第六十八話 本拠地
「いてててて。」
「くっそ…なんだったんだ。」
強引に魔王城の中へと引き込まれた俺たちは、気が付くとエントランスにいた。
エントランスには、扉から奥にある扉まで一直線に赤いじゅうたんが敷かれており、その周りには気味の悪い像がいくつか並べられて立っている。また、壁には魔物の写真や絵が飾ってあり、天井にはシャンデリアまである。まさしく魔王城にふさわしい雰囲気だ。
「みんな大丈夫か?」
「大丈夫ー。ちょっとお尻が痛いけど。」
とりあえず今は何よりも怪我することもはぐれることもなかったのが救いだ。
「どうやら鍵は締まってるみたいね。この様子じゃ壊して外に出るのも難しそう。」
外から見た扉と違い、内側は見たこともないような物質で頑丈に作られていた。
「私たち閉じ込められちゃったの?」
「そうみたいだねー。きっと黒谷のおじさんたちもこうして中に引き込まれたって感じかなー。」
あたりを見回してみたが黒谷たちの姿はない。
あの強力な引力から抜け出せたとは考えにくいので、おそらくは先に進んだのだろう。
「このままこうしていても何も始まらないし、俺たちも進もうか。」
先へ進もうとじゅうたんの上を歩いていく。
「…なんか変だな。」
「どうしたの、春人君?」
「いや、誰かに見られているような…。」
妙に視線を感じる。確かに周りには誰もいないはずなのに。
一度振り返って後ろを確認してみても人や魔物の姿はない。
「気のせいか…。」
俺がほっと息をつくと、ちょうど俺の横に立っていた銅像がガタッと動いた。
「…!?」
俺はすぐさま像のほうに目をやるが、像はその場で静止していた。
「なんだよ、さっきから。どうかしたのか?」
「…この像が動いた気がしたんだけど、俺の勘違い……」
俺はそっと像に近づき、そのまま剣を横に振る。
すると、銅像は俺の攻撃をかわすように後ろへと下がる。
「…じゃないみたいだな。みんな気を付けろ!この像、いやもしかしたらすべてが敵かもしれない!」
ここは敵の本拠地。どんな敵が待ち受けていても不思議ではない。
もう一度周囲を確認する。すると写真に写っていた魔物が額縁の中から出てきた。
「あれ写真じゃなかったのかよ!」
「もう!この像だけでも面倒くさいっていうのに!」
エントランスだけで20近くの魔物がいるなんて。この城には何体の魔物がいるというのだろうか。
「とにかく倒すぞ!こんなところで負けるわけにはいかない!」
俺たちはそれぞれ背を預けあいながら向かってくる魔物を倒していく。ここまで来ただけあって一体一体がかなり強くなっているが、素早さはそれほどない。よく敵の動きを見てカウンターを入れれば少ない動作で倒せる。
しかしそれを数がカバーしている。次から次に襲い掛かってくる魔物に集中力を削られる。
「こいつら倒しても倒しても数が減らねー!」
「…!?あそこ!!」
真白が入り口から見て右側の手前から3つ目の写真を指さす。
「あれは魔法陣!?」
「あそこからどんどん魔物が出てきてる!」
(このままじゃキリがない…。全部倒している余裕はこっちにはないぞ…!)
魔法陣から続々と魔物が転移させてくる。
「みんな目を閉じて!!」
真白が天井に向かって閃光弾を投げると、あたり一面がまばゆい光に照らされる。
この場所が暗いのも相まって直に光を見てしまった魔物たちはその場で苦しみ始める。
「今のうちに扉の方に!!」
俺たちは苦しむ魔物と魔物の間をぬって扉へと走る。
「ふうーー。助かったーー。」
「ありがとう真白お姉ちゃん!」
真白の機転のおかげで難を逃れることができた。
扉の向こうは廊下になっており、薄暗い道が数十メートル続いている。
「閃光弾なんていつ買ったんだ?」
「ポージョンとか買うついでに使えるかなーって買っておいたんだけど、まさかこんなすぐ役に立つとは思ってなかったよ。」
何か買っているなとは思っていたけど、それが閃光弾だったなんて。もしかしたら工夫次第でどんなアイテムでも使えるかも。
「ドンドン!!!」
魔物が扉をたたきだした。目も慣れてきて俺たちがいないことに気が付いたのだろう。こうなってしまえば突破されるのも時間の問題だ。
「奥に見える階段まで走るぞ!」
扉が壊される前に俺たちは階段を目指す。
「ガシャーン!!」
「くそ!もう壊されちまったぞ!」
「大丈夫、足はこっちのほうが速…っ!?」
前からも魔物が現れ、道をふさぐ。
「前からも後ろからも…。どうする!?」
こんな狭い場所で挟み撃ちにされてしまっては戦ってもかなり分が悪い。
だったらいっそ…。
「…このまま突っ切るぞ!!」




