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ヒーローがいるのに平和な街の表の裏 ①

 さあ楽しい時間はここまでだ。


 登場人物は全員揃った。

 ここからこの物語は始まる。

 導入。

 物語。

 結末。

 導入は終わった。

 物語はこれから。

 結末はまだ遠い。

 どのくらいかかるかわからない。

 どこまでいくのかわからない。

 どうなるのかわからない。

 それでも、

 どんなストーリーにも、

 必ず終わりはある。

 必ず結末はある。

 それがハッピーエンドなのか。

 それがバッドエンドなのか。

 誰にもわからない。

 決めるのは誰でもない、登場人物達だ。

 つまり、俺達だ。

 どうなるかはわからない。

 だが俺達は進まなければならない。

 立ち止まってはいけない。やめてはいけない。諦めてもいけない。周りに歩幅を合わせなければならない。突き進まなければならない。納得の行く道を出来るだけ行かなければならない。選ばければならない。例えそれが酷い終わりに続いているとしても。

 どう転んでも。

 どうなっても。

 俺と奴らの物語に結末は来る。

 ヒーローがいるのに平和な街。

 そんな街、ある訳がない。

 その理由はこれから話すことになるだろう。

 コメディーなんかじゃない。

 至って真面目。

 至って極端。

 さあご覧あれ。

 これが俺の結末だ。

 これが俺達の結末だ。

 これが俺達の集大成だ。

 これが俺だ。

 これが俺達だ。




 そして路地裏。

 俺が叶香里という名の変人もとい悪魔から逃げ去った場所に居たのは、暗がりの中には余りにもミスマッチな二人だった。

「これを見てどう思ったんだい?」

「…………」

 ヒーローと、沈黙状態のあゆみ。

 二人はいつにも増して真剣な顔だった。ヒーローに至っては俺を睨んでいる。

「迂闊だったよ。誰かはわからないが君の次に見てしまう奴がいるなんて。ただの住人にはまだ早かったからね。まあ、あまり支障はないのだけれども」

 そう言うヒーローの手には、刀と銃があった。

 横で俯くあゆみの体は震えていた。それがどういう意味なのかはわからない。

 とりあえずこれだけは言える。

 俺は今、とんでもない状況に居るのだ。

 なぜならば。

 何故ならば。

 ナゼならば。

 ナゼナラバ。

 ナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバナゼナラバ……

 ――なぜならば。

 俺は今、思い出してしまった。

 これが奴らの思惑だったのかもしれない。

 台風の中、西山あゆみを助けさせたのも。

 朝、刀と銃を俺の部屋に置いたのも。

 ――断片的な二つの思い出を俺の中から呼び起こしたのは。

 俺の記憶を蘇らせるきっかけとなる思い出を俺の中から呼び起こしたのは、俺を今この状況にさせる為だったのだ。

「そうなんだろ? 善人さん達よお?」

 俺が目の前に居る“二人“を見てそう言うと、あゆみは覚悟を決めたのか俺をちゃんと見つめ。ヒーローは笑い、刀銃をこちらに投げた。地面に二つの物がぶつかる音が響く。

「おいおい……そんなもんを俺によこしていいのか?」

「最初に言っただろう? これは実験なんだよ、刀銃君」

「……そうよ、刀銃」

 二人は、俺を審査する目で見ていた。初めて会った時と相も変わらず、自分と同じ人間を見るような目じゃないなぁ、こいつら。

 そんな二人を見て、俺は言う。


「俺の名前は刀銃じゃない……俺の名前は刀銃じゃねえ!!」

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