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第五十八話 精神世界

「参加してくれること感謝する。やはり君たちの力は幹部を倒すうえで必要不可欠なものだからな。」


 翌日、私たちは幹部のいるという街から北西に行ったところにある岩窟に来ていた。


「それにしてもよかったのか?春人君は今もまだあの日のショックから立ち直れていないんだろ?」


 優樹が心配そうに話しかける。


「いいんです。私たち全員で決めたことですから。」

「そっか…。」


 私たちは岩窟をどんどん先へと進んでいく。この辺りには雪が積もっていないため動きに支障が出ることはなさそうだ。


「ついたぞ。あれがこの大陸の幹部だ。」


 視線の先には大きな剣と盾を持った骸骨が立っていた。


「骸骨!?あれは生き物なの!?」

「ある意味定番の魔物ではあるけどな…。」


 実際にこうして目の前で見てみると迫力が違う。とても禍々しい。


「けどまあ何が相手でもあたしたちは倒すだけだけどね!」

「その通りだ。あの武器に気を付けて行こう。」






「…ここはどこだ。」


 俺は気が付くと四方八方真っ暗な暗闇の世界にいた。


「なんでこんなところにいるんだっけ。」


 俺は少し前の出来事を思い出してみる。


「…そうだ。俺は幹部戦に行って、美織に助けられたんだ。でも美織は俺をかばったせいで…うっ……あああああ!!!」


 脳裏によみがえるあの記憶。目の前で大切な仲間が殺された。手に残るあの感触は忘れもしない。


「お前が殺した。」

「お前がだらしないせいで美織は死んだんだ。」


 あの記憶が俺を苦しめ続ける。何より俺自身が俺を責め続ける。


「お前が殺したんだ。」

「…やめてくれ。もうやめてくれ…。」

「お前が死ねばよかったんだ。」


 耳をふさいでも声は消えない。


「…助けてくれ……。」


「春人さん。」


 どこからか優しい声が聞こえてくる。


「大丈夫ですか?」


 俺は後ろを振り向く。


 そこには美織が立っていた。


「美織…?美織なのか…?」

「そうですよ。忘れちゃいましたか?」

「どうして…。だってあの時に…。」


 美織は目をつぶって答える。


「ここは春人さんの精神世界です。つまり私は春人さんの心の中にいる私なんです。」

「精神世界…。」


 そうか。ということは俺はまだ目覚めたわけではないってことか。


「…少しお話良いですか?」


 場面が一瞬で切り替わる。目の前に広がったのは、俺の通っている学校の教室だった。


「ここが春人さんの教室…。」

「うん、懐かしいな…。でもどうしてここへ?」

「もし春人さんと同じ学校だったら、今頃こんな風に同じ教室で授業を受けていたのかなって思いまして。」

「…そうだな。」


 本来ならば俺たちは学生で、それも一番大切な時期だ。まさかこんな世界で魔物と戦うことになるとは思ってもいなかった。


「春人さん、皆さんのことは好きですか?」

「え?それはもちろん大好きだ。」

「では春人さんはどうしてこんなところで寝ているんですか?」

「…それは俺が美織を死なせてしまったから。」


 俺は思わず下を向いてしまう。美織の顔を見ていると罪悪感に押しつぶされそうになる。


「…覚えていますか?あの日春人さんが私に言った言葉。盾は誰かを守るのに一番向いてるから美織にぴったりだって。」

「ああ、確かに言った。けどだからって自分の命を捨ててまで俺を守ってほしいなんて思ってない。」


 俺なんかの命よりも自分の命を何よりも大切にしてほしい。


「それは違いますよ。私は自分の命を捨てたなんて思っていません。春人さんに託したんです。」

「…!?でもそれは結局…。」

「…もう!私が春人さんを守ったのは悲しんでもらうためではないんですよ!」


 美織が口を膨らませる。


「みんなのために頑張って、困っている人は迷わずに助けて、そんな春人さんだからこそ私の命を託したんです。」

「美織…。」

「だから春人さんが今すべきなのは皆さんのところに少しでも早く戻ることです。」


 本当はわかっているんだ。みんなが頑張っているのに俺がこんなところで寝ている場合じゃないって。でも…。


「俺には目覚める方法がわからないんだ。」

「春人さん…。昨夜真白さんが会いに来ました。」

「…!?」

「ずっと春人さんの手を握ってくれていたんですよ。」

「そっか。真白が…。」


 あの時左手に感じたぬくもりは真白だったんだ。


「あ!もう一つ行きたい場所があるんです。」


 美織がそういうと、場面が再び切り替わる。


「ここは…俺の家。」

「はい。私はここで待っていますので、中に入ってください。」

「美織は来ないのか?」

「ええ。こういう時は私はいない方がいいと思うので。」


 とりあえず俺は美織に言われた通り中に入ることにした。


 そして恐る恐るリビングの扉を開ける。


「あ!兄ちゃん帰ってきたよ!」

「おかえりなさい。ご飯できてるわよ。」


 そこにはいつもの日常が広がっていた。

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