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偽聖女として烙印を押されたら、竜騎士の花嫁に抜擢されました  作者: ハナショウブ
聖女としての決着
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意外な訪問者

聖花は神殿で咲かせた時と同じですぐに芽を出し、ぐんぐん大きくなるとあっという間に花を咲かせてしまった。

「普通の植物とは違うんですね」

5枚の白い花弁を広げて優雅に咲く聖花を始めて見たアスロは感心したように鉢植えを持ち上げて上から下まで観察していた。

鉢植えは全部で10個。そのすべてに聖花が咲いている。どうせ咲かせるならともらった種をすべて植えてみた。

「これから1か月はこの状態を維持しなくてはいけないのよ」

「毎日の水やりですか?」

普通の植物ではないとわかっていても、水をやれば大丈夫だと考えたようだ。だが聖花は水やりでは咲き続けられない。

「聖花は聖女の力をもらって咲き続けるの。具体的に何かをするわけではないのだけれど、毎日側にいて聖花がきれいに咲くことを祈れば水はいらないのよ」

聖女の力が栄養源という不思議な植物だ。

リナが咲かせた聖花をミルが奪ったことで、力をもらえなくなった聖花は枯れてしまった。今度はリナが側にいられるので聖花は無事に咲き続けられるだろう。途中で枯れるような事態になればリナは聖女ではないという判定になるのだろうが、すでに王竜が認めているのでその心配はしなくていい。

「聖花が咲いている確認もできたし、お茶にしましょう」

聖花の確認が終わったことで、休憩をすることにした。

昼食まで時間もあるし、出かける予定もないのでアスロと一緒に休むことにした。

「すぐに準備します」

道具を取りに行くためアスロが部屋を出て行く。その間に鉢植えを窓際に移してテーブルを綺麗にしているとノックする音が聞こえた。

もうアスロが戻って来たのかと思ったが、扉を開けたのは白い神官服を着たロゼストだった。

「リナ様。お客様がお見えなのですが・・・」

歯切れの悪いロゼストは、どこか戸惑った表情をしている。

「どなた?」

「それが、ギュンターの王族のようです」

その相手は数名の従者を連れてやって来た。名前は出さなかったが纏っているマントにギュンター国の紋章を付けているという。従者からは殿下と呼ばれ明らかにギュンターの王族だとアピールしていた。対応したロゼストはあからさまな態度に戸惑ったが、リナに会わせてほしいと丁寧に接してきた相手を追い返すこともできず、とりあえずリナがどうしたいかを聞きに来たのだった。

「おそらく国の代表としてリナ様と話をするために来たのだと思います。ただ、今日はロイド様が不在ですので、会うのは後日にと伝えることもできます」

王竜とともに空の偵察へ行ってしまったロイドは現在神殿にはいない。王竜も竜騎士もいない中で国の代表者とリナが会っていいものか少し悩んだ。

これはリナの問題であるが、王竜に属する者となったことで王竜の問題にも繋がっている。

「とりあえず会いましょう。王族なら今後の国関係にも影響が出るかもしれないし、相手の要求を聞いてから今後のことを考えても遅くはないでしょうから」

どんな話をするつもりなのかわからないが、すぐに返事が必要でも待たせていいはずだ。

今は話の内容を聞くことだけに集中しようと考えて、リナは王族だという相手に会うことにした。

「応接室に通してあります。前と同じように1対1で話せるようにしたかったのですが、従者の人数と相手の様子を見たタイトが手に負える相手ではない可能性があると言っていました」

王族を守る騎士ならそれなりの腕の騎士を連れてきているはずだ。元傭兵のタイトではかなわない可能性が高い。戦闘に参加できるアスロとスカイも神殿にはいるが、もしも剣を抜くことになった時、彼らが怪我をする可能性は高いだろう。

「できるだけ穏便に済ませましょう。タイトには私の護衛役として一緒に部屋に入ってもらいます。もしものためにアスロとスカイには近くで待機してもらいましょう」

「わかりました。くれぐれも用心してください」

ロゼストは戦う力を持っていない。足手まといになってはいけないと離れた場所で待機することになった。

応接室へ行く途中でタイトと合流すると、緊張感が高まってきた。

「俺では頼りないかもしれませんが、身体を張ってリナ様をお守りします」

元傭兵というだけあって、鋭い眼光で前に進みながらタイトが言う。見た目もなかなか迫力のある彼が睨みながら殺気を放つと周りの空気が一気に冷えた気がした。

「そんな顔をしていたら、話し合いにならないわ」

守ろうとしてくれる意気込みはありがたいが、話ができなければ意味がない。苦笑しながら窘めると、タイトもわかっているようですぐに殺気を消した。

ロイドが戻ってきてくれれば王竜の通訳者としてギュンターの王族とも対等な話し合いができるのだろう。だが今は王竜とともに不在だ。その間はリナがしっかり対応しなければならない。

もともとは自分の事なのだ。どんな話をされるのかわからないが、相手の話を聞いたうえで自分の意思を通すつもりでいる。

ギュンターには帰らない。これはリナの中で決定事項だ。

「実力行使で来られた時は、頼りにしているわね」

リナの聖女としての力なら襲われても大丈夫だと王竜は言っていた。それを信じるならタイトの出番はないかもしれないが、もしもを考えて言うと前を歩いているタイトは静かに頷くだけだった。


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