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第七二話 見せ場

「まずは俺が突破口を切り開く!」


 優樹が一番に飛び出していく。こういう時はいつだって優樹が最初だ。


 階段の前にいる魔物は全部で10体ほど。無視して突き進むには数が少し多すぎる。


『レイジングストリーム!』


 速度を維持したまま巧みに槍を回転させて敵をなぎ倒すスキルで半分近くの魔物が倒され、ふさがれていた道が開かれた。


「優樹に続け!!」

「ギィィ…。」


 勝てないと悟った魔物たちはそのまま逃げだしていく。


「逃げ出すくらいなら最初からどいとけやぁ!!」


 黒谷パーティーの一人が、背を向けて逃げていく魔物を一刀両断する。


 その姿はどちらが襲われているのかわからなくなるほどであった。


「雑魚狩りはほどほどにしておけ。体力を温存しておくためにもな。」

「…了解。」


 今まで一緒に戦ってきたが、俺はいまだに優樹以外の3人のことをあまり知らない。


 以前優樹が黒谷は命の恩人だとか言っていたが、ほかの3人はどうなのだろうか。人にはそれぞれ事情があるから深くは聞かなかったが、優樹と違って仲間というよりも部下という感じがする。


 しかし3人とも誰かの下につくことを嫌いそうなだけに余計不思議だ。


「うおっ!まじかよ…。」


 4階につくと、予想通り大量の魔物たちが待ち構えていた。


 この階段の前だけでこれほどの数がいるということは、他の階段の前にも同じ数が待ち構えているはず。合流させる前にここは何としてでも突破しておきたい。


「春人、真白。少しの間時間を稼いでくれ。」

「何か策があるんだな?」

「おう。」


 それならアレンに近づかせるわけにはいかない。


 前では早乙女とマイ、黒谷たちが戦っている。その中から抜けてきた魔物たちを俺たちは一人残らず倒していく。


「よっしゃ、もういいぜ!」


 そういうとアレンは魔物たちのほうへ一直線に走っていく。


「え、何!?」

「危ないぜ!『ロックソーン!!』」


 地面に向かって思い切り槌を振り下ろす。すると無数のとげがしたから魔物たちを貫いていく。


 たくさんいた魔物たちをあっという間にすべて倒してしまった。


「いつの間にそんな技を?」

「これは前回幹部を倒してレベルアップした時に覚えたんだけどよ、発動までに時間がかかるうえに連発できねーんだ。」

「そうか…。」


 ということはもうこの技に頼ることはできそうにないな。


「ギィィ!!!」

「前からまた…!?」

「そこを右に行こう!」


 まだ距離はあるが、追い付かれてしまう前に曲がり角を右に進む。


「こっちからも…!?」

「でも数はさっきほどじゃない!」


 これならば後ろを追ってくる魔物たちに追いつかれずに倒しきれるかもしれない。


「だったらここはあたしが…!」


 早乙女はクラウチングスタートの体勢から思い切り走り出す。そして魔物の手前で大きくジャンプし、足をそろえてドロップキックを放つ。


 ドロップキックを食らった魔物は後続の魔物をまきこんで後ろへと飛ばされる。


「まだまだ!」


 早乙女は着地と同時に両手を地面につけ、逆立ち状態で足を回転させる。


 顔面にもろに蹴りを食らった魔物たちはその場で倒れこむ。


「どんなもんだ!ふんっ!」


 一度もスキルを使っていない。純粋な運動能力と技術の高さがなせる技だ。


 しかし、完全に倒し切ったわけではない。かといってトドメを刺している暇はなさそうだ。


「起き上がってくる前に先へ行こう!」


 もうすぐ後ろまで魔物たちは迫ってきている。


「そこを左に曲がるぞ!」


 黒谷が後ろにいる俺たちに聞こえるように大きな声で言う。


 俺たちは言われる通り左に曲がったが、その先にあるのは壁だった。


「ここって行き止まりじゃん!」


 後ろを振り返るとすでに魔物たちが曲がり角を曲がってきていた。


「どうすんだ!?引き返すにももう…。」

「慌てるな…。」


 黒谷はこんな状況なのに落ち着いている。それどころか余裕を感じる。


「私も見せ場がほしいのだよ。」


 黒谷は壁と向かい合い、大剣を構える。


 大気が揺れており、大剣に力が集まっていくのがわかる。


『ゼロスラッシュ』


 黒谷の放った一撃は分厚い壁を最も簡単に突き破る。その衝撃は凄まじく、魔王城中に大きな音が鳴り響く。


 その光景に魔物たちでさえ呆けている。


「これで階段は目の前だ。」


 たしかに壊した壁の向こう側には5階に続く階段がある。


「何をぼうっとしている。行くぞ。」


 驚きを隠せない俺たちにお構いなしで黒谷たちは進んでいく。


「優樹は知ってたのか?黒谷があんな技使えたの。」

「一応ね。見たことはなかったけど。」


 こんな強力な技があるならどうして幹部戦で使わなかったのだろう。


 何はともあれこうして4階を無事に突破することができた。

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