無愛想なファースト
「────とまあ、そう言う訳で今に至る。」
その男は綺麗な顔をしていた。
年齢に見合うだけの彫りの深さと性格に裏付けされたであろう無骨さはある。
「待て待て待て! 何だその無愛想な説明は。」
「バグザ、あんたも一応、ギルドマスターって呼ばれて久しいだろう?説明不足は頭で補うもんだぜ。」
ギルドマスターと言われて《ふん》と鼻を鳴らしたのは如何にも豪胆な男バグザだ。
「馬鹿言うな。予想が当たる様な相手じゃ無いだろ。お前はいつでも予想の遥か上を行く。」
不満げなバグザの顔が諦めに似た表情を浮かべた。
「とりあえずだ。緊急依頼を受けたグリッド達が、危ない魔獣共がわんさかいるA級危険地区でたまたま寝ていた狂四郎に助けられた訳だ?間違い無いな?」
「ああ。そう言う事だ。一人亡くなったのは気の毒だった。」
「ギルマス・・・ちょっと良いですか?本当にこの人・・この方は1級なんですか?」
《狂四郎》と呼ばれた男がギロリと睨む。
ヒィッと体を硬直させながらグリッドが続けた。
「いやいや、勘違いしないで下さい。実力は疑いようが無い。ただちょっと、1級のイメージが湧かないんで。」
「お前らは最近来たばかりだったな。誰でもビクつき、畏まるギルマスの部屋で寝そべってるコイツが1級の狂四郎だ。」
冒険者のランクにはA〜Eがある。
その更に上に冒険師があり、冒険師には1級から3級(サ―ド)まである。
つまり、狂四郎はギルド冒険師の頂点に居る訳だ。
「それにしてもその見た事の無い武器は・・・。」
通常、剣、槍、弓等が一般的な武器になる。
全てが漆黒に彩られた金属を何と呼ぶのか。
「これは、コイツが持ち込んだ武器で《銃》って言うらしい。どんな能力かは俺も知らんがな。」
「大体、コイツの素性も謎が多いからな。本人があまり語ろうとせんから、必要な事以外は聞いてない。」
寝そべっていた狂四郎がアクビをしながら立ち上がる。
「そんなこんなで、後は頼んだぜ?」
「おい、まだ話は───」
「終わりだ。」
閉められたドアを見つめるバグザとグリッドに苦笑いが浮かぶ。