ネタ枠スキル【ヒザカックン】が最強すぎた件
お久しぶりの投稿。暇すぎて適当に書いちゃいました。
この世界では15歳になる年の年末に神殿で【スキル】を授かる。人によってもらうスキルは様々だが、その中でも特に特殊なものを【ユニークスキル】という。【コモンスキル】の上位互換や、【コモンスキル】には存在しない系統のスキルなど、【ユニークスキル】は他のありふれた【コモンスキル】と比べてどれも強力な場合が多い。そして今日、俺は【スキル】を授かる…
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「ねえアレン!アレンはどんなスキルがもらえると思う?」
そう聞くのは俺の幼馴染のエイミーだ。彼女は小さい頃からよく一緒に遊んでいる友達だ。少しお転婆で小さい頃はよく二人で遊んであざを作って帰ってきて一緒に怒られた。そんなエイミーは騎士になりたいらしい。小さい頃、魔物に襲われてしまったときに騎士に助けられて以来、自分もそんな人を守る仕事がしたいと思うようになったそうだ。
「そうだな…俺はやっぱり【剣術】とかかな?」
「うん!アレンにはとっても頑張ったもんね!」
どういうことかというと、【スキル】は授かる前によく行っていた行動によって選ばれるらしいのだ。俺とエイミーはよく、木刀で剣術の練習をしていた。そのためこの説が正しいのならきっと【剣術】をもらうことができると思っているのだ。
「ああ。エイミーも【剣術】をもらえるんじゃないかな?」
「そうだね!二人とも【剣術】をもらって騎士になろう!」
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「…あなたが授かったスキルは…【料理】です!きっと料理店を開いて食事をふるまうことができるでしょう」
「やったあ!お母さん!私、料理屋になれるって!」
「まあ!夢がかなってよかったじゃない!さあ、もう帰りましょう」
「うん!」
「次の方どうぞ」
「あの子は欲しかったスキルをもらえたみたいだな」
「私ももらえるといいな」
「きっともらえるよ!さ、次はエイミーの番だよ」
「うん!行ってくるね!」
「この水晶に手を触れてください」
「こうですか?」
「はい、そうです。では次に目を瞑ってください。何か見えませんか?」
「なんか光が見えます」
「そうです。そしてその光をつかんでください」
「うわ!」
「はい、終わりました。あなたの授かったスキルは…っ!なんと!これは!ユニークスキル【聖剣技】です!これはすごいですよ!」
「ん?【剣術】じゃないんですか?」
「はい。ですがこの【聖剣技】は【剣術】よりもすごいスキルですよ!」
「このスキルで騎士になれますか?」
「もちろんです。いや、もしかしたら聖騎士にだってなれるかもしれませんよ!」
「そうなんですか!やったあ!」
「エイミー、よかったじゃないか!」
「うん!」
「次の方どうぞ」
「この水晶に手を触れてください」
「はい」
「では次に目を瞑ってください。光が見えますか?」
「はい、見えます」
「ではその見えた光をつかんでください」
「はい」
「これで終了です。あなたの授かったスキルは…おお、またなんと新しい。オホン。あなたの授かったスキルはユニークスキル…」
ユニークスキル!やった!これで剣術系統であれば…
「【ヒザカックン】です!効果は常に対象の膝の裏の位置が把握できるパッシブと、発動すると自動でヒザカックンをするというアクティブですね」
「はい?」
「戦闘職にはなれないかもしれませんが、呪いなどはないので日常生活をする分には困らないかと」
「そんな…」
「アレン…」
【ヒザカックン】?なんだよそれ!そんな俺、ヒザカックンしたか?ああ、もう。どうしてだよ…
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あの後、エイミーは神官に呼び止められ、早速騎士団に入ることになった。俺は騎士団を諦め、冒険者になることにした。【剣術】スキルがなくても訓練で剣術を学ぶことはできる。その他にももともと冒険者だった村の人に聞いて戦闘のコツなどを聞いた。そのおかげで今、アレン20歳は…
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「おりゃあ!」
「グギャッ!」
今、目の前にいるゴブリンに対し袈裟斬りを放つ。
ゴブリンは倒れたが、こちらに【火魔術:火球】を撃ってくる。だが俺は余裕を持って避ける。
ここでゴブリンは力尽きたようだ。
俺は今ソルケイの街のダンジョンに潜っている。ここはその99層。そして今、下への階段の近くにいたゴブリンを倒した。100層のボス部屋にはゴブリンキングがいる。今日はこのダンジョンに奇妙なことが起こっているらしいので、依頼を受けて来た。
このゴブリンから魔石を取り出し【魔法袋】にしまう。【魔法袋】は少し高いがC⁺ランク冒険者の俺なら手の届く範囲だ。
よし、そろそろ行くか!俺は階段を下って行った。
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階段を下った先にあるボス部屋の扉を俺は迷いなく開けた。扉を開けた先にいたのは…
「ヨク来タナ。冒険者ヨ」
…喋るゴブリンキングだった。ゴブリンキングって喋るっけ?
