第三十七話 残酷な世界
「ふざけるなよクソどもが!!」
必死の抵抗で幹部は標的無視の全方位に攻撃を放つ。
「くっ!あと少しなのに…!」
がむしゃらだが、次々と放たれる攻撃のせいで思うように近づけない。
(せめて一撃でも食らわせられれば…。)
「やるしかないか…。」
俺は握っていた剣を逆さに持ち替える。
「届けええええ!!!」
渾身の力で幹部へと剣を投げる。
「こいつ!!ぐわあぁぁぁぁ!!」
枝の間をうまくすり抜けていき、剣は樹に突き刺さる。
「ちっくしょーー!!!」
その瞬間、樹のなかから魔物がでできた。
「なんだあいつ…!?」
見た目はとてもあの大きな樹を操っていたとは思えないほど普通のスライムだった。
「…それがお前の本来の姿だな。」
「くっ…!!なぜ気が付いた!!」
「最初はわからなったさ。黒谷の話を聞いた時、俺は完全にお前が外からあの樹を操っているものだとばかり思っていた。でも俺たちが攻撃する瞬間お前の攻撃が止まったって話を真白に聞いた時、ある可能性を思いついたんだ。」
「可能性…だと?」
「ああ。お前の能力は寄生することなんじゃないかって。」
寄生という表現が正しいのかはわからないが、中から操っているのではないかと俺は考えたのだ。
「でもそれじゃなんであいつは俺たちを的確に狙うことができたんだ?」
「それはあいつらが原因だよ。」
俺はみんなに邪魔をしてもらっていた奴らを指さした。
「そっか。この人たちが視覚の情報を何らかの方法で送っていたのね。だから私たちが邪魔をすることで視覚の情報が幹部には伝わらなかった。」
「多分な。視覚を共有することであんな攻撃ができたんだと思う。」
「それってつまり今まで一つだと思っていた能力は実は二つあってったことか?」
俺は頷く。
「さすがだな。毎度君には驚かされるばかりだな。」
「…本当はお前も気が付いていたんじゃないか?」
「まさか。それはないさ。」
「…。」
どうしても俺はこいつに試されているのではと疑ってしまう。
「なーなー。どうしてこいつは今回あたしらの前に姿を現したんだ?さっきは姿を見せなかったじゃん?」
「寄生といっても万能な能力というわけでもないんだろう。何でも操れるなら俺たちはすでに操られているだろうからな。」
でも確かになぜだ?さっきと今とでは何が違う?あいつの仲間の視覚を奪ったことに関係があるのか?でも視認できれば寄生できるわけでもないのなら、そのことが直接関係があるとは思えない。
(くっくっく。どうやら俺の能力の本質そのものに気が付いたわけではないようだ。それならばせめて奴だけは殺す!)
「化け狸!!あれを出せ!!」
「あいさー!」
スライムが叫ぶと同時に真白がついていた男が狸へと姿を変える。
「え!?狸!?」
「人に化けていたのか!?」
一瞬のスキを突かれ、化け狸は真白から逃れていく。
「教えてやる!!俺様が寄生できるのは植物なんだよ!!」
そういうとスライムは化け狸の持っていた木製の槍に寄生する。
「貴様は終わりだ!!!」
槍は一直線に俺のもとへと伸びていく。
「しまった!剣が…!!」
先ほどの攻撃で剣を投げてしなっていた。
「うっ!!!」
「!?!?」
次の瞬間倒れたのは俺ではなく美織だった。
「…ゴフッ!」
「美織!!!」
美織はとっさに俺をかばったのだ。
「どうして…!!」
「…わかり…ません。気がつい…たら体が動いて…。」
「待ってろ…!今ポーションを!」
俺は今持っているすべてのポーションを美織に飲ませる。
しかし、貫かれた胸からは大量の血が流れ続ける。
「どうして…。なんで血が止まんないんだ!!頼むからとまってくれ!!!」
「…もう…いいで…すよ。」
「しゃべるな!絶対に何とかする!!」
必死に回復を試みるが、一向に治る気配はない。
「…は…はは。思った結果と違ったがどうやらうまくいっ…。」
最後まで言い切る前に真白は木製の槍を真っ二つに斬る。
何も言わなかったが、その一太刀から怒りの感情があふれ出ている。
そして幹部であるスライムが倒されたことでフィールドが消えていく。
「てめーこの野郎!!!」
アレンも激怒した表情で化け狸の頭をつかんで地面にたたきつける。
「ほかの仲間の奴らも一人残らず捕らえろ!」
黒谷はすかさず指示を出す。




