第三十四話 知らさせる現実
一度街に戻ってきた俺たちは、黒谷たちに集まってもらい先ほどあったことを話した。
「…ふむ。では、岩場に行けばボスのいる場所につながってる魔法陣があるということだな。」
「ああ。」
「にわかに信じられないけど、きっと春人君が言うなら本当なんだろうな。」
これまでは幹部は大陸のどこかにいたため、さすがに黒谷たちも今回のような転移した先に幹部がいるということに少し驚いているようだった。
「とにかくあんたには明日の午後にみんなを岩場に集めてほしい。そこで改めて作戦会議をしよう。」
「…いいだろう。人数集めは私たちで何とかしよう。」
「助かるよ。」
黒谷であれば明日までにはある程度人を集められるだろう。
「そうだ。君たちに伝えておきたいことがある。」
「なんだ?」
「あの件についてなのだが。」
あの件とはブラッディファナティックスのことだ。
「君はすでに感づいているかもしれないが、奴らはまだ完全に消滅しきっていない。」
「…は?」
「奴らを陰で利用していた者たちがいるということだ。君も心当たりがあるんじゃないか?」
「…指輪か。」
確かにあの指輪については気になる点はあった。
「やはり気になっていたか。奴らのボスを問い詰めたところ、ブラッディファナティックスはどうやら2つにグループに分かれていることが分かった。」
「2つ?」
「ああ。1つは君たちが倒した魔王の復活を掲げる者たちの集まり。もう1つは魔王直属の配下を目指す者たちの集まりだ。」
「配下になる!?」
正直意味が分からなった。魔王直属の配下になるなんて何をどうしたらそんな考えにたどり着くのか俺には理解できない。
「その指輪はどうやら後者のグループから譲り受けたものだったらしい。」
「その配下になろうとしている人たちは何者なんですか?」
「それについては全く口を割らなかった。」
「そうですか。」
もしこの話が本当ならどうして指輪を手放したんだ?そもそもなぜそんなものを持っていたんだ?
だめだ。全然わからない。
「正直我々はこれ以上手の出しようがなくてな。配下になる条件がわからない以上、奴らの目的もわからない。」
「ようやく片付いたと思ったのに…。くそっ!」
「話は以上だ。すまなかったな。こんな時にこんな話をして。」
「大丈夫だ。俺たちは明日に備えてレベル上げをしに行くよ。」
そういうと俺たちはこの場を去った。
「よかったのか。奴らが自ら命を絶ったこと言わなくて。」
「そんなこと言ったら彼らはきっといらぬことまで考えてしまうからな。」
「それもそうだな…。」
翌日、俺たちは岩場に集まった。前回のメンバーに加え、今回は何人か見ない顔もいる。
「なんだこれ!」
「まじかよ!めちゃくちゃ異世界っぽいじゃんか!」
魔法陣をみて何人かが騒いでいる。
「これが春人君の言っていた魔法陣か。」
「ああ。この魔法陣の先に幹部がいる。」
俺は近くに落ちていた石を魔法陣に向かって投げつけた。
すると地面についた瞬間、石は消えた。
「あんな感じで一瞬で転移する。」
「いやー、改めてみてもやっぱすごいなー!」
「そういやあの子は誰だ?」
優樹が早乙女のほうを見る。
「ああ、あの子は早乙女翼。新しくパーティーにはいった俺たちの仲間だ。」
「へー…。」
優樹は早乙女をじっと見つめている。
「どうかしたのか?」
「え?いや、何でもないよ!」
「そうか。」
なぜか優樹は少し驚いたような反応をする。
「さて、人数もそろったことだし話を進めようか。」
黒谷が手をたたく。
「今回は今までと状況が異なる。どういった理由でこの大陸ではなく、離れた場所に幹部がいるのかはわからないが、一筋縄ではいかないだろう。前回のように誰も死なせないなんて生ぬるいことは考えるな。自分が生き残ることだけを考えろ。」
黒谷が俺のほうを向く。
「もちろん、命が惜しくないの出れば構わないがな。」
「…っ!?」
「またリーダーはそんなこと!」
優樹が俺をかばうように言う。
「…わかってるさ。」
俺はこぶしをぎゅっと握る。
「春人君…。」
「作戦は特に変更はしない。敵の動きに合わせて対応していけ。では行くぞ!」
黒谷を先頭に俺たちは魔法陣に入っていく。
すると魔法陣は最初の時と同じように黄色く光り始め、俺たちを小さな島へと転移させた。
「ここが幹部のいる島か。」
「ねえ、あれ!」
一人の女がどこか指をさして叫ぶ。
その先には大きな手を生やした巨大な木の魔物がドームに囲まれていた。
「あれが今回の敵…。」
これまでとはあまりに大きさが違う。
「怖気づいている暇はない。行くぞ!!」




