第七十四話 絶望に抗え
「グルァァァ!!!!」
鬼の猛攻に防御が間に合わず、俺はフィールドの端まで吹き飛ばされる。
「…モウオワリカ?」
「くっ…。」
完全に遊ばれているのがわかる。俺相手では本気を出すまでもないということか。
(くそ…、力量差がありすぎる…!)
このままじゃやられる…。そんな時だった。俺の持っているペンダントが光りだしたと思うと、フィールドの向こうから真白たちが入ってきた。
「真白は春人のところへ!こいつはあたしたちが止めておくから!」
「…うん。わかった。お願いね。」
「ということだからお前の相手は俺たちだ!」
「…イイダロウ。オマエタチノチカラヲミセテミロ。」
早乙女たちは一斉に仕掛けていく。
「春人君!遅れてごめん。」
「いや、助かったよ。ありがとう。」
間一髪のところだった。俺一人では相手にすらならなかった。
「みんなが時間を稼いでくれているうちに早くポーションを!」
今俺の目の前では激しい攻防が繰り広げられている。
「ゴクゴク。よし。」
「それじゃあ私たちも行こう!」
体力の回復を済ますと、すかさず戦闘に参加する。
「ありがとうみんな!助かったよ。」
「あんたが噂の春人君か!無事でよかった!」
そういえば見ない顔が何人かいる。
「俺らも真白たちには助けられたからな。その仲間がピンチってんなら協力するぜ!」
そっか。彼らが俺のいない間真白たちと一緒にいたっていう大河さんたちか。
「ありがとう。一緒にあいつを倒すぞ!」
ここには一緒に戦ってくれる仲間がこんなにもたくさんいる。一人では無理でもみんなと一緒なら勝てる!
「ヨウヤクゼンインソロッタヨウダナ。ナラバモウエンリョハイランナ。ゼンリョクデイクゾ。」
鬼の目が赤く光る。やはりこいつは今までの幹部とは違う。
でももうひるんだりしない。そっちが全力で来るならこちらもそれに答えてやるまでだ。
「まずは俺と真白と優樹の3人で金棒の攻撃を何とかする!そのスキにみんなは足を狙って敵の動きを止めてくれ!!」
「了解!!」
こいつはきっと頭がいい。それなら変に作戦を練るよりも相手の動きを一つ一つ対処しながら攻撃していくのがベストだ。
「デキルモノナラトメテミロ!」
こいつの攻撃力は何度もくらったからよくわかっている。スキルを出し惜しみしている場合ではない。
『プロミネンス!!!』
『ホーリーウィンド!!!』
『ストリームランス!!!』
3人同時に放った一撃が鬼の攻撃とぶつかり合って激しい力の波を生む。その力はほぼ互角だ。
「なんて力のぶつかり合いだ…!」
しかし、徐々に均衡が崩れ始め、俺たちは押されていく。
(3人がかりでも抑えられないのか…!)
『リベリオン!!!』
互いの攻撃が再び動きを止める。
「私も手伝うよ!!」
「マイちゃん!」
マイが加わったことで力の差が埋まったのだ。
「今だ!押せーーーー!!!!!」
ありったけの力を込めて押し返していく。
「ナニッ!?」
「はあああああ!!!!」
劣勢から一転してついに俺たちは金棒を弾くことに成功した。勢いに押され鬼はそのまま態勢を崩す。
「よっしゃ!一気に攻めろ!!」
この好機を逃すまいと残った全員で右足を集中砲火する。
『アースクリエイション!!!』
『月光乱舞!!!』
次々とスキルを放つアレン達。これにはさすがの鬼でもただでは済まないはずだ。
あまりの怒涛の攻撃に戦場は煙に包まれる。
「やったか…!?」
次第に煙が晴れていく。
「な…!?」
煙の中から現れたのは、あれほどの攻撃を食らったのにも関わらず仁王立ちしている鬼の姿だった。
「サスガニキイタナ。コイツハソウゾウイジョウダ。」
考えが甘かった。こいつは魔王を除けば全魔物の頂点に君臨している魔物だ。そんな奴がこんな簡単に倒せるはずがない。
「そんな…。あれでもだめならどうすれば…。」
「この化け物が…!」
みんなの自信がなくなっている。このままではだめだ。
約束したんだ。美織の分まで生きるって。
決めたんだ。もう挫けないって。
俺は…。
「俺はもう諦めたりなんかしない!!!」
俺は一人で鬼のほうへと突っ込んでいく。
『ラストメモリー!!』
無我夢中で剣を振る。
(コイツ…スピードガアガッテイル…。)
「はあああ!!!!」
「ダガオソイ!!」
鬼の攻撃で俺の剣は真っ二つに折れてしまった。
「コレデオワリダナ。」
「…まだだ。」
俺は後ろを振り向く。そこには勝たんと立ちあがるみんなの姿があった。
「…らしくもなく諦めるところだった…。」
「忘れてたぜ。ピンチはいつものことだってことをよ。」
「私はみんなで勝ちたい。」
「もう一度やってみよう。」
「たとえ俺の剣は折られようとも、みんなの心だけは折らせはしない!!」




