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第二十八話 ここにいる理由

「くっ!」

「腕落ちたんじゃないかみんな。」


 確かに俺たちは最近いろいろとあってレベル上げをしていなかった。


「そういうんだったらどうにかしてくれないか。」

「おっしゃ!」


 優樹は魔物の胸辺りに飛び込み、スキルを放つ。


「エアリアルスラスト!!」


 きれいに決まった。しかし、魔物は苦しむ様子もなく再び暴れだす。


「…おい。全然効いてなさそうに見えるんだけど。」

「あっれぇ―、おかしいな…。」


 次々に繰り出される衝撃波。


「なんでいつもこうぎりぎりな戦いばっかなんだよ!」

「文句言ったってしょうがないよ。」

「そうね。どこか弱点とかはないのかな。」


 真正面からの一撃が全く効かない以上、弱点でもなければ俺たちに勝ち目はない。


「…あの頭のところにある傷じゃないか?」


 ボロボロの体でもひときわ大きな傷が額にある。


「それに賭けてみるしかないな。」

「でもあんなところどうやって攻撃すれば…。」


(考えろ。どうしたらこの状況を変えられる。あの厄介な衝撃波を止めるにはどうしたらいい。考えるんだ俺。)


 今ここにいるのは6人。戦力になるのは5人だ。どうしても攻撃力が足りない。


(…そうか。これなら…。)


「みんな、俺に一つ考えがあるんだが。」






「オラァァァ!!!」

「かはっ!」


 美織は思い切り吹き飛ばされる。


「おいおい、あいつらの仲間っていうからどんだけ強えかと思ってたら…。とんだ雑魚じゃねーか!」

「うっ…。」

「ちっ。無駄な時間とらせやがって。」


 そういって背を向ける。


 美織は倒れたまま動かない。


(本当に私はだめですね。いつもこうだ。私はこの世界に来る前も…。)


 美織はふと昔のことを思い出していた。






 私は子供のころからドジで、周りのみんなからは厄介者扱いされてきた。


「知ってるか?こいつと一緒にいると不幸になるらしいぜ!みんな近寄らない方がいいぞ!」


 どうしてそんなこと言うの。


「おい、こっち来るな!ドジが移るだろ!」


 そんなわけない。


「また失敗したのか。お前ってやつはどうしてこう何もできないんだ。」

「本当に私たちの子なのかしら。」


 私はお父さんとお母さんのために頑張ったのに。


 私は誰からも必要とされてこなかった。だからこの世界に飛ばされたときは正直チャンスだと思った。ここなら私は変われるかもしれない。


 でも現実はそんな甘くなかった。


「頼むから俺たちにこれ以上関わらないでくれ。」

「あなたといると命がいくつあっても足らないわ。」


 待って。私を一人にしないで。


 お願いだから…。誰か助けて…。

 

「大丈夫ですか?」


 誰?こんな私に手を差し伸べてくれるのは。


「盾は誰かを守るのに一番向いているからな。美織にぴったりだと思うよ。」


 どうして私に優しくしてくれるの。

 

「私たちもう仲間じゃないですか。」


 そうだ。この人たちは私をなかまとして受け入れてくれたんだ。


 もう私は独りぼっちじゃないんだ。






「まだ…です。」


 美織は震える足で何とか立ち上がる。


「おい、もういいだろ。」

「私はあなたを逃がしません。」


 そうだ。私はこんなところで倒れている場合じゃない。


「逃がさないだ?笑わせんな!」


 ボスの男はまっすぐこちらへ向かってくる。


「胸を張って仲間だと言えるように私はなる!」


 美織は盾を構えたまま重心を右に傾ける。


「何!?」


 男の放った一撃を体を使って全身ではじく。そしてそのまま体を回す。


「うぐっ!!!」


 盾が顎にクリーンヒットし、男はそのまま気絶した。


「はぁはぁ、これで私も…。」


 美織も体力の限界からそのまま倒れてしまった。






「よし、みんな準備はいいか!」

「いつでもオッケーだぜ。」

「いっちょかましてやりますか!」


 それぞれが配置につく。


「行くぞ!!」


 俺の合図とともに皆走り出す。


 俺とマイは攻撃をかわしつつ懐に潜り込んでいく。


「ぎえええ!!!」


 あと少しのところで魔物は大きく右手を振りかぶる。


「させない!」

「させるか!」


 それを横から真白とアレンが全力ではじく。


 はじかれた右手はそのまま自身の左肩を殴るようにぶつかる。


「キェ!!」

「思った通り、自分の攻撃ならある程度聞くみたいだな!」


 自分を殴った反動で体が止まった瞬間を狙って、俺とマイは膝を攻撃し重心を崩す。


「今度こそは決める!!はあああああ!!」


 最後に優樹が額の傷に向けて全力の一撃を放つ。


「いぎゃああああああ!!!」


 魔物はそのまま膝から崩れ落ちていく。額の傷からは赤い煙が出ている。


「グ…グェ…。」


 そしてそのまま気絶した。


「はぁ。まったく。厄介なものを召喚してくれたよ。」

「早くあいつを追わないと!美織も心配だわ!」

「そうだな。急ごう。」

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