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第七十一話 特攻

「どうやら魔物はいないみたいだな。」


 ここら辺にはいないとわかって別の場所を探しに行ったのだろう。


「慎重に進もう。」


 またいつ魔物が現れるかわからない。背後や音などに気を付けながら最上階を目指していく。


「ここを登れば3階だな。」


 階段までは特に魔物と出くわすこともなく行くことができた。


「そういえば魔王城って何階建てなの?」

「外から見た限りでは5階建てじゃないかな。」


 一つ一つの階の天井がかなり高いことを考えると妥当だと思う。


「じゃあ後半分か。あたしこういうの得意じゃないんだよねー。」

「仕方ないよ、こんなところで見つかるわけにもいかないし。」

「分かってる。最上階に着くまで頑張るよ。」


 確かにこそこそ隠れながら進んでいくのは彼女の性格にはあっていないかもしれないが、今は何より全員無事に幹部のところにたどり着かなければならない。そこからが本当の戦いなのだから。


「3階も特に変わったところはなさそうだ。このまま行こう。」


 慎重に足を進め、廊下と廊下とが交差する前まで歩く。


「右よし、左よし。ゴー!」


 左右を確認し、魔物の影が見えなくなるのを確認してからまた足を進める。


 そして、突き当りに着いたところで再び足を止める。


「…ちっ。」

「どうした?」


 俺はこっそりと顔を出して左のほうをのぞき込む。


「階段と…魔物群れか。」

「簡単には進ませてくれそうにないね。」


 魔物たちは明らかに階段を塞ぐように立っている。


「どうやら魔物もバカではないようだな。」

「ああ。」

「どういうことだ?」

「魔物たちは俺たちを2階で見失っただろ?つまりそれよりも上の階に俺たちはいると考えるのが普通だ。魔物たちは4階と5階に続く階段を見張ることで、必ず俺たちを見つけ出すことができるってわかってるんだ。」


 確かにこれまでにもいくつか知能を持った魔物はいたが、これほどまでに連携が取れるなんて…。


「なるほどー。だからここに来るまでにほとんど魔物を見かけなかったわけだ。2階なんてすごく順調に行ったもんねー。」

「外に出られない以上、上に進むしかないってわかってるんだろうな。…ん?」


 ちょっと待てよ。だとしたらなぜこの階にもほとんど魔物がいないんだ?見失ってからそれほど時間もたっていないし、いるとしたら3階の可能性が一番高いはずだ。それなのにここに来るまでに1回しか魔物を見かけなかった。


「まさか…。」

「君も気が付いたか。そう、奴らは私たちを追いかけまわそうとしているわけではない。追いつめるつもりなのだろう。」

「なるほど…。魔物たちは私たちを4階で仕留めようとしているってわけね。」


 4階へと続くすべての階段に見張りを置くことで、俺たちはそこで1度戦闘になる。そうなるともうバレないように進むことは不可能だろう。だったらいっそのこと…。


「早乙女。こそこそ隠れながら進むのは苦手って言ってたよな。」

「うん。」

「だったらこっからは鬼ごっこといかないか?」


 こちらから居場所を明かしてしまおうじゃないか。


 もし仮に階段を見張っている魔物たちにバレずに通過できたとしても、魔王城にいるほとんどの魔物が集まっている4階では隠れながら進むのはできない。見つかって囲まれてしまったら結果的にすべての敵を相手にしなければならなくなる。


 それならば少しでも敵の位置が分散している今のうちに強引にでも先へ進む方がいいかもしれない。


「ちょちょちょっと待って!あたしは別にそれでもかまわないけど、その前にどうして4階に魔物たちがいるってわかるの?」

「早乙女は敵の目的地がわかっている場合、どこで待てば確実に見つけることができると思う?」

「それは目的地じゃないかなー。」

「でもそこには誰もいないとわかったらどうする?」


 残る選択肢は3階か4階だ。そしてより確実なのが4階ということになる。


「でも誰もいないんだったら5階で待っててもいいんじゃねーか?」

「それもあり得るとは思うけど、4階への階段を塞いでいるあたり4階にいると考えるのが普通だよ。もし5階で待機していたとして、ここであえて戦力を割く必要がないからな。」


 なぜ4階を選んだのかは魔王城内の構造を理解している魔物たちにとって、地の利が生かせる場所を選んだのか、ほかに理由があるのかはわからない。


「まあ、どっちにしたってこそこそする必要はもうないだろ?だったら後は幹部のところまで突っ走るだけだね。」

「はぐれないように注意しないとね。」


 ここで一人でもはぐれたら終わりだ。


「…黒谷。最初に言っておくが、誰か一人でもはぐれたら俺たちは真っ先に助けに行くからな。たとえ魔物たち全員を相手にすることになっても。」

「私たちもそのつもりだ。」


 嘘を言っているようには見えなかった。


「…信じていいんだな。」

「ああ。」


 どちらにしても今は黒谷たちの力が必要だ。


「んじゃ、行きますか。」

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