第八十話 最高の相手
「…ってことでみんなもいいか?」
俺は大河さんと話した内容をみんなに伝える。
「もう考えてる時間もなさそうだし、その方法に賭けるのもありかもね。」
「…でも大丈夫なんだよね。」
真白が心配そうに見つめてくる。俺はニコッと笑ってうなずく。
ずっと長い間一緒に冒険をしてきた。今の俺たちに言葉は必要ない。
「おーい。いつまでそこに閉じこもってんのさー。そろそろ壊しちゃうよー?」
光の領域にひびが入り始める。5重になっているとはいえ、魔王の攻撃をそう何発も防げるわけもなく、限界を迎え始めていた。
「…よし。行こうか。」
「うん。ここで決めよう!」
2人1組でになって一斉に光の領域を飛び出すと、それぞれ別の方向に向かって走り出す。
「ようやく動き出したと思えば…。ばらけて移動なんかして、何をするつもりなのかな…?まあ、何を考えてるかはわからないけど、そう簡単にはやらせないよ!」
魔王は羽を一枚一枚針のようにして全方位に飛ばす。
いくらか食らいながらも、俺たちはそれを必死にかわしながら進んでいく。
「俺たちも簡単にできるなんて思ってない。」
「こちとら命がけで戦ってんだ!」
「やるね。その動き…。さすが、幹部全員を倒してきただけあるね。」
みんなは2人で互いにかばいながら、俺は1人で神経を研ぎ澄ませてかわしながら、なんとか目的の場所にたどり着く。
「なるほどね。みんなバラバラに動いていたのは、周りを取り囲むことで僕の背後をとるためか。」
最低限の人数でなるべく広い範囲に動けば、その分攻撃から攻撃までの時間は長くなる。そうすればいくら魔王の攻撃といえど、対応しながらでも何とか進める。
「わざわざ攻撃系の武器を持った人と盾を持った人とで組んで僕を取り囲んだってことは、確実に攻撃を当てるためってとこかな。ふふっ。楽しくなってきたね。」
魔王の背中から突然4本の翼が生えてきた。
「さあ、来てみろ!」
元の2本と合わせて6本。対してこちらも6グループ。数は一緒。あとは大河さんたちにかかってる。
「みんな行くぞ!!」
俺たちは魔王ただ一点に向かって走り出す。
それを阻止しようと魔王も6本の翼で攻撃を仕掛けてくる。
「大河さん!」
「任せとけ!!」
大河は真白と位置を入れ替わると、全身全霊で攻撃を抑え込む。ほかのみんなも同様にして魔王の攻撃を防ぐことに成功した。
一方で、俺は回避がぎりぎり間に合わず、左腕が吹き飛ばされてしまった。
「春人君…!?」
「止まるな!!」
「っ…!」
ここで止まってしまってはすべてが無駄になる。あいつを倒すためなら腕の1本や2本なんてくれてやる。
「今だああああ!!!『アスタリスク・スターライト!!!』」
俺たち6人のすべてを込めた一撃が魔王にさく裂した。
「くうっ!!」
「やったか…!」
魔王の右腕は切り落とされ、血を流している。
「はは。痛みを味わうのは何年ぶりだろう。これこそ戦いの醍醐味だ。」
「くそっ…!!あれでも倒しきれないなんて…!!」
6人同時攻撃でも魔王を倒し切ることはできなかった。しかし、確実にダメージは入っている。
だが、それはこちらも一緒だった。
「うっ……。」
想像を絶する痛みが俺の中を駆け巡る。ポーションを飲もうとも、その痛みは消えない。
「春人君!早く血を止めないと!」
真白はすぐに布を取り出して腕に巻き、その上からポーションをかける。
「どうしてよ…。大丈夫って言ったじゃない…。」
「…ここで魔王を倒せなかったらどちらにせよ俺たちは死ぬ。だったら俺は少しでも可能性のある方に賭ける。」
「…それって。」
「君の言葉だよ。」
秘境の滝でロボットと戦った時に真白が言った言葉だ。
「まだ負けたわけじゃない。ほら、あと少し頑張ろう。な。」
「…うん。そうだね。」
真白は涙を拭う。
「それじゃあ、今度はこっちの番かな。本気で行くからまだ死なないでね!」
魔王のま割に次々と謎の黒い球が現れる。
「こいつに触れると爆発するんだ。気を付けてね。」
「爆発って…。あんな量どうやって避けろっていうんだよ。」
球のスピード自体はそこまで早くないが、これでは近づこうにも近づけない。
何もできないまま時間だけが経過していき、パラメータアッパーの効力も切れてしまった。
「ぐああっ!!」
よけてもよけても次々と作り出される黒い球に、俺たちは為す術なくやられていく。
気が付けば、立っているのは俺だけだった。
「そろそろ終わりかな。」
先ほどとは比べ物にならない大きさの黒い球が作られていく。
「最後に君にはとっておきをあげるよ。」
魔王は無慈悲にも俺に黒い球を飛ばす。かわす気力の残っていない俺は、そのまま立っていることしかできなかった。
黒い球は俺に触れると大爆発を起こし、俺はそのまま壁へとたたきつけられる。
(やばい…。体が全然いうことを聞かない。くそ…。俺このまま死ぬのかな。美織の分まで生きるって決めたのにな…。やだな…。もっとみんなと一緒にいたかったな。)
「うん。結構楽しかったな。でも何年も待ってこれか…。ちょっとがっかりだな。」
「…まだよ。」
皆ボロボロで立ち上がれない中、真白だけが立ちあがり、ふらつく足で魔王のほうへと歩いていく。
「やあああ!!!」
真白は満身創痍で一人剣を振る。
「…驚いたけど、そんな攻撃当たらないよ。」
「きゃ!!」
軽い平手打ちを食らっただけで、真白はその場に倒されてしまった。
(…ここで死ぬ?何を考えているんだ俺は。真白があんなに頑張っているのに、すべてを出し切る前から諦めるな…!それにまだ俺は…、真白に言いたかったことを言えてない…。)
俺は立ち上がり、剣を握る
「…お前を倒すまでは死ぬわけにはいかないんだよ…!」
「いいねー。最高だね!これほどまでに楽しめるとは思ってもみなかったよ。…来い!黒野春人!」




