第七十六話 ユニゾン
「アトハオマエタチダケダ。」
「くそ…。春人たちがやべえ…。」
「動けー…!」
負ったダメージが大きすぎて早乙女たちは思うように動けずにいた。
(…大丈夫だよね。二人は負けたりしないよね…。私は信じてるからね。)
手を合わせたまま動かない二人。
「…一体何してるんだ…?」
「…あれはきっと『ユニゾン』だよ。」
「ユニゾン…?」
優樹はコラドの街にある図書館で見たとある本の話を始めた。
この世界には魔物に対抗する術としてスキルというものがある。中には特定の条件下でのみ習得できるものもある。しかし、実はほかのどんなスキルとも性質の異なる『ユニゾン』というものがある。過去に1度だけ使用された伝説のスキルであり、幹部をあと少しのところまで追いつめたという。しかし、それ以降『ユニゾン』を使用する者が現れなかったことから、発動条件は確かではないが、一説によると『心から信頼しあえる二人が心を一つにすること』ではないかという。もし発動することができたなら、これまでにない力を手にすることができるであろう。
「これが俺の読んだ本に書かれてあった内容だ。」
「なんだそれ。じゃあ今まさにあいつらはユニゾンってのを使うつもりなのか…?」
「おそらく…ね。」
なんだろう、この今までに感じたことのないような、それでもってどこか懐かしい感覚。真白の手を伝って心が一つになっていくのがわかる。
真白の手のぬくもりが俺を優しく包み込んでいく。
「力が体の底からみなぎってくる。これなら…。」
「うん。やろう!」
「イマサラナニヲシヨウガケッカハカワラン!!」
鬼はこちらに向かって電撃を飛ばしてくる。
俺と真白は目と目を合わせうなづく。
「ナニッ!?」
左右に分かれてよけると同時に鬼のほうへと走り出していく。
「ダガコレナラドウダ!!」
金棒から無数の雷が雨のごとく広範囲にわたって放たれる。
しかし、俺たちはトップスピードを維持したまま、雷をかわしながら進んでいく。
「グオオオ!!!」
雷は当たらないと判断した鬼は、渾身の左こぶしを放つ。
それを上にジャンプしてかわす。
「これで決める!!!」
真白と剣を重ね合わせ、ありったけの力を込めていく。
「バカメ。コレデオレノカチハキマッタ!」
鬼は右足を半歩下げる。
「まずい…!!あいつ右手の金棒で春人君たちを攻撃するつもりだ…!」
「ってことはわざと左手で攻撃することで上によけさせたってこと!?」
「空中じゃあの攻撃はよけられない…!くそっ!!」
「シネー!!!」
誰もがもうだめかと思った次の瞬間、鬼は突然よろける。
「…ッ!?」
(右足が動かない。なぜだ。さっきまで普通に動かせていたはず。まさか…!)
「…何とか間に合ったみたいだな…。」
戦い始めてから俺たちはひたすら右足を集中して狙ってきた。一発一発は大したダメージにならなくても、何度もくらえば右足への負荷は尋常じゃないものになる。いくら鬼といえどもそれは変わらない。
「キサマラコレヲネラッテ…!!」
鬼は崩れた体勢のまま必死に身を守ろうとする。
「それを見抜けなかったお前の負けだ!」
「これで終わりよ!!」
『エクスカリバー!!!!!!』
二人で放つ渾身の一撃は最高の防御力を誇る鬼の胴体を真っ二つに切り裂いた。
「ガハッ!!バカ…ナ…。」
「勝負ってのは最後の最後までどっちが勝つかわからないんだよ。」
「ソウカ…。サイゴ二……オマエタチトタタカエテ…ヨカッ…タ。」
最後にそう言い放つと、鬼は力尽きた。そしてフィールドが解かれていく。
「やった…ついに幹部を全員倒したんだ。」
「そうだね。私たちここまで来たんだね。」
長い道のりだったが、残すは魔王一人。
「おーい!!」
向こうからみんなが走ってくる。
「すごかったなーあれ!二人ともめっちゃかっこよかったよ!」
「うん!特に最後のがすごかった!」
「ありがとう。正直私もまだ驚いてるんだ…。あんなこと初めてだったから。」
あれほどの力は経験したことがなかった。
「二人は知っていたのか?ユニゾンのこと。」
「いや、それがまったく。あの時なぜか二人とも全く同じことを考えたんだよな。」
「うん。」
「…そんなこともあるんだな。」
自分でも本当に奇跡だったと思う。いろんな歯車が噛み合って今回の勝利へとつながった。
「本当に素晴らしかったよ。まさか勝ってしまうとはな。本当はここでお前たちには死んでもらうつもりだったのだがな。」
「…黒谷。」
「どういう意味だ。」
俺は黒谷をにらみつける。
「まあいい。ここまで来たんだ。お前たちには教えてやろう。私の計画をな。」




