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第九話 謎の依頼

「おう。悪いな、朝なのに呼び出しちまって」

「それは別に構わないけど。それより頼みたいことってなんだ?」


 街の東にある武器屋についた春人たちは、頼みごとの内容を聞く。


「それがよー、朝起きたら店の前に妙な張り紙があってな」

「ちょっと待ってくれ。ここお前の店なのか? 確か始まりの街で鍛冶屋やってたはずじゃ……」

「今はここで武器を作らせてもらってんだよ。俺が店の主人ってわけじゃねーけどな。ってそんなことはどうだっていいんだよ。問題はこれだ」


 少し話が逸れてしまったが、話を戻し、春人たちは張り紙を見せてもらう。そこには次のようなことが書かれていた。


『――武器の作成を依頼したい。素材は店の前においておく。これでできるだけ強力な剣を作ってくれ。こちらの都合で受け取りに行けないので、3日以内に地図に書いてある指定した場所に届けに来てほしい。』


「なるほど。少し気になるとことはあるけど、別に相談することでもないんじゃないか?」


 別段おかしなことは書かれていない。これだけならば取り立てて言うこともない。


「ああ、届いたのがこの店だけだったならな」

「どういうことですか?」


 アレンがもう一枚張り紙を見せる。見た目はほとんど同じで、明らかに同一人物による依頼というのが分かる。


「この店以外にも、同じように張り紙が貼ってあったんだとよ。どうやらこの街のほとんどの武器屋、防具屋に貼ってあったみてえだ。しかも、すべて依頼品は別のものときた。な? おかしいと思うだろ?」

「んー……そうだな。見たところ素材のほうもかなり貴重な者みたいだし」


 武器一本分集めるのでもかなりの労力を必要とするだろう。それが街中の武器屋、防具屋に依頼したものとなると、確かに妙だ。


「そうなると、気になるのは受け取りに行けない都合ってところだね」

「ああ。それにわざわざ早朝に依頼の張り紙を貼っているのも気になるな」


 話を聞いて深まる不審な点に、春人はただならぬ気配を感じていた。


「この張り紙を貼った人を見た人はいないんですか?」

「それがよ、まだ小さかったらしいんだよ。マントのせいで顔は見えなかったみてーだけどな」


 それを聞いて、一段と謎が深まる。幼い子供が大量に武器・防具を欲しているとは思えないし、そもそもこれほどまでに素材を集めることはほぼ不可能だ。何か裏があることは火を見るよりも明らかである。


「――わかった。俺たちも少し調べてみるよ」


 春人たちは一度武器屋を後にすると、張り紙を張を貼った人間について何か知っている人はいないか聞き込みに回ることにした。


 半日かけて聞き込みをした結果、一つだけ有力な情報を手に入れることができた。というのも、張り紙を張った子供は泣きながらいろいろな武器屋・鍛冶屋を回っていたらしい。


「泣いているように見えた……か。考えたくはないけど、もしかしたら利用されているのかもしれないな」

「やっぱりそう思うよね……。だとしたら絶対に許せない」

「とりあえず一度アレンのところに戻ろうか」


 聞き込みから帰ってきた春人たちは、得た情報をアレンに伝える。


「なるほどな。もしお前の推測が正しいなら、このまま無視をするっていうわけにもいかねーな」

「ああ。だからアレンには要望通り剣を作ってほしい。そしたら渡すときに姿を現すかもしれない。でも、そのためには誰によりも早く届けに行かないとならない」


 悪い奴らかもしれない人たちに街の人たちを会わせるわけにはいかない。


「ってことは誰よりも早く依頼品を作り上げろってことか」

「ほかの店にこの依頼を遅らせてもらうことはできないかな?」

「それは厳しいと思うぜ。まだ依頼者がどんな奴かわかったわけじゃねーからな」

「だとしたらやっぱりアレンに頑張ってもらうしかないな……。できるか?」

「俺を誰だと思ってんだ。明日の朝には仕上げてやるよ。」


 翌朝、本当にアレンは剣を完成させてきた。目の下にはクマができており、いかつさがより一層増している。


「無茶を言ってごめん」

「なに、俺が頼んだことだからな。気にすんな」

「それにしてもこの剣、よくできていますね。こんな短時間でこれほどの精度の剣を作り上げるなんて」

「ははは、そういってもらえるとうれしいぜ」


 寝ずに作り上げたひと振りは素晴らしい出来で、十分商品として売れるレベルだ。寝ずに頑張ってくれたアレンのためにもと、春人と真白は気合が入る。


 やがて、指定された場所へとたどり着く。


「この辺て書いてあるけど、一体どこにいるんだ。人の姿なんて見当たんないぞ」

「でも魔物はたくさんいるみたいね」

「とりあえずこの魔物たちを何とかしないとな」


 春人たちはあっという間に魔物に周囲を囲まれてしまった。


「こいつはカルガルーだ! 攻撃力が強いから気をつけろ!」

「「了解」」


 襲い掛かってくるカルガルーたちの攻撃をかわしつつ、カウンターを狙っていく3人。


「これでもくらいやがれ!」


 アレンの攻撃を食らったカルガルーは、後ろの岩壁まで吹っ飛んでいった。


「どんなもんだ!」

「油断しないでください! やああ!! 春人君、そっちに2匹行ったよ!」

「任せろ! ――『ファイアウェーブ!!』」


 なんとか無事にカルガルーを倒しきり、春人たちはひとまず危機を乗り越える。


「お前ら、いつの間にそんなに強くなったんだ?」

「まあ、いろいろあったんだよ」


 ロボットを倒したときにかなりの経験値が手に入ったのが、この場で活きている。


「とりあえずあたりを探しましょう」


 しばらく指定された場所周辺を探していると、春人が岩陰から除く人影に気が付く。


「誰だ!」


 こちらに気づかれたとわかるや否や、人影は逃げるように山を登っていく。


「追いかけよう!」


 春人たちも山を登り追いかけていくと、人影は道の左手にある岩と岩の隙間をするりと抜けて逃げていく。


 それを追うように春人たちも隙間を抜けると、その先には道が続いており、奥には洞窟が見える。


「あんなところに洞窟があるぜ」

「いかにも誘い込んでるって感じだな」

「この先に依頼人がいるのかな」


 人気のないこの場所は怪しいにおいしかしないが、このまま帰るわけにもいかないので、春人たちは洞窟へと向かった。


 洞窟に入ると、中には先ほどの人影――マントを羽織った小さな子供が一人泣いていた。

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