暗闇にて・・・
暗闇が広がっている───
この地方には珍しく星の光も無い。
真の闇から、荒い息づかいだけが響いていた。
「ハァハァ・・ここまで来れば何とか・・・。」
「しかし、ありゃあ何だ? よりによってあんなバケモノが。」
数人の息づかいに混じり会話が聞こえる。
───ガサガサッ───
数人の息づかいに緊張が走る。
「ウギュァァァァァァァォォォォォ!!」
───バグアミノタウロス
多くは迷宮に住まう種族である。
ミノタウロスとの違いは額から反り返る様に生える角だ。
一角ミノタウロスとも呼ばれている。
「ああ! で・・・出たぁ!」
散り散りに走り出す人影。両刃に光る斧が宙を舞う。
巨大な斧のひと振りは、柔らかな肉と骨を両断する。
丸い闇が飛んで落ちた。
「ひぁぁ!ウ・・・ウサンガの奴が殺られた!」
「諦めないで走れ!」
バラバラに散ったのだが、声は案外近かった。
「ば・・馬鹿野郎! 纏まって走るな!散──」
その声は最後まで聞こえなかった。
獅子が天に吠えるが如き凄まじい爆音に消されたからだ。
闇に7色の閃光が疾走りいびつに歪んだ巨大な影が、地響きと共に崩れる。
「お・・・おい、これは。」
しつこく追い掛けて来ていた筈の黒い塊を呆然と見つめていると
「怪我は無いか?」
一人の男がノソリと出てきた。