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最強の守護

「神殿と森、その周辺の状況も確認してみたが、特に変わったことは何もなかった。残党もいる気配がないから、魔法師の襲撃は終わったと思っていい」

王竜の間に入ると台座の上にいる王竜により近づくため、リナ達も台座の上に乗って話が始まった。

まずはロイドが確認してきた森の様子を聞かされる。

大魔法で巨大な爆発を起こしたにも関わらず神殿は無傷だったが、その周囲の森も被害がなく、竜の街も平穏だった。範囲を広げて確認しても爆風の影響など何もなかったそうだ。

「あの爆発はまるで見せかけだったかのように被害を出していない」

それが王竜とロイドの結論だった。

「でも、あれは大魔法だったのでしょう。魔王を倒すための魔法のはずだから、それなりの威力はきっとあったはずよ」

大魔法は周囲の被害など考えていない魔法だと思えた。もしくは魔王にだけ通用する魔法だったのかと考えてしまう。

「大魔法は魔法師が神から授かった特別な魔法だが、魔王にだけ通用する魔法というわけではないらしい」

リナの疑問にロイドが答えるが、すべてヒスイの言葉だ。

「大きな威力を持った魔法だから、被害は大きくなるはずだった。当然、ヒスイも直撃を受けていれば無傷では済まなかったらしい」

だがヒスイもロイドも無傷だった。爆発の煙で辺りが見えなくなっていた頃、ヒスイはさらに上空へと非難していた。そして神殿の場所を定めると急下降して庭へと出現したのだ。突然の登場にキャスティが油断すると考えての行動だった。

大魔法を避けることができて無事だったと思っていたのだが、それだけで無傷でいられたわけではないとヒスイは感じ取っていた。

「ヒスイ様にも聖女の力が作用していたのかしら」

話の内容から、リナが関与している可能性が見える。神殿や森が無事だったのはリナの力だと思っていたが、王竜さえも守っていたということになる。

ロイドがわずかに口角を上げるのを見て、やはり聖女の守護が発動していたのだと確信できた。

大魔法が爆発を起こした瞬間、リナはアスロ達に庇われながらも守りたいと強く願った。自分が聖女ならみんなを守れるはずだととにかく願ったのだ。

ヒスイとロイドもその対象に含んでいたことを思い出す。その願いはどうやら通じていた。

「キャスティは5聖者の中で一番強いのは大魔法を使える魔法師だと思っていたようだ」

だからこそ大魔法で王竜を倒すことができると考えていたのだろう。もしかするとどこかの文献に書かれていたことを丸ごと信じて大魔法を完成させようとしていたのかもしれない。

「ヒスイが言うには、攻撃性で大魔法は広範囲への攻撃ができるうえに強力な力を持っているから最強だと思うことは間違いではないそうだ」

他の5聖者は力を宿した武器で戦っていた。その武器は魔王討伐後各国に保管されているが、再びその武器を握れる者は存在していない。ロイドが生まれ育ったグリンズ王国には聖剣があるが、聖剣は新しい持ち主を選んだことがない。それは他の国も同様で、ギュンター王国の聖女だけが力を引き継がれている。

「今回の攻撃は相当な力を持っていた。はっきりと500年前の大魔法と同じかと聞かれると、大魔法を見たことがないからそうだとは言えないが、それに近いだけの魔法であったのは確かなようだ」

魔王を倒した時代、王竜はまだ大陸に存在していなかった。国同士の戦争が起こった300年前に神の使いとして舞い降りたのだから、大魔法がどこまでの力を持っているのかはっきりとしたことはわからないようだ。

「でも、聖女の力で防ぐことができたということね」

神殿だけではなく周囲の森や街まで守っていた。そして、王竜ヒスイをも守っていた。

「ヒスイは爆発が起こる瞬間、リナの守護の力が働いていることに気が付いた。ヒスイを守るように結界が張り巡らされたらしい。俺は爆発が起こったのに衝撃が一切こなかったことで結界があることに気が付けた」

ロイドも大魔法が迫って来た時、無傷では済まないという覚悟をしていた。だが強力な破壊力を伴った衝撃は何もこなかったのだ。激しい爆発で視界が塞がってしまったが、衝撃波何もなかった。そこでリナが守ってくれているのだと理解した。

「視界が塞がったことで一度姿を消すことができたから、上昇して王竜がいなくなったように見せかけた。相手を油断させられたのも幸運だったと言えるかもしれない」

それさえも聖女の幸運の力なのかもしれないと思っていたようだ。王竜の巨体は煙で姿が見えなくても気配を察知される可能性があった。そこでもっと上へと飛ぶことで存在が消えたように見せかけていたのだ。

「私は守りたいと願っただけなのに」

無傷の神殿に、聖女の守護が働いたのだろうと考えることはできても、幸運までもリナのおかげだと言われるとその力に関しては守護よりも実感が湧かない。

それでもみんなを守れたことは嬉しい。

「リナはそうやっていつも誰かを守ってくれているようだな」

攻撃を受けた時に守護するだけではなく、周りにいる者たちを守って幸せにしているのだとロイドは笑顔を見せた。

「遅くなってしまったけれど、守ってくれてありがとう」

礼を言われると少し恥ずかしい気分になる。ヒスイを見上げると優しい眼差しが降り注いでいて、言葉はわからなくてもお礼を言われているような気がした。

リナが笑顔を向けると満足したように小さく鳴く。

「5聖者の最強というのは、きっと聖女のことを示すのだろうとヒスイが言っている」

「え?」

唐突にロイドがヒスイの言葉を代弁した。

「攻撃性が高いことが最強ではない。もちろん聖女は戦う力を持っていないが、守る力は誰よりも長けている。そして、守護と幸運の力に守られているからこそ、残りの聖者たちは何も心配することなく戦い抜くことができた」

実際の魔王討伐を見たわけではない。これはヒスイの予想が混ざった見解だろう。5聖者の力を考えて出された結論は、聖女が最強ということだった。

「もっと細かく言うのなら、聖女に守られている存在が最強だったと言える」

敵の攻撃から守られ、攻撃されても当たらない幸運を持っていれば、誰もがその存在を最強だと思うだろう。

その最強の存在を生み出している聖女をヒスイは一番に考えた。

「そうなると、今は私が守りたいと思っているヒスイ様やロイドが最強になるのかしら」

「そうなるだろうな」

大陸を見守る存在である王竜自体が最強ともいえるのだが、そこに聖女の力が加わったことで、もう誰も勝てない存在になっている。

キャスティがどれだけ強い魔法を駆使しても、ヒスイに勝つことは不可能だった。

今さらだが、哀れな魔法師だ。

「俺はリナが聖女だから結婚したわけではないが、結果的に幸運だったと言えるだろうな」

「それも聖女の力かもしれないわよ」

「どちらでもいいさ。リナが側にいてくれれば」

そう言ってロイドがキスをしてきた。彼にとってリナ個人を見てくれていることが改めてわかると嬉しく思うし、リナもロイドの妻になれたことを幸せに思う。

触れた唇が離れると、今度はリナからお返しのキスをすることになった。


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