかない。

 徳永切裂の変えられた記憶の中に居た、快楽殺人犯叶香里しか思い浮かばないだろ。

「あゆみを……渡せ……叶…」

「嫌だって言ってるじゃん」

 歩み寄り、とうとう俺は屋上の端――つまり、叶と最も近い場所へと到達した。少し見上げると、叶の微笑とあゆみのグッタリとした顔がある。

 ようやく、ここまでたどり着くことが出来た。

「もう一度言うぞ、叶。今すぐあゆみを渡しやがれ」

「だから嫌だって言ってるじゃん。どうしても返して欲しいんだったら力ずくで奪いとってみなよ、あゆみちゃんをさ。アハ……アハハハハハハハハハハハハアハハッ!」

「…………」

 そうかいそうかい……。叶。お前、最後までそういう態度を貫くんだな?

 だったら何も言えねーよ。何も言えねーし、何も聞けねーよ。

 ――だけどな、叶。

 忘れてないか?

 俺はお前を責めることだけは、天下一品なんだぜ?

 覚悟を決めた俺は、銃と刀を同時に叶へと向けて構えた。あゆみだけを救い出す勝算ならある。力は有り余ってるんだ。ただでさえ化け物の、昔の徳永切裂に近い身体能力を持つ今の俺なら、棒高跳びの棒を片腕で、マンション一世帯分くらいの長さを持つ横幅なんか簡単に投げ切れる自信がある。

 だから、あゆみは救える。

「刀と銃……刀銃」


 ただし、その時には俺は死んでいるけども。

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