第五十六話 恋バナ
街に戻ってきた私たちは、大河さんの提案で食事をしに酒場へと来ていた。
「考えてみれば今日一日何も食べてなかったからな。めちゃくちゃ腹減ったわ。」
「いろいろあったからね。」
常に雪が降っていてわかりにくいが、もう夕方になっている。
「おーい!とりあえず適当に料理頼むー!それと酒もたくさん持ってきてくれ!」
「君たちはどうする?」
「そうですね。まだ私たちお酒飲めないので、水を3つお願いします。」
こういう場所でみんなと食事をすると、なんだか不思議な感覚になる。
「今回は本当にありがとうな。ここは俺らのおごりだ。遠慮なく好きなの頼んでくれ。」
「お、太っ腹だな!いいことした甲斐があったぜ!」
みんなとても上機嫌だ。
「いやー、それにしてもほんと無事帰ってこれてよかったよ。」
「ああ、改めて第一線で活躍する奴らのすごさが身に染みてわかったぜ。」
「それほどでもー!いや照れるなー!」
「私たちはこれからも魔王討伐を目標に頑張るつもりだけど、大河さんたちはどうするの?」
大河さんたちは最初の幹部戦以降、幹部とは戦ってないといっていた。
「そのことなんだが…。俺たちもまた幹部戦に参加しようと思うんだ。もちろんすぐに幹部戦に参加するってのは無理だけど、いつか必ず強くなってあんたらの役に立てるくらい強くなる。とりあえずこのことを目標にレベル上げを頑張るつもりだ。もちろんタケルの奴も一緒にな!」
「ああ。今回の件で自分たちの知らないところで人知れず努力している奴がいるってわかったからな。誰かに任せてばかりで自分たちは何もしないなんて卑怯な真似はもうしたくない。」
彼らも私たちに知らないところでたくさん頑張ってきたはずだ。そうして決めた答えなら私たちは背中を押してあげないと。
「じゃあこれからもよろしくね!」
「おう!こちらこそよろしく頼むぜ!」
私たちは手を握り合う。
「お待たせいたしました。」
「お、料理が来たみたいだぜ。」
「いっただっきまーす!」
みんな相当おなかがすいていたようで、料理がくるなりがっつき始める。
「すんまへーん。もういっはいおなひのくらはーい!」
「おいおい、お前ら飲みすぎだろ。」
「いいんらよ。今日はめでたい日なんらからー。」
みんなして酔っぱらっている。特にアレンと大河はもう何杯も飲んでおり、あまり呂律が回っていない。
私たちはお酒を飲まないので、少し出て夜風にあたっていた。
「ううう…やっぱ寒。ほんと、男どもはいつまで飲んでるんだって感じだよ。」
「ははは、今日くらいはいいんじゃないかな。アレンさんも今まであんまり飲めてなかったみたいだし。」
アレンさんの酔っぱらっている姿は初めてみる。
「でもちょっとあこがれるなー。」
「あれー、マイちゃんお酒に興味あるの?」
「だってあんな楽しそうに飲んでるんだもん。」
「確かにね。どんな味がするんだろうね。」
私たちはみんな未成年なのでお酒の経験がない。昔お父さんが飲んでいたのをスキを狙ってちょびっとだけ飲んだことがあったらしいけど、あまり記憶がない。あの時は結局お父さんにばれて叱られたっけな。
「あっちはあっちで盛り上がっているみたいだし、こっちもしますか!」
「するって何を?」
「そんなの決まってんじゃん!恋バナだよ!こ・い・ば・な!」
興奮気味に早乙女が言う。
「えー、私はいいよー。」
「恋バナってなに?」
「恋バナっていうのはねー、好きな人の話をするんだよ。」
「じゃあ私はみんな好きー!」
マイが耳をパタパタさえている。
「あたしもだよ。真白は?春人のことどう思ってんの?」
翼ちゃんはにやにやしながら聞いてくる。
「それは…。」
「真白お姉ちゃんは春人お兄ちゃんのこと好きじゃないの?」
「そうだぞー。はっきりと言った方がいいぞー。」
「う…。」
ぐいぐい聞いてくる翼ちゃんに加え、純粋なまなざしを向けてくるマイちゃんからは逃げられない。
「…好きです。」
今の私の顔はどれだけ赤くなっていることだろう。
「ふふ。それでそれで、いつから?」
「もう私の話はいいでしょ!そういう翼ちゃんはどうなの!」
「私はまだいないよー!」
「ずるい!」
ベロを出して逃げていく翼ちゃんを私は追いかける。
「あははー!なら戻ってあげなよ!」
「…でも。」
「春人も真白がそばにいた方が安心できるって!」
そういって翼ちゃんは振り返って私の肩をつかむ。
「でも今はそっとしておいてあげた方が…。」
「そんなの関係ないって!あたしなら落ち込んでいるとき好きな人が隣にいてくれたらうれしいけどなー!」
「好きって…彼は別に私のこと…。」
「いいからいいから!」
翼ちゃんは私のことなんかお構いなしに押してくる。
「私もいきたいな。」
「ごめんマイちゃん!今は真白だけ行かせてあげよ!」
「どうして?」
「それはねー。」
早乙女はマイに耳打ちをする。
「ええ!それなら仕方ないね!」
「ちょ…何を吹きこんだの!」
「さあねー!」
「…わかったわよ。行ってくるからアレンさんたちはよろしくね。」
「おっけー!」
こうして私は春人君のところへと戻ることになった。
「じゃ、あたしたちは寒いから中に戻ってよーな!」
「うん!」




