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第八十三話 これからも一緒に

「ふう。戻ってきたな。」


 雪の降り積もる街へと戻ってきた俺たちは、大河たちとは一旦別れ、ひとまず腰を下ろして話せる酒場に行くことにした。


「思ったよりも人いないな。」

「そうだね。謎の声の人もみんなに伝えておくって言ってたし、もうみんな元の世界に帰っちゃったのかもね。」

「…そう思うとなんだか感慨深いな。」


 まるで卒業式の後に誰もいなくなった教室に一人でいるみたいな感覚だ。


「これからどうしよっか。」

「そうだな…。せっかくこの街にいるんだから、まずは防具屋にでも行こうか。」


 あの店の二人にはとてもお世話になった。お別れのあいさつくらい、しっかりとしておかないとな。


「優樹もそれでいいか?」

「…。」

「優樹?」

「んえ?ああ、構わないよ。」


 優樹はそこか上の空だ。何か気になることでもあるのだろうか。


「どうしたんだ?」

「いや。リー…黒谷さんのことでちょっとな…。」

「…そうだよな。優樹は黒谷のパーティーメンバーだったもんな。」


 利用されていたとしても、これまで仲間として一緒に頑張ってきたことは事実だ。優樹にしかわからない黒谷たちの一面もあっただろう。


「これでもあの人に命を助けられてるからな。最後に一目会っておきたかったんだけどね…。」

「そういえばあの野郎どこに転移されたんだろうな。魔王がいなくなった以上、あいつらの目的は果たせないわけだしな。」

「…きっとどこかの大陸に地下にいるんだろうね。」


 地下か…。そうなると今から探し出して、会いに行くっていうのは厳しいかもしれない。


「どうする…?」

「いいさ。あの人のことだ。この世界のどこかでしぶとく生きているさ。」

「優樹…。」


 そういうと優樹は立ち上がって、手をパンと叩く。


「もうこの話は終わりだ。防具屋に行くんだろ?」

「…ああ。そうだな。それじゃあ行こうか。」


 それから俺たちは防具屋の夫婦、アクセサリーショップの男性、アレンのお世話になった武器屋、資料集めの際お世話になった図書館などに足を運び、感謝と別れの挨拶をした。


「いやー、みんな違った反応で面白かったねー。」

「そうだな。特に意外だったのは、アレンの世話になった武器屋のおじさんだよな。」

「ああ。あれは俺も驚いたぜ。まさかあの店長が少しうれしそうな顔で『そうか。よくやったな。』だなんていうんだもんな。」

「まあ、その後すぐにアレンが『うわ!店長が俺をほめるなんて雪でも降るんじゃねーか!?』なんて言うから追い出させちゃったけどねー。」


 ああ。みんなが心から笑っている。これが俺の望んでいた光景。誰も傷つかない平和な世界。やっぱり俺はみんなと一緒でよかった。


「なんか嬉しそうだね。」

「うん。最高にうれしいよ。」


 こんな時間がいつまでも続いてほしいと強く願う。


「じゃあ最後に酒場に行ってあの兄妹に会いに行くか。ついでに飯も食おうぜ。」

「あ、その前に俺と真白で行きたいところがあるんだ。先に行っててくれないか?」

「なら俺たちも…うぐッ!」


 早乙女が肘でアレンの腹を殴る。


「行ってらっしゃい!」

「???なんかごめん。ありがとう。」






「おーい。」

「はーい…って、あの時のお兄ちゃんとお姉ちゃん!」

「こんにちは。」


 俺たちは街はずれにある、少年とおばあちゃんの住む家にやってきていた。


「とりあえず中に入ってよ!」

「ならお言葉に甘えて。」


 家に上がり居間に入ると、そこには元気そうなおばあちゃんの姿があった。


「あら、あなたたちは…。」

「おばあちゃん!元気そうでよかった…。」

「うん!お兄ちゃんたちのおかげだよ!ありがとう!」


 あの薬草が効いたんだな。本当によかった。


「それで今日はどうしたの?」

「最後に君の顔を見ておきたかったんだ。」

「最後…?」

「うん。俺たち魔王を倒したからもう元の世界に帰らなくちゃならないんだ。」


 それを聞いて少年は少し寂しそうな顔をしている。


「あらあら。寂しくなりますねぇ。」

「そうですね。でも…。」


 真白はしゃがんで男の子の目線に合わせると、きれいなハート形のアクセサリーを手渡す。


「…これは?」

「ネックレスのお礼。これで離れていてもずっとつながってる。」

「でもいいの…?」

「もちろん!」


 少年は笑顔になる。


(真白…。やっぱ君は幼稚園の先生に向いていると思うよ。)


「じゃあそろそろ行こうか。」

「あら、もう行ってしまうんですか?まだ何のお構いもできていませんのに。」

「大丈夫ですよおばあちゃん。もうほしいものはもらいましたから。」


 幸せそうな二人の姿を見れただけで十分だ。それ以外何もいらない。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん!僕もいつか二人みたいに強くなって、困ってる人を助けてあげられるようになるね!」

「応援してるよ!」


 きっとあの子は強くなれる。誰かのために頑張ることは簡単じゃないけれど、あの子なら心配いらないな。


「もうすっかり夜だね。」


 空を見上げると真っ暗な世界が広がっている。


「…真白。もう一か所だけ行きたいところがあるんだけどいいかな。」

「うん。大丈夫だよ。」



 



「覚えてるか。この場所。」

「当たり前だよ。忘れるわけがない。」


 草原地帯にあるこの場所は、俺と真白が初めて正式に仲間になった場所。この岩の上でいろいろなことを話し合ったんだ。


「あの時も星を一緒に見たよな。」

「そうだね。」


 空に浮かぶ満天の星々。こんなきれいな景色を見られる俺たちは幸せ者だ。


「今日まで本当にいろんなことがあったよな。」

「うん。最初はどうなることかと思ったけどね。でも君に出会って私の世界は色づき始めたんだよ。ありがとね。」

「礼を言うのは俺のほうさ。真白に出会えてなかったら、今の俺はいないだろな。」


 すべてはこの場所から始まったんだ。


「…好きだよ。真白。」

「…私も。」


 俺と真白は自然と体を寄せ合い、そっと口づけをかわす。


 初めてのキスはほんのり甘い味がした。

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