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第五十五話 決着

 大河は急いで仲間のもとへと走っていく。


「はぁはぁ、お前ら。まだ薬は余ってるか?」

「どうやら急いでるみたいだな。ほら持ってけ。」

「さんきゅー。助かる。」


 全員1つ余っていたようで、これで残りは8個。


「よっしゃ、これなら…!」






「待たせて悪い!持ってきたぞ!」

「よし!これで止められる!」


 大河は新たに詰めなおした薬入りのビンを3人に渡す。


「これでも飲んでろー!!」


 薬を受け取ると、華麗な動きで早乙女は口へと流し込む。


「俺たちも負けてらんねーな。」

「うん!」


 アレンとマイも早乙女に続く。


「うぐっ…あああ!!!」


 薬を飲んだ男たちは次々に膝をついて苦しみ始める。


「とりあえずなんとかなったな。まさか自らが操られる側に回ろうとは。」

「真白の方はどうなったのかな。」


「ふん!!!」

「うっ…!」


 私はマスターの猛攻に防戦一方だった。


「真白がおされてる!?」

「それになんだあの男の異常な姿は。」


 マスターの男は先程の姿からは想像できないほどに膨れ上がった筋肉に浮き上がる血管、剥き出しになった歯、赤く充血した目とまるで魔物かと思うほどに変貌していた。


(ここまでパワーが上がるなんて…!どうにかして一度間合いを…。)


「うがああああ!!!!」

「…!?」


 マスターの繰り出すパンチのあまりの衝撃に耐えきれず、私は吹き飛ばされてしまった。


「真白!」

「真白お姉ちゃん!!」


「いたたた…。」


 飛ばされた先には段ボールが積まれていたため、なんとか大ダメージは防げた。


(防御してあの威力…。もっと慎重にいかないと。)


「大丈夫か!」


 心配したみんなが私の元へ駆けつける。


「うん、なんとか。直撃は防いだから。」

「そっか…。よかった。こっちは片付いたからあたしたちも手伝うよ!」


 私は段ボールを跳ね除け、立ち上がる。


「…みんなは手を出さないで。私一人でやる。」

「何言ってんだ!みんなでやればすぐに終わるだろ!」

「…お願い。」


 あの男は死ぬまで暴走を続けると言っていた。つまり彼を止めるには殺すしかない。みんなにそんな重荷を背負わせるわけにはいかない。


「これは私が一人でやらなきゃいけないの。」

「…真白お姉ちゃんがそういうなら私は手を出さない。でも…助けて欲しい時は言ってね。すぐに行くから!」

「ありがとうね。マイちゃん。」


 でもごめんね。やっぱりみんなにに罪を背負わせたくないの。


「…よし。」


 私はもう一度マスターの方へと走っていく。


(受けるのがダメなら逸らすしかない!)


「があああああ!!!」


 右手から繰り出される一撃を右へ体勢を低くして避ける。


「うううあああ!!」


 マスターはそのまま左手を振り下ろし叩きつけるように殴りかかる。


(今だ!)


 私は体を上空へと一回転する様にひねり、攻撃をかわす。そしてマスターの左手を土台に大きく飛び上がり背後に回る。


「やああああああ!!!」


 私は心臓を狙って剣をまっすぐ伸ばす。


 すると、マスターも本能で体を半回転し、そのまま右手を伸ばす。


「ぐらああああ!!!」

「やあああああ!!!」


 次の瞬間、ポタポタと血が垂れ落ちていた。


「うっ…ぐふっ…!!」

「はぁはぁ。私の勝ちね…。」


 真白の剣が一瞬先に届き、心臓を貫いていた。


 マスターの拳は私の顔の目の前で止まっている。


「これが私の覚悟よ…。」


 そういって私は剣を引き抜く。


「……く…そ…。」


 マスターの男はそのまま地面に倒れた。


「真白ー!」

「真白お姉ちゃん!」


 早乙女とマイは真白に思い切り抱きつく。


「もうヒヤヒヤしたよ。」

「心配させないでよー!」

「…うん。」

「どうしたの?」


 何かを察したマイが聞く。


「本当にこれでよかったのかなって。他に助ける方法があったかもしれない。」

「…難しいことはわかんないけど真白お姉ちゃんはすごいと思うよ。真白お姉ちゃんがいなかったらもっと犠牲が出てたかもしれないもん。」

「マイちゃん…。」

「そうだよ!真白はいろんな人を救ったんだよ!もっと胸を張らなきゃ!」


 二人は私の気持ちを考えて慰めてくれる。少しでも罪の意識が和らぐように。


「あんまり気にし過ぎんなよ。あんたがやってなかったら俺がやってた。あんたは間違っちゃいねーよ。」

「…ありがとうございます。」


 私はしばらく翼ちゃんとマイちゃんを抱いていた。






「おっ!帰ったか!」

「ああ。無事解決したぜ。」


 男たちを縄でしっかりと縛ったあと、私たちは上へと戻った。


「よかった。こっちも何人かは目を覚まし始めたぜ。」


 特に体に異変は見られず一安心だ。


「とりあえず黒谷に連絡しとくか。」

「そうね。宿屋の部屋も確保しておきたいし。」


 1時間後、黒谷たちが到着した。


「寒い中来てくれてありがとうございます。」

「全くだよ。…君たちは本当によく厄介ごとに巻き込まれるな。」


 黒谷は笑っている。


「ともかく、君たちはかなりボロボロのようだし、ここは私たちに任せなさい。宿屋は確保してあるからそこで休むといい。」

「え…?」


 黒谷さんが親切すぎて逆にこわい。


「心配しなくても裏なんかないよ。そこまで警戒されると流石の私もショックだぞ。」

「…ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます。」


 後のことを黒谷さん達に任せ、私たちは街へと向かった。

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