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第二十九話 大きな背中

 裏口を通り、俺たちは美織を追う。


「うわ、こっちも迷路だな。」

「情報屋、出口までのルートはわかるか?」

「それが、ここから先は基本ボスしか通らないから僕もわからないんだ。」

「そうか。なら手分けして探すしかないな。」


 といっても道は想像以上に入り組んでいるので、6人で手分けしてもそう簡単には見つからないだろう。


「美織と合流できた人はみんなに連絡を。それじゃあ、また後で会おう。」






「それにしても広すぎるだろ。なんでこんなに道を作ったんだよ。」


 入り口がそもそも見つかりにくい場所にあるのに、ここまで複雑にする必要はあったのだろうか。


「美織…。無事でいてくれよ。」


 美織は戦いに慣れていない。それでも一人で向かったってことは彼女も変わろうとしているのだろう。


 探し始めてから10分がたった。いまだ誰からも連絡はない。もちろん美織からの連絡もない。


「こっちじゃないのか…。くそ、どこにいるんだ。」


 走り続け疲れたので、壁に手をあて一息つく。


 すると、右のほうから音が聞こえてきた。俺はその音に耳を澄ませる。


「…のおんな、…たいにぶっこ…やる。」


 誰かの声だ。


 俺はした方へと走っていく。


「美織!!」


 そこには倒れている美織と、口から血をだしふらついているボスの姿があった。


「お前は!!」

「なぜ貴様が!?くそ、あいつは負けたのか。」

「美織に何をした!!」

「あ?こいつが俺に向かってくるから倒しただけだ。俺は何も悪くねぇ。」

「貴様ぁ!」


 俺は急いで美織のもとへと駆け寄る。


「おいおい、何してんだよ。どいてくれよ。俺はそいつを殺したいんだ。」

「させるわけないだろ。」


 俺は思い切りにらみつける。


「おー、怖い怖いこれだから野蛮なサルは嫌いなんだよぉ!!」


 手に持っていたナイフでいきなり襲い掛かってくる。


 俺はその手をつかむ。


「!?放せよ!くそが!!」

「歯食いしばれ。」


 俺はこぶしを握り締め、ボスの顔面を思い切り殴り飛ばした。


「…俺もお前みたいなくそ野郎は大嫌いだよ。」






「…うぅ……。」

「大丈夫か?」


 美織は目を覚ます。


「あれ…春人さん。どうして…。」

「美織を探してここまで来たんだよ。」

「そうなんですね。」


 意識がはっきりしてきたので、俺はポーションを取り出す。


「これ飲んで。」

「ありがとうございます。」


 美織は一気に飲み干した。


「そういえばあの男の人は?」

「ああ、あいつならあそこで伸びてるよ。」

「…はぁ、よかった。」

「本当によかったよ。まったく無茶するんだから。」


 無茶…か。そっか。私またみんなに迷惑をかけちゃったんですね。本当に私は…。


「よく頑張ったね。」

「え…?」

「美織が戦ってくれたおかげでこいつを止められた。ありがとう。」


 その言葉に美織は驚くしかなかった。


 誰かに感謝されるなんてなかった美織にとって、その言葉は重みが違った。


「そっか、私誰かに認められたかったんだ。」

「さて、みんなのところに戻ろう。ほら。」


 そういって俺はかがんだ。


「えっと…。何をして…?」

「おんぶだけど。」

「私もう大丈夫ですよ。」

「まだ傷治りきってないだろ?無理はしない方がいいよ。」

「…すいません。」


 私を抱える春人さんの背中はとても暖かくて、大きくて、優しかった。


「重く…ないですか?」

「全然!」


 自分もボロボロなのに、笑ってそう答える彼の顔をみて、私はドキッとした。


(今わたしどんな顔してるのかな。)






「お、帰ってきたぞ。」

「お帰りー。って、は、春人君、何をして?」

「おんぶだー。私もしてほしいー!」


 マイは戻ってくるなり、俺に飛びついてくる。


「まるで王子様みたいだな。君はいいのか?」

「え!?私は別にいいですよ!」


 なにやら向こうで真白が騒いでいる。


「まあ、何はともあれ、みんなここまでは戻ってこれたみたいだな。」

「ほんとだよ。ここに戻ってくるのに何回迷ったことか。」

「あははは。」


 扉のある場所の方角はわかっていたのでその方向へと向かうだけだったが、行き止まりが多くて大変だった。おそらくはみんなもそんな感じだろう。


「結構いい時間だから早く戻らないと。水温も下がっているだろうから、気を付けてね。」


 こうして来た時と同じようにして湖を上がった後、冷えた体を温めるために一旦宿へと向かった。






「それじゃあ、そろそろ僕は行くよ。」


 情報屋が言う。


「もう行っちゃうのか?」

「僕の仕事は情報を集めることだからね。」

「そっか。その前に一つ頼みたいことがあるんだが。」


 俺は美織のスキルの件について話した。


「なるほど。じゃあ僕はみんなにパラメータアッパーというスキルはもうなくなってしまったということを伝えればいいんだね。」

「はい。証拠もあります。」


 美織は自分のスキル欄を見せる。


「どうやら本当にないみたいだね。」

「お願いできますか?」

「任せてよ。僕の情報は信頼度が高いんだ。きっともう大丈夫だと思うよ。」


 いろいろあったけど、これでもう美織が襲われることもないだろう。


「それじゃあ、バイバーイ。」


 そういって情報屋は去っていった、


「んじゃ、俺も行くかね。」

「優樹も行っちゃうのか?」

「俺は黒谷パーティーの一員だからね。早く戻らないと。」

「…なあ、俺たちのパーティーに入らないか?」


 ここ数日行動を共にして考えたことだ。


 優樹は実力はもちろん、仲間思いのいいやつだ。仲間になってくれたらどれほど心強いだろうか。


「うれしい提案だけど、それはできない。リーダーは俺の命の恩人でな。俺が魔物に襲われて死にそうなとき、あの人が助けてくれたんだ。その恩を返すまでは仲間にはなれない。」

「そっか。ありがとな。優樹がいなかったらやばかったよ。」

「お互い様さ。じゃあ、またな。」


 優樹も去っていく。


「なんか随分と久しぶりな感じだね。この5人でいるのって。」

「そうだな。長い間一緒にいた感じがするよ。」


 こうして人々を襲ったブラッディファナティックスによる事件は幕を閉じた。

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