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瘴気の森へ
森には瘴気が溢れていた。
所々に松明の灯りがあり、暗いながらも歩を進めるには困らなかったが
狭い獣道を走るには、些か心許無い。
そんな夜気を切り裂く様に走る2つの影があった。
片方はフサフサの尻尾を器用に振りながら低姿勢で疾駆する。
「ロン毛!あんた意外に足が遅いのね?」
長髪をサラサラと靡かせながら呆れ顔のの狂四郎が
「おいミンク。気を付けろ。足元が見え辛くなってる。」
「あんた誰に言ってるの?森の中でアタシが遅れを取るとでも?」
夜目にもにやけ顔が分かる。
そんな事をやりながらも、森の瘴気は濃く暗くなっていく。
「そろそろ良いか?」
え!?──────────
サラサラとたなびく長い髪が、遠ざかっていく。
本気を出したのだ。
さっき迄のスピードも常人ならざる物ではあったが、森の視界の悪さなど気にもしていない風であった。
「遊んでいられなくなった。」
一言、呟くと闇が照らす魔の森へ消えていくのだった。