「お前は喋れるのか?」
「ソウダ」
意思の疎通もできる、と。
「何故ゴブリンキングが喋れる?」
「オレはゴブリンキングナドトイウ卑小ナソンザイデハナイ。オレハオーガキングダ」
「何っ?オーガキングだと?」
「アアソウダ。ココニ来ル者ガ脆弱スギテ俺ハ長イ間魔素ヲ浴ビ続ケテ進化シタノダ!」
なるほど結構前からここに来る者は帰ってきていない。だが、ゴブリンキングに勝てる程度の力じゃオーガキングは厳しいだろう。
「カカッテコイ!」
「じゃあやらせてもらうぜ!」
まず軽くフェイントを混ぜて剣を振り続ける。
だが、オーガキングはフェイントに対応し、こちらの本命のみを相手する。よく戦闘に慣れているようだ。
さらにフェイントを増やしてみるがいまいち効果はないようだ。
ここでオーガキングが反撃を仕掛けてくる。オーガキング棍棒を横に薙ごうとするが、ここで俺が大幅によけようものなら一気に間合いを詰められてしまうだろう。あとは受け止めるか、または…
「──炎よ焼き尽くせ【火球】」
俺は火魔術:【火球】を唱えた。魔術なら、魔法系スキルを持っていない俺でも魔力さえあれば使用可能だ。このファイヤーボールは主に敵を脅かすために使う。オーガキングが相手ではダメージは少ないかもしれないが、目の前に火球が飛んできたら誰だって驚く。それは魔物も同じ。
俺の狙い通りオーガキングは横薙ぎを中断して顔の前に防御を構える。
そこを俺は逆袈裟で切断しようと試みる。傷をつけることはできたが、オーガキングの強靭な肉体を切断するには至らなかったようだ。
「チッ!オ前ハ今マデ戦ッタ誰ヨリモ強イダロウ。ダガ、オレノ体ヲ斬レナイ以上、オ前ニ勝チ目ハナイ!」
「そうかもな。だが、傷をつけられた以上、絶対斬れないということはない。その傷をつけた攻撃よりも強い攻撃ならばお前を切る可能性は十分ある」
「ソウダナ。オレノ予想ダトオ前ハイチドモ【スキル】ヲ使ッテイナイ。温存シテイルノカ、ソレトモ使エナイノカ」
コイツの予想は当たっている。【ヒザカックン】は非戦闘用スキルだ。切り札なんかにはなりえない。あんなことは言ったが実際剣で斬ると魔術で攻撃する以外は攻撃手段がない。なんとかあの防御が崩れる、筋肉が緩む瞬間を作り出さなければ…
そういえば!俺は煙幕を【魔法袋】から取り出し、地面に投げた。これで敵の視界は奪った。だがこれで俺の視界もダメになっただろう。
だが、俺にはユニークスキルがある。俺には予め対象に指定しておいたオーガキングの膝の裏がどこにあるかわかる。
それを利用して、オーガキングの背後足音を立てずにに近寄る。そして無魔術:【身体強化】を発動し、オーガキングの膝裏に蹴りをくらわす。
すると、面白いくらいにオーガキングガ崩れて転んだ。その瞬間俺は火魔術:【爆炎】を唱える。
「──炎よ爆ぜよ【爆炎】」
「クッ!ココマデカ。久シブリニ愉快な戦イデアッタゾ。礼トシテ、オレノ力ヲヤロウ」
「は?何言って…」
オーガキングから光が流れ込んできてそれが俺のところまで来ると…
『必要エネルギーを確認。人間:個体名:アレンのユニークスキル【ヒザカックン】をアップグレードさせます…成功。新たなスキル【ヒザカックン】の権能は【追尾】です』
迷宮をクリアした時のアナウンスの声と同じ声がした。どういうことだ?整理すると、オーガキングが俺に自分の力(恐らくエネルギー)を託して、そのエネルギーを使って俺のスキルが進化したと?しかも追尾だと?調べてみると恐ろしいことが分かった。
この追尾という権能、俺が無魔術【魔弾】などのバレット系魔術を使うときに使うとなんと、膝の裏に当たるようになるみたいだ。相手がよけても何かに当たるまで【追尾】するようだ。
つまり、俺が背後に回らずとも相手にヒザカックンができるようだ。これは簡単に敵に隙を作れるとんでもない権能だ。
新たな権能も確認できたことだし地上に戻るか。
俺は地上への転移魔法陣に立ち、起動する。
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地上に帰ってきた。まずは冒険者ギルドに戻ってオーガロードの件の報告をしよう。
「あ、アレンさん!なにか異変はありましたか?」
「ああ。最下層のゴブリンキングが魔素を長い間浴び続けてオーガロードまでに進化してた」
「本当ですか!だとしたら危険ですね…その魔物は…?」
「ああ、もちろん俺が倒した」
「アレンさん、本当にありがとうございます」
「大したことはない。とは言えないがな。ああ、そうだ。素材の買取りを頼む」
「わかりました!」
「わあ。オーガロードの素材なんて珍しいですからね…魔石も結構大きいですし…はい、この金額です。ご不満は?」
「ない。じゃあまたいつもみたいにギルドの銀行のほうに振り込んどいてくれ」
「わかりました!あと、Bランクへの昇進試験が受けられますのでいつでもどうぞ」
「わかった。じゃ、また今度」
「はい。お疲れさまでした!」
このスキルを使えばもしかしたらエミリーの横に立てるかもしれない。
俺の初恋の人の横に。
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