第三十九話 雪景色
「それじゃあ私たち行ってくるね。」
「…ああ。」
一日たった今も春人は元気を取り戻していない。
「信じて待ってるから…。」
「ごめんな…。」
(今も春人君は自分と戦ってる。誰でもない春人君自身が自分を許せないんだろう。)
私はそっと寝室の扉を閉じる。
「行きましょうか。」
「そうだね。でも本当にいいの…?一番仲良かったのは真白でしょ…?真白だって本当はつらいはずなのに…。」
「…春人君が一番つらいのはわかってるから。それなのに私が落ち込んでいるわけにはいかないの。」
「…強いんだね。」
「そんなことないよ…。」
本音を言ってしまえば私はきっと進めなくなってしまう。だから胸の内にしまっておくの。
「そういえば新しい大陸ってどこにあるんだ?あの時確認せずに帰っちまったからな。」
「それならもう一度行けばいいんじゃない?」
「そうね。あの島に何かあるのかもしれないね。」
「あれ?この魔法陣ってあったっけ?」
来た方向とは樹を挟んで向かい側にもう一つ黄色に光る魔法陣があった。
「これが次の大陸につながっているのかもね。」
「へえー、そんなこと初めてだな。5つに分けられる前はどうなってたんだろうか。」
「行ってみればわかるっしょ。」
この魔法陣が次につながっているのは間違いない。
「せーの!」
魔法陣に入ると、いつものように一瞬で別の場所に移動する。
「…はっくしょん!!ううぅ…寒っ。」
移動した先は、あたり一面雪の降り積もる場所だった。
「今度は雪原ってことね。…それにしても寒いね。」
「これは早いうちに街にいって防寒対策したほうがいいな。」
このままの恰好では体温が奪われてしまい危ないので、私たちは第一に街へ向かうことにした。
しばらく歩いていると、街のような影が見えてきた。
「やっと見えてきた。みんな大丈夫?」
後ろを振り返ると、マイがぶるぶると震えていた。
「マイちゃん、これを羽織って。」
私はそっとマントをかける。
「でも真白おねーちゃんはどうするの?」
「私はもうすぐだから大丈夫だよ。遠慮しないでね。」
「…ありがとう。あったかい。」
道中魔物に襲われながらも街にたどり着いた私たちは真っ先に防具屋へと向かった。
「あのー、すいません。」
「はーい。…って随分と軽装ですね。さぞ寒かったでしょう。これをどうぞ。」
そういうと店の女性は暖かいお茶を人数分用意してくれた。
「ありがとうございます。助かります。」
「いえいえ。それで、うちには防寒着を買いに?」
「はい。」
「ならちょっと待っててくださいね。」
店の女性は奥にある部屋へと入っていった。
「いやー、一時はどうなることかと思ったよ。まさか転移先がこんな寒い場所だなんて。」
この世界には季節という概念がないのかもしれない。暖かい場所はずっと暖かく、寒い場所はずっと寒い。
しばらくして今度は男の人が奥の部屋から出てきた。
「あんたらも異世界人かい?」
「この子以外はみんなそうです。」
「そっか。ほかの場所に比べるとここは寒いだろう?」
「そうですね。この大陸はどこもこんな感じなんですか?」
「そうだねぇ。昔は違ったらしいけどねー。」
窓から外を見つめながら言う。
「どういうことですか?」
「大陸が分かたれる前まではこの場所は雲一つない天候に恵まれた場所だったんだよ。でも分かたれてからはどんどん天候が悪化していって今にいたるってわけだよ。」
環境が変わったことで天候が変化していったんだ。かわいそうに。
「お待たせしましたー。」
防寒着を抱えながら先ほどの女性がでできた。
「はいどうぞ。あまり防御力はありませんが、防寒性は保証しますよ。」
手渡された防寒着を着てみると、見た目と違って軽い素材でできており動きやすく、何より暖かい。
「すげーいいな、これ。どんな素材で作ってんだ?」
アレンさんが興味津々に聞いている。鍛冶屋の血が騒ぐのだろう。
「こいつの素材はキラーベアーっていう魔物からとれるんだけどね。強くてなかなか手に入らないんだよ。うちでは今君たちが来ているのでラストだよ。」
「そうなんですか。あの…私たちが素材を持ってくるのでもう一着作ってもらうのは可能ですか?」
「もう一着かい?」
「はい。もう一人仲間がいるんですけど、その人が来た時のために。」
「素材さえ持ってきてくれるのであれば構わないが…かなり強いよ?」
男の人はジェスチャーでどれくらい大きいかを伝えている。
「大丈夫だよ。あたしたちも結構強いからさ!」
「それでそのキラーベアーっていうのはどこにいるんですか?」
「ここから北に行ったところにある山を登る途中にいるはずだよ。」
「分かりました。ではそこに行ってきますね。」
今着ている防寒着の分の料金を払い、私たちは店を出ようとする。
「気を付けてくださいね。」
「ありがとうございます。」




