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大魔法

次々と飛んでくる雷の球を避けていると、今度は蛇のようにうねった水が飛んできた。それも簡単にかわすと、明らかにイラついているキャスティの視線をロイドに注がれる。

「この程度の魔法で撃ち落とせると本気で思ってはいないだろう」

ロイドの声にキャスティが怒りを露わにした。

「ただ飛んでいるだけで偉そうに」

竜騎士は王竜の背に乗っているだけとも先ほど言われた。彼女は自分の魔法が通用していない苛立ちをロイドにぶつけてきている。それでこちらが過剰に反応するはずもない。

『強い魔法を使わせてみよう』

「だったら、もっと強力な魔法を使ってみたらどうだ」

ヒスイの声に、ロイドは挑発してみた。王竜の声は竜騎士にしか聞こえない。そのためヒスイの考えをロイドが言葉にして伝えるしかない。

ヒスイの言葉であることを相手は理解していないだろうが、キャスティは明らかに怒りで顔を赤らめた。

「後悔させてやる」

その言葉に反応するように彼女の周りに再び雷の球が生まれる。だが今度は小さい。そして尖った氷の塊もさらに生み出された。

キャスティが、ヒスイに向かって指をさすように手を上げると、一斉に雷と氷が飛んでくる。先ほどよりもスピードが段違いに上がっていた。致命傷を負わせられなくても、小さくて速い攻撃によって相手を傷つけることが目的だろう。

ヒスイが一気に上昇すると追いかけるように氷の塊が飛んでくる。その隙間を縫うように雷も飛んできて逃げ道を塞いでいた。

『掴まれ』

その言葉だけでロイドは体を前に倒して振り落とされないように姿勢を変えた。

するとヒスイが大きく翼を羽ばたかせて風を起こすと、身体を回転させた。すると巻き起こった風が意志を持ったかのように上空から地上へと吹き降ろされた。その勢いに押されて雷の球が霧散する。残された氷の塊は勢いを失いながらも王竜に迫るが、それを難なく回避したりロイドの剣で叩き落とした。

キャスティを見れば悔しそうにしているかと思ったが、彼女は不敵な笑みを浮かべてこちらを見上げていた。

両手を空に突き出すように掲げると、そこに人が抱えられないほどの大きな光の塊が生まれる。あまりの眩しさに目を凝らすと、光の周りを雷や炎が這っているのがわかった。

「これは・・・」

「ギュンターの実験では結界を破るまではいかなかったけれど、さらに改良して完成させた大魔法だ。たとえ王竜であっても、大魔法の前で勝てるわけがない」

バチバチと激しい音が響く。魔王を倒したという大魔法と全く同じかどうかはその時代を生きていなかったロイドにはわからない。当然ヒスイもわからないはずだ。

だが凄まじい力の凝縮は感じられる。

この魔法がギュンターの王都を襲ったのだ。王都の人々のことなど気にすることなく、聖女の結界と大魔法のどちらが優れているのか試すためだけに実験と称して放たれたのだ。

襲撃時の大魔法は未完成であったようで、そこで失敗したことを教訓にさらに強い魔法を編み出してより大魔法に近づけたということのようだ。

リナは夢の中で見ているが、ロイドは説明をされただけだったため始めて見る光景だ。

これがもしギュンターの王都を直撃して結界を破壊することになっていたらと考えると背中にぞっとしたものを感じる。

キャスティは結界がどれほど耐えられるかの実験をしただけという感覚なのだろう。その結果がどんなことになっても気にしていないように思える。

「こんな人間が大魔法など扱っていいはずがない」

怒りの滲んだ声が漏れると、それに呼応するようにヒスイが鳴いた。

キャスティが持ち上げていた両手を思い切り振り降ろすと、光の球がヒスイに向かって勢いよく飛んでくる。雷と炎を纏った光の球はヒスイの飛ぶスピードなら避けることも可能だ。だがどこかで大爆発を起こした場合、その被害は地上にも及ぶ。

先ほど庭に人影があったのを確認している。戦いの途中で落ちたオルトロを救助してくれた者がいた。それに神殿には隠れている使用人もいる。そして、何よりも大切な女性がロイドの無事を祈って待ってくれている。

誰も傷つけてはいけない。そんな思いが胸の奥から溢れてくると、ヒスイの声が頭に響いた。

『心配いらない』

その声だけでロイドの中にあった不安が一気に消えていく。

「信じるぞ、ヒスイ」

迫りくる光の球を目の前にロイドは信頼を表すようにヒスイの首をそっと撫でるのだった。


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