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過去の私と性的マイノリティと気づいた日

 自分が「性的マイノリティー」であると気づいたのは2年前。偶然ネットで見かけたアロマンティック、アセクシャルのインタビュー動画を見て、「私これじゃん!!」と唐突に理解したのだ。まさに青天の霹靂。特大級の衝撃だった。


 と同時に、それまで自分が抱えていたモヤモヤした感情に名前がついてとてもすっきりしたのを覚えている。そして、「自分だけじゃないんだ」ということにとてもほっとした。


 そしてこのことに気づいてから知人に伝えると、一定数同じような考え方の人が周囲にもいることを知った。私のように悩んでいても、それが性的マイノリティであると知らなかったせいで何となくの生きづらさを感じていた人がこんなにもいたのかと。


 ちなみに、私は特に隠しておらず、家族や友人にはカミングアウト済みだ。特に家族は、最初は「アロマンティック!?何それ……!?」状態だったが、私が説明すると、大変、非常に、心底、納得してくれた。「あ〜、だからか!」と。

 周囲の人に感謝。





 恋愛について、何となくモヤモヤした思いを抱えるようになったのは幼少期から。一番古い記憶は、確か5歳の時。友達同士で「〇〇君かっこいいよね〜!」と好きな男の子の話題になったのだ。


 当時の私はお転婆で、何なら男の子相手に毎日喧嘩しているような猿山のボス状態だった。もちろん女の子とも遊んでいたが、一部の男子から恐れられ、しかし一緒に全力バカなことできる遊び相手のようにも思われていた、はず(希望的観測)。


 ……その男子を「恋愛対象」として見るだと!?5歳児に衝撃が走った。いやいやマセ過ぎじゃないか君たち、しかし彼女たちは嬉々としてそれぞれの推しについて語り出す。


「りょうくんは〜、この前私が転んだ時助けてくれた!やさしくて好き」


 ……りょうくん、喧嘩するときいつも男子ボスの後ろでこそこそしてるやつだぞ。


「私はゆうくんが好き、かっこいいもん」


 ……かっこいい??他の男子と何が違うの??


 私の頭が大混乱してる中、とうとうその瞬間がやってきた。


「さつきちゃんは誰が好き〜?」


 私は焦った、大いに焦った。女子だからわかる、ここで下手な答えを出すと今後の関係に亀裂が生じる。女子の友情は幼き頃から綱渡り状態なのだ。


 りょうくんは本気っぽいなあの子、適当なこと言うとライバル扱いされてハブられる。


 ゆうくん、そもそも話したことないから全然知らない、そしてかっこいいのもわからないから、突っ込んだ質問されたら嘘がバレる。どうすれば……

 私の小さき灰色の脳細胞は、スーパーコンピュータもかくやの勢いで高速回転した。


「っひろきくん、他の男子と違って大人だし!」


 結局一番名前が上がっていたひろきくんに犠牲になっていただいた。

 引っ越したばかりでまだ周囲と馴染めていないことから、積極的に喧嘩にも参加せず、私とあまり関わりがなかったことと、その態度からかえって「他の子と違って大人で落ちていてる〜」と女子達に大変人気だったのだ。


「だよね、さつきちゃんわかってる〜!」


 良かった、私は勝ったのだ、この修羅場を切り抜けたのだ。私の脳、常にこの勢いならノーベル賞取っちゃうような天才児になっていたのではと妄想できる程度には大活躍だった。


 そして、これが私が初めて周囲に忖度して自分の気持ちを偽った出来事でもあった。



 その後多少大人しくなったとはいえ、小学校に入っても、私は変わらず男子や女子と遊んだりバカやったりして過ごしていた。恋バナになったときは、何となく聞いてばかりの態度でその場をやり過ごしていた。だって語ることがないので。


 中学校に入ると、男女の違いが目立ち初め、男子と女子で完全にグループが分断された。私も勉強で忙しくなり、女子グループで話してばかりになった。

 公立だったため、体格の大きくなった男子が校内暴力や授業妨害等起こすのが怖くなったこともある。


 そして女子高に入学してから一気に男子と話す機会がなくなり、それとともに周囲から恋バナを聞く機会も減り、精神的に楽な期間を過ごすことになる。


 大学に入学してから。久しぶりに見た男子たちは皆な大人になり、きちんと授業をお座って聞く人種になっていた(当たり前のことだが、中学時代の記憶が強くて地味に感動した)。サークルやコースで男女関係なく友人もでき、充実した毎日を送っていた。


 自体が変わってきたのは、しばらくしてから。学内カップルが次々と誕生し、同棲し始めた話や、生々しい話、ドラマ脚本家も真っ青な修羅場の話などに、いきなり晒されるようになったのだ。


 この年齢になって、恋愛したことないってまずいのではないか、人間としてどこかおかしいのではないか。私は焦りだした。しかし時は無常にも過ぎる。


 しかも問題だったのは、彼氏が欲しい!ではなく、そもそも恋したことがないのだ。


 ときめきとはなんぞ。恋とは?愛とは?

 迷走した私はだんだん哲学的なことまで考えるようになった。


 それでも時は無常に過ぎる。


 私だけ5歳の頃のままで、他の人たちに置いて行かれているような気になった。



 ある友人にそのことを話したとき「他人に興味ないんじゃない?」と言われ、はっとした。


 興味がないわけではないが、誰か特定の一人に入れ込む気持ちがよくわからないのだ、とその時気がついた。



 おそらく恋愛感情には、ある程度独占欲や嫉妬心が伴うことがあると思うのだが(間違ってたらすみません)、そういうのを他人に感じたことがない。

 自分が好きな人は他の友人にも紹介して皆で仲良くしたいし、逆にそこで私を蔑ろにする人には興味がなくなる。


 私は友人たちは男女関係なく皆大切だし、それぞれに特別な思いもある。だから、特定の人間一人をパートナーとして選び、特別扱いすることに非常に違和感を覚えるのだ。

 そして別れたらいきなりそれが解消されることも。



 また性的感情が一切ないので、彼氏彼女と過ごしたい、触れたいというのも理解できない。

 そもそも男女関係なく手を繋いだり体を触られるのが苦手だ。

 挨拶とかハグの文化圏の時は極力相手に合わせるがそれでも嫌だ。


 女子高のとき、着替えている時に触ってくる女子がとても不快だった。





 そんな思いを抱えながらずっと過ごしてきた。それが実は私のセクシュアリティだったとわかり、私はこれでいいんだ、と肯定してもらえた気になり、とても安心した。


 願わくば、アセクシャルやアロマンティックに関してもっと認知度が上がり、同じように苦しんでいる人たちが減ればいいな、と思う。



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