第三十話 対人訓練
「やっぱりここは他の場所と違っていいな。」
武器の素材を集めるために、俺たちは再びこの大陸に戻ってきていた。
元々素材集めを目的としてこの大陸に来てはずなのに、いろいろとあったために結局何も集めることができていなかった。
「それじゃあ、ウルゴアの街に行きましょうか。あの街の向こう側へ行かないと魔物がいないから。」
「そうだな。」
ウルゴアの街へと向かう途中、なにやら人だかりができている場所があった。
「うおお!スゲーな嬢ちゃん!これで9連勝だ!」
「次俺と戦ってくれ!」
かなり盛り上がっているようで、その場にいた者たちはみな声を上げて叫んでいる。
「なんだろう、あれ。」
「ちょっと行ってみるか。」
人だかりができている場所へと向かうと、そのなかで戦いが繰り広げられていた。
一人はなかなかに大柄な男、その相手をしていたのはいたって普通の女の子だった。
「あんたらここで何をやってんだ?」
アレンは隣にいた男に聞いた。
「対人訓練だよ。何やらとても強い奴が現れたっていうんでみんな挑戦しに来ているってわけさ。」
「へえ、珍しいな。」
対人訓練は文字通り魔物相手ではなく人を相手に戦う訓練で、メニュー画面を開くことでできるシステムだ。どちらかの体力を7割減らすか、降参したら終わる。
この訓練中は相手を殺すことはできないので、安全に戦闘訓練が行える。しかし、経験値はほとんど手に入らないのであまりこのシステムを使っている人はいない。
「ではあの女の子が今は挑戦者ってことでしょうか。」
「いやいや、逆だよ。」
「え!?」
「この戦いに勝てば10連勝さ。」
どこからみても普通の女の子だ。どこにそんな力があるのだろうか。
「ちょっと俺たちも見ていこうか。面白そうだし。」
「今度はあんたが相手ね。悪いけど容赦はしないよ。」
「望むところだ!」
開始の合図とともに男は突っ込んでいく。
しかし、女の子はそれをいとも簡単にかわしていく。
「くそ!当たらねえ!」
「すごいなあの子。」
「うん。動きに無駄が全然ない。」
その後も男の攻撃は一度も当たることなく、それどころかうまくスキを突かれ一本背負いで倒された。
「よっしゃ!あたしの勝ちー!」
女の子は両手でガッツポーズをしている。
「もっと強い奴はいないのかー!」
「すごかったな。もしかしたらお前も勝てないんじゃないか?」
「どうだろうな。武器なしだったら無理かもな。」
「でもあんな子幹部戦にいたっけ?」
この子くらい強ければ記憶に残っているはずだが。
「あーーー!!」
いきなり女の子が大声を上げる。
「あんた黒野春人だよね!!」
俺を指さしながらそういった。
「…え?俺?」
いきなりのことなのでつい驚いてしまった。
「あたし知ってるよ!あんたすごく強いんでしょ!あたしと戦ってよ!」
きらきらした目でこちらを見つめてくる。
「…まじか。」
結局ながらに逆らえず俺はこの子と戦うことになった。
「えーっと、君の名前は?」
「あたしは早乙女翼!元気いっぱいの18歳!」
「ってことは同い年か…。」
さっきまでは気が付かなかったけど、こうして正面に立ってみると迫力がある。
「そういえばルールはどうなんだ?」
「えっとー、しゃあ武器の使用はありでスキルはなし!」
「オッケー。」
武器はありか。それなら何とかなるかもしれない。
「じゃあ、始めるよー!」
「ちょっと待って!君は武器はいいの?」
「え?あたしならもうしてるよ。ほら。」
早乙女は両手を前に出す。
その手にはグローブが装備されている。
「グローブか、初めて見たな。」
「あたしもあたし以外に使ってる人見たことない。」
グローブは攻撃力もリーチもほかの武器に比べないので人気がないのだ。
ただ、機動力は抜群なので慣れてしまえば強力な武器になる。
「今度こそ行くよー!」
俺は唾を飲み込んだ。
「はああ!!!」
「うお!」
すごい速さで向かってきた早乙女の攻撃を何とか受け止める。
「やるね!でもこれなら!」
早乙女はそのまま体を回転させ、回し蹴りをくらわそうとしてくる。
「やっべ!」
足を引いて何とかかわす。
「思った以上に強いな。」
「でしょー!」
これは油断したら速攻で負けてしまう。
俺も気合を入れなおす。
「今度はこっちから行くぞ!」
先ほどの戦いを見る限り、相当な速さで攻撃しなければ当てられないだろう。
俺はできる限り剣を振る幅を狭めて、次の攻撃までの間をなくす。
「うわ!ちょっ!」
早乙女が俺の攻撃で体勢を崩した瞬間を狙って、素早く後ろに回り込む。
「はあ!!」
俺の攻撃は早乙女の首をとらえていた。
「ふぅ。俺の勝ちだな。」
「いっやー、やっぱ強いなー!」
「君も強かったよ。あと少し遅かったら、結果は変わってた。」
実際彼女は体勢を崩しながらも俺を攻撃しようとしていたのだ。
「じゃあ、あたしの負けってことであんたの仲間に入れて!」
「…え?」
「だめ?」
「えっと…。」
俺はみんなのほうへ顔を向ける。
「いいんじゃないか?」
「私も賛成かな。」
どうやらみんな賛成のようだった。
「…じゃあ俺の方からもお願いするよ。」
「ほんと!よっしゃー!よろしくね!」




