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第六十五話 廃墟

 幹部戦の次の日、俺たちは早速新大陸へと向かうことにした。


「最後の大陸か…。どんな場所なんだろう。」


 次で俺たちの冒険は勝っても負けても終わることになる。


「そうだなー、今までで一番危険ってことだけは確かだろうな。」


 魔王のいる大陸だ。きっと俺たちには想像もできないような困難が待ち受けているはずだ。


 しばらく歩き、前回の幹部戦の場所まで戻ってきた。


「…この道を抜けた先が最後の大陸があるんだよね…。」


 俺は唾をごくりと飲み込む。額から一滴の汗が滴り落ちる。


「…ここを抜ける前にもう一度荷物を整理しておかない?」

「それもそうだな。」


 準備は念入りにしておいて損はない。緊張をリセットするためにもいい機会になる。


 俺たちは自分の荷物を確認する。


「ポーションに毒消し草、食料に水、それから……うん。大丈夫そうだね。」

「…じゃあ行くか。」


 最終確認を終えた俺たちは最後の大陸へと続く道を歩いていく。奥に進むにつれて自然と会話がなくなっていき、岩窟の中は足音だけが鳴り響いている。


「…見えてきたな。慎重に行こう。」


 光が差し込んでいる。あそこが岩窟の出口だ。


「なんだこれ……。」


 岩窟を抜けると、俺たちは衝撃のあまり言葉を失う。目の前に広がるのは辺り一面荒廃した大地。右を見れば焼け落ちて廃墟となった建物が、左を見れば毒の沼とそれに群がる魔物たちがいる。


 そして正面に見えるのようは不気味な雰囲気に包まれた大きな城。遠目で見てもあれが魔王城ということは一目瞭然だ。


「想像以上にひでえな…。」

「…とりあえずあそこの廃墟のほうに行ってみよう。もしかしたら人がいるかもしれない。」


 可能性は低い。ここは歩くだけで息が苦しくなるほどに空気が汚れており、これでは植物も育たないだろう。とても人が生活できる環境ではない。


 それでもかつては人の住んでいた大地。何か残っているかもしれない。


 廃墟に着くとマイが何かを見つけた。


「何かな、これ。」


 俺が手に取ってみると、それはまるでエメラルドのように緑色に輝く石だった。


「返せ!!!!」

「え?」


 声のした方へと顔を向けてみると、まだ小さい男の子と女の子が立っていた。女の子の方はまだ4、5歳くらいの幼い子供だ。


「えっと…君たちは?」

「それを返せ!!!」

「それって…これのこと?」


 緑色の石を男の子に見せる。


「ああ!それは妹の大切なものなんだ!返せ!!」

「大丈夫、別に盗もうとしたわけじゃないよ。」


 俺は男の子のほうへと歩いていく。


「はいどうぞ。」

「…。」


 黙って男の子は緑色の石を受け取る。


「ほらルナ、もう見つけたから泣くなって。」

「…うん。ありがとお兄ちゃん。」


 どうやら二人は兄妹のようだ。


「…ねえ、君たちはここの子なの?」

「…ああ。そうだよ。お前らこそ誰だ。」

「俺は黒野春人。あそこにいる人たちはみんな俺の仲間だ。」


 だいぶ警戒されているようで、女の子は男の子の後ろに隠れている。


 そんな時だった。


「グ―――。」


 男のこのおなかが鳴る。


「…もしよかったらこれでも食べるか?」


 俺は持っていたおにぎりを二人に渡す。


「これは俺の仲間が作ってくれたおにぎりだ。めっちゃおいしいから食べてみな!」

「…。」


 おにぎりを受け取りはしたが、なかなか食べようとしない。何か入っているのではないかと疑っているようだ。


「大丈夫だよ。怪しいものなんて入ってないから。」

「…信じられるかよ。」


 男の子がそうつぶやいた。確かに知らない人からもらったおにぎりを食べろっていう方が無理か。


 しかし、こんな廃れた場所にこんな小さな子が二人、放っておけるわけがない。


 ろくにご飯も食べれていないだろうこの子たちに、どうしたらおにぎりを食べてもらえるのか。そんなことを考えていたらマイがこちらへ向かってくる。


「いらないなら私がもらう。」


 そういって男の子の持っていたおにぎりを食べ始める。


「おい、お前…!」

「んんーー!おいしいーー!」


 マイはとてもおいしそうにおにぎりを食べる。その顔は演技でも何でもない心の底から湧き出てくる笑顔だ。


「…私も食べる。」


 マイにつられて女の子もおにぎりを口にする。


「…おいしい……!」


 さっきまでの怯えた姿からは想像できないほどのいい表情で女の子はおにぎりにかぶりつく。


「くっ…!」

「ほら、これあげる。」


 マイは自分の持っていたおにぎりを男の子に渡す。


「一緒に食べよ…?」

「…うん。」


 男の子はマイからもらったおにぎりにかぶりつく。


「…確かにうまいな…。」

「でしょ!!」

「…なんで俺たちにごはんを分けてくれたんだよ。」

「それはね、困ったときは助ける、私もそうやってみんなに助けられてきたからだよ。」


 マイの口からその言葉を聞いた時、俺は少し胸にグッとくるものを感じた。


 ああ、この子はちゃんと成長しているんだな、強くなったなと思う自分がいる。そのことが自分のことのようにうれしいんだ。

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