02 アプローチ
現在我が家では、みんながそれぞれのやり方でフィグミさんへのアプローチを模索中。
プリナさんは、フィグミさんに美味しいお料理を振る舞うことに夢中です。
フィグミさんが食事するようになったのは、ここで暮らすようになってから。
つまり、フィグミさんにとっては、プリナさんのお料理こそがおふくろの味。
そりゃあフィグミさんが美味しそうに食事する姿に、プリナさんもメロメロになっちゃいますよ。
ちなみに、今のところ好き嫌いはナシ、みたいです。
スーミャは、初めての妹分に世の中の楽しいことを教えてあげることに夢中です。
正確には、まだまだ世間知らずのスーミャが好奇心いっぱいに見つけてきた面白いことを、得意げにフィグミさんに教えてあげてる、って感じかな。
スーミャのおしゃべりを楽しそうに聞いているフィグミさんですが、実は我が家で一番歳上。
これまで長い間、お人形さんのままで知識を蓄えてきたフィグミさんですが、動けるようになって実際に体験しているあれこれが楽しくて仕方がないのでしょうね。
つまりは、わくわく好奇心コンビ、なのです。
イリーシャさんは、困惑しながらも家族として受け入れる決心をしてくれたようです。
スーミャを守ることに生涯を捧げた守護騎士さまとしては、
フィグミさんが正体不明の謎の存在であることは大問題。
ただ、保護欲旺盛にして生来の可愛いモノ好きなイリーシャさんにとって、
フィグミさんが庇護対象にドストライクであることもまた事実。
つまりは、ピリピリ状態とデレデレ状態とで揺れ動いているおもしろイリーシャさんを日々堪能出来るのですよ。
要するに、おふたりともとっても可愛らしいってことです。
フィグミさん自身は、戸惑いながらも楽しんでるって感じ、かな。
いつからか分からないほど永く人形として過ごしてきた記憶と知識、
自由に動けるようになってからの世の中の圧倒的な情報量、
そりゃあ戸惑いますって。
例えていうなら、ずっと都会のマンションで室内飼いだった長生きにゃんこが、
突然、ヒト同士の距離感が近い田舎に引っ越してきちゃって、
周囲のヒトたちのノリや自由にお散歩出来る環境に戸惑っている、みたいな?
でもフィグミさん、舞い上がったり大騒ぎしたりは決してしません。
大人しく全てを受け入れた上で楽しんでおられるのです。
さすがは我が家で一番歳上のお姉さん、ですね。
フィナさんは、フィグミさんのサポートのため、我が家で暮らしてくれております。
会話で不自由しなくなったフィグミさんに、"ちっちゃいキャラ"の大先輩としてアドバイスしてくれているのです。
妖精であるフィナさん自身も長生きお姉さんなので、もちろんとっても頼りになるのですが、やや問題行動も。
フィグミさんを抱っこしてあちこち飛び回るのだけは、出来ればやめていただきたいのです。
いや、『フィグミさんは軽いから平気だよ』とか、そういう問題ではなく、
落っことしそうで怖いんですってば。
僕は、自分のペースを見失わないようあたふたするので精一杯です。
何せ、やることリストがぱんぱんですよ。
これまでの『よろず監査アドバイザー』や『出張鑑定員』のギルドでのお仕事、
そしてもちろん『若仙人』としてのお仕事。
さらに、家族が増えたことによる、楽しいながらも真剣に取り組むべきアレコレ。
一家の主人って、本当に大変なのです。
中でも特に対策を急ぐべきなのは、フィグミさんの夜型生活への対応。
なぜなら、家族みんなが夜ふかしさんになっちゃったから。
ここでの生活を満喫しているフィグミさん、見てると本当に楽しそうなのです。
つまり、夜型のフィグミさんから目を離せないでいると、いつの間にやら夜ふかしさんに。
みんなが夢中になる気持ちはとても良く分かるのですが、
夜型生活し過ぎると、普通の暮らしをしている皆さんとの交流にも支障が生じるわけで。
それゆえ、昼夜逆転生活を早急になんとかせねば、なのです。
「スーミャたちはヴァンパイアだから、夜ふかしも平気だし」
確かにそうですけど、寝不足寝ぼけまなこで冒険の依頼を受けちゃうのはダメでしょ。
あんまりわがままっ娘するようなら、強制的におねむする付与で早寝早起きさせちゃうからね。
「無理やり眠らせちゃうなんて、サイリのえっち!」
スーミャは、おませさんっぷりも成長期なのです……
「やはりサイリ殿の能力で、フィグミさんの生活リズムを強制的に変えざるを得ないのだろうか」
それは最後の手段ですよ、イリーシャさん。
アリシエラさんもがんばって研究してくれていますので、
僕たちは夜ふかしし過ぎないよう、元の規則正しい生活を取り戻す努力をするだけなのです。
「おや、お昼寝ハンモックざんまいのサイリ殿が今さらそんなことを言っても、全く説得力が無いな」
ひどいな、イリーシャさん。
深夜にこっそりベッドを抜け出して、夜通し語り合った仲じゃないですか。
「みんなの前で誤解を招く発言は慎むように」
照れなくても良いのですよ、夜ふかしはヴァンパイアのサガ、でしょ。
「今すぐ締め落として永遠の眠りにいざなうとしよう」
すぐ暴力に訴えるのはスーミャの教育上よろしくないですよぅ。
「『収納』食糧庫のおかげでお料理はいつでも出来たてなのですけど、せっかくだから作りたてを目の前で食べてほしいという気持ちは、わがままなのでしょうか……」
プリナさんのその気持ちはわがままなんかじゃないのです。
お料理が美味しくごちそうさまされているかどうかが気になるのは、料理人としてのサガ、なのです。
「いっそのこと、私に"夜ふかし大好き"になる付与を……」
おっといかんぞ、思い詰めたプリナさんが暴走気味に。
僕が今やるべきは余計な付与ではなく、誠心誠意の説得。
家族の不安や不満は速やかに解消、
それが我が家の家長として果たすべき役割。
えーと、何かというと家長アピールしすぎと思われるかもしれませんが、
自分からフィアンセアピールするのは、まだ恥ずかしいのです……
あの後、プリナさんは落ち着きを取り戻しましたが、
やはり、早急に昼夜逆転生活への対策を取らねば。




