第四十話 吹雪の中で
「山へ向かう前に一度道具屋に寄っていかない?結局何の準備もしないままここに来ちゃったからポーションとかももうないし。」
本当なら出かけた時に最初に行くべきだったのに、こんなに大事なことを忘れるだなんて…。
「それもそうだな。えっと、道具屋は…。あれか?」
雪が降っていて視界が悪いため、近くに行って確かめる。
「どうやらここであってたみたいだねー。」
木造のかなり古い建物に道具屋と看板が置いてある。
「じゃあさっさと寄っていきますか。」
中に入るが、人気を感じなかった。
「誰もいないのかな?」
「でも店はやってるみたいだよ。」
確かに営業中と書いてある。
「まあそのうち誰か来るだろ。それよりもポーションはあったのか?」
「えーっとねー。わ、なんだろこれ?」
ほかの大陸では売ってない、雪の降るこの大陸ならではのアイテムが売られている。
「へー、耐寒薬なんて売ってるんだね。」
「それはこの大陸では必需品さ。」
「ひゃ…!?」
部屋の隅から突然声が聞こえてきた。
「いつからそこに…?」
「最初からじゃ。」
全然気が付かなかった。誰もいないと思っていたから情けない声が出てしまった。
「それでばあさん。必需品ってことはこれは買っておいた方がいいのか?」
「ああ。この先はここよりもずっと寒いからね。まあ、この街から出ないのであれば必要はないがね。」
ここより寒くなるのであれば、買っておいて損はないだろう。
「じゃあその耐寒薬を人数分とポーションを10個ほどください。」
「あいよ。」
おばあちゃんから耐寒薬とポーションを受け取る。
「…でもまさかこんな日が来るとは思ってもいなかったよ。」
おばあちゃんはそうつぶやく。
「あたしゃ長いこと生きてきたけれど、この街以外の人にあったのはなかったよ。」
「…きっと私たちが当たり前にしてみせます。いつでも世界中の人とつながれる未来を取り戻します!」
「…そうかい。期待して待ってるよ。」
おばあちゃんは笑顔でそう答えた。
「あ。その言葉で思い出したんだけどあたしたちってどうやって春人のいる大陸に戻れるんだ?」
「そりゃあ着た場所に戻って魔法陣に乗れば…。ってそんなもんあったか?」
思い出してみると私たちが転移した場所には雪が降り積もっていて、魔法陣の跡なんてなかった。
「何を言っとるんだお前さんたちは。それならこの街の東に行けば戻れるじゃろう。お前さんらはそこからきたんじゃないのか?」
「どういうことですか?東に行けば戻れるって…。」
「今まではもやがかかって進めなかったんじゃが、昨日いきなりそれがなくなって道が現れたんだと。そしてその道を進んだ先には緑色の大地が広がっていたそうじゃ。わしはまだ行っていないが、手斬りそこから来たんだと思っていたよ。」
「いえ…知りません出した。」
となるとその道が続いているのは始まりの街からすぐの平原だろう。なるほど、最初の大陸とつながっていたんだ。
「ありがとうございました。」
「気にしなさんな。応援しとるぞ。」
「はい!」
買うものも買ったので、私たちは道具屋を後にする。
「よし、行くか。キラーベアーを倒しに山へ。」
「おー!」
耐寒薬を飲んでしっかりと対策してから私たちは山へ向かう。
「うわー、さっきとは比べ物にならないくらい吹雪いてるね。」
足元も雪で歩きにくくなっている。
「気を付けていかないと。」
「さすがに人も少ないみたいだね。」
見たところ周りに人はいない。確かにこの場所はレベル上げには向いていない。
「キラーベアーは山を登る途中にいるって言ってたよな。いつ出てきてもおかしくないくらいには来たか?」
感覚的にはかなり歩いている気がするけれど、視界が悪いのでほとんど下が見えない。
「それにしても全然寒くないね。」
「うん。防寒着と耐寒薬のおかげだね。」
寒さ対策しないで登っていたらどうなっていたことか。
「んんん?誰かこっちに向かってきてるような。」
早乙女が遠くを見つめながら言った。
「…ほんとだ。誰か来るね。」
「……けて…れ……ー!」
「なんか言ってない?」
だんだんと影が近づいてくる。
「助けてくれー!!」
そう叫びながら全速力で山を下っている。男の後ろには大きなクマの姿があった。
どうやらクマに追いかけられているみたいだ。
「あれって!!」
「助けないと!」
「おいあんた!早く俺たちの後ろに!」
「はいぃー!」
男はすぐさま私たちの背後に回る。
「大丈夫なのか…?」
「任せとけ。こいつは俺たちが倒す。」
「思ってたよりも大き―なー。まあ負けないけどね!」
「みんな行くよ!」




