第四十八話 脱出
早乙女たちは扉までつながる客席と客席の間の通路を最短ルートで突き進む。
「どうやら操られた奴らは追ってこれねーみたいだな。」
「扉を囲んで出口を塞げ!!」
店員のうちの一人の男が指示を出す。それに従うように残りの3人の店員たちが出口をふさぐ。
「そんなんじゃ止まんないよ!」
早乙女たちの勢いは止まることもなく、店員たちの妨害をものともせず突破していく。
「くそっ!!あいつらを逃がしてしまえばあのことが世間にばれてしまう…!」
店員たちは必死で早乙女たちを追うも追いつくことができない。
「よっしゃ!出口が見えた!」
「でもどうする!あの道は細すぎてこいつらを背負ったままじゃと通れない!」
「…あたしがこの場を食い止めるからその間にみんなを運んで!」
それまで先頭を走ってきた早乙女はそういうと振り返ってしんがりを務める。
「何から何まですまねぇ。頼む!」
早乙女は前を向いたまま後ろに見えるように親指を立てる。
「ここから先は行かせない!」
「くっ…この女!!」
「…お前ら!幸運…早乙女が食い止めてくれている間に何としてもこいつらを無事に外へ連れ出すぞ!」
「おう!!」
大河たちは持っていた布で意識のない真白たちを優しく包み込む。
「よし。なるべく傷をつけないように運ぶぞ!」
数メートル続く通路を慎重に引きずっていく。
「…ごめんな。俺たちが仲間を探してくれって頼んだばかりに…。」
そうつぶやく大河の声はかすかにふるえていた。
数分後、大河たちは真白、アレン、マイの全員を外に運び出すことに成功した。
「こっちは全員出れたぞ!」
「りょーかい。あたしもすぐにそっちに行く。」
早乙女は大河たちに聞こえるよう大きな声で返事をする。
「…ってことなんでさよならー。」
「お、おい!待て!」
「逃がしてもらって構いませんよ。」
奥の方からマスターが言う。
「しかし…!」
「大丈夫です。奴らは必ず私たちのもとに戻ってくる。ならばこちらも十分準備をして向かい打ちましょう。」
「ということはあれを…?」
「ええ。次に会うときはあなたたちの最期になるでしょう。」
「ふぅ…。何とかここまで戻ってこれたね。」
今私たちは街の宿屋にいる。閉じ込められた後、気を失ってしまった私たちを背負いながら迫ってくる店員たちを振り切ってここまで運んでくれたらしい。
「…すまなかった。こんなことになっちまったのは俺らの責任だ。」
大河が頭を下げて言う。
「そんなことないよ…。私たちが未熟だったから…。」
「いや、俺らはあんたらに助けてもらうばかりで何もできなった。もうこれ以上あんたらを危険な目に
あわせらんねぇ。」
大河たちは沈んだ空気に包まれている。
「…いえ、私たちは諦めません。」
「え?」
「だってまだタケルさんを見つけてないもの。」
「それにあたしはあいつらに喧嘩売ってるしな!」
結果だけ見ると私たちも何もしてあげられていない。むしろ助けてもらった。
「最後まで付き合うぜ。このままじゃ引き下がれねーしな。」
「うん。操られた人たちを助けて、タケルさんを見つけるまで私たちも戦うわ。」
「あんたら…。本当にみんないいやつだな。じゃあ改めてお願いさせてもらうよ。」
改めて私たちの目標は定まった。
「でもどうするつもりなんだ?彼らを助けだす作戦はあるのか?」
問題はそこだ。彼らの体を支配する何かを止める方法を見つけ出さなければ、あの場所に戻っても意味がない。
それに黙ってただ私たちがくるのを待っているだけとも考えにくい。きっと私たちを倒すための準備をしてくるはずだ。
「せめてあの装置に書いてあった文字がわかれば…。」
「それなら情報屋に聞いてみるのはどうかな?あの人なら何か知ってるんじゃない?」
「なるほど。確かにあの子なら何か知ってるかも。」
「それじゃ早速行こう。」
以前一緒に戦った際聞いていたコード、元の世界でいうメールアドレスを使って情報屋にメッセージを送る。
するとものの数秒で返事が返ってきた。
「もう返ってきた!えーっと…、『今日は忙しいから明日の朝、ウルゴアの街でもいいかな。』だって。」
「そうか…忙しいなら仕方ないな。手掛かりを得ることができるなら明日でもいいんじゃないか。」
「そうだね。それにみんな疲れてるだろうし。」
「じゃあ返事しちゃうわね。『うん。こちらは大丈夫。』」
これで会う約束はできた。あとは彼が何か知っていればいいのだけれど。
「とりあえず今日は寝ようぜ。まだ体が少しだるいぜ。」
「それもそうだな。この部屋はこのままあんたらで使ってもらって構わない。」
「お前らはどうすんだ?」
「俺たちは別の部屋を借りるさ。」
そういうと大河たちは部屋を去っていく。
「…今度こそ必ず助けて見せる。」
その思いを胸に私たちは眠りについた。




