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第六話 絶体絶命

「秘境の滝っていうぐらいだから、簡単には見つからないのかな」


 ふと真白が言う。今わかっていることは、秘境の滝は森の中にあるということ、そして薬草は秘境の滝にあるということだけである。


 森の中はそこまで入り組んだ道をしているわけではないので、時間をかければいつかは見つけることができるが、おばあちゃんの病気がどこまで進行しているかわからない以上時間はかけられない。


「でも滝っていうことは、崖になっているところさえ見つけられれば……」

「あと手掛かりになりそうなのは……、川とかかな」


 滝から連想できる点を頼りに、春人たちは森の中を探し回る。だが、そう簡単に見つかるわけもなく、ただ時間だけが流れていく。


「全然見つからないな……。どうしようか。日が暮れるまでほとんど時間もないし……。」

「1度引き返す方がいいかもね。でも、あの子になんて言えば……。もう悲しそうな顔を見たくないよ……」

「そうだよな。でもこのまま続けたら、今度は俺たちが無事に済むかわからないしな……」


 探索を続けるかどうかで悩む春人たちの前に、すごい勢いで何かが迫ってくる。ドタドタと音を立てながら向かってくるそれは、顔を真っ赤にして怒りの感情をむき出しにしている。


「――あれってさっきのイノシシの群れじゃない!?」

「あれはいくら何でも数が多すぎる! ここはいったん退こう!」


 春人たちが先ほど相手にしていたのは群イノシシと呼ばれる魔物で、仲間が1匹でも倒されると仲間全員で襲い掛かってくるという性質がある。こうなってしまえば最後、対象を見失うまで追いかけ続ける。


「どうしよう……。このままじゃ追いつけれちゃう」

「あそこに隠れよう」


 必死で逃げる春人たちは、運よく見つけたわずかな隙間に身を隠す。


「まだ俺たちを探してるみたいだな……。これはしばらくはここで息をひそめて、イノシシの群れがどこか行くのを待つしかなさそうだね。」

「仕方ないね……。それにしてもここ、ただの隙間かと思ったけどかなり奥に続いているみたい。」

「少し奥まで行ってみる?」


 春人はバッグから懐中電灯を取り出し、先を照らす。すると奥に進むにつれて道幅が広くなっているのが確認できる。それによく見ると、壁は明らかに人の手によって積まれたような岩で形成されている。


「この洞窟、人工物なのか?」

「んー、どうなんだろうね。自然にできたにしてはよくできす……きゃあ!!」

「どうした!?」


 春人は懐中電灯の光で真白を照らす。すると、真白の足元には地下まで続く階段があった。


「危なかったー……。危うく転がり落ちるところだったよ」

「そうならなくてよかったよ。それにしてもなんだってこんなところに階段が?」


 地面に隠された――というには風化が進み、その意味をなしていないようにも思える階段。この下には少なからず何か大事なものが残されているに違いない。


「降りて……みようか」

「え?」


 降りようと提案する春人に、真白の返事は少し裏返る。


「もしかして、真白さん……怖かったりする?」


 面白半分で聞く春人であったが、真白は予想外の答えを返す。


「こっ、ここ、怖くなんか……怖くなんかないよ!」


 明らかに目を背ける真白。言っていることと表情が全くあっておらず、その顔には不安の色が見える。その姿に春人は笑みをこぼす。


「もう! 平気なら春人君が先行ってよ!」

「ごめんごめん、わかったよ」


 春人の後ろで拗ねる真白。怒らせてしまったことを反省しつつ、真白の意外な一面が知れてよかったと、少しだけこの状況に満足する春人であった。


 階段を下に降りていくと、前方に明るい場所が見えてくる。


「あそこだけ明るいね。なんだろう」


 ここは地下なので外の光でないことは明らかだ。この先何があるかわからないため、慎重に足を運んでいく春人と真白。


 光のさす場所へと着くと、二人の目の前に広がったのは、滝の流れる自然豊かな場所だった。木々のさわやかなにおいに包まれ、滝の流れる音だけが鳴り響いている。


「ここってまさか……」

「うん。ここがどうやら秘境の滝みたいだな」


 地下に流れる滝は、まさに秘境の滝と呼ばれるにふさわしい場所にあった。


 ――道理で見つからないわけだよな。


 あの時イノシシに襲われなければ、あの時運よく岩の隙間を見つけなければこの場所にたどり着くことはなかっただろう。


「あ! 薬草ってあれじゃない? 私とってくるね」

「ありがとう。……それにしてもこの光はどこから差し込んでるんだろ」


 そう思って春人が滝に近づいたその瞬間、突然大きな音を立てて揺れ始める。そして、自然豊かなこの空間を包み込むようにフィールドが展開する。


「え!? これって……まさか!?」

「ウソだろ!? どうしてこんなところで……!」


 春人たちを囲っているフィールドは紛れもなく幹部戦の時と同じものだった。


「侵入者発見。侵入者発見。タダチ二排除シマス」

「侵入者!? ちょっと待って! 私たちは別にそんなんじゃ……」

「……やばいな。逃げられないうえに2人だけだなんて」


 真白の声は無情にもロボットに届くことはなかった。

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