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第二十五話 未知の空間

「よし。これだけあれば十分かな。」


 次に起きようとしている事件を防ぐため、俺たちは大量の青い染料と、糸と鐘を購入した。


 もし本当に犯人が姿を消して犯行に及ぶのであれば、俺たちにも認識できるようにしてやればいい。直接染料をかけるのは無理にしても、街中の至るところにばらまいておけば足跡で分かるようになるし、鐘を糸でつるしておけば音でどこにいるかわかる。


 もちろん街の人には外出しないように言うつもりだ。


「なあ、この中に野球が得意な人いるか?」

「どうしたの急に?」

「念のためにこんなものを作っておいたんだ。」


 俺は青いボールを取り出す。


「なんだこれ?」

「マナの樹液を染料に混ぜて固めたものだ。万が一逃げられることがあっても、これを当てられればマイがにおいで追えると思って。」

「なるほどね。ここにはマナに木もないしね。」


 捕まえるための準備は多いに越したことはない。


「じゃあ、俺がやるぜ。こう見えても学生時代は野球部だったからな。」

「しゃあ、よろしく頼むよ。アレン。」

「おう!任せとけ!」

「あとは準備をするだけね。」


 手分けして準備に取り掛かる。


 街の人を避難させた後、街のあらゆるところにわなを設置する。少しでも抜け道を作っては姿が見えない以上不利になるので、慎重に取り掛かる。


「これで最後だな。」


 俺は建物と建物の間に張った糸に鐘を釣り下げる。


「いつでも来てみろや!」


 すでに2回もやられているのでみんな気合が入る。






 こうして待ち続けること3時間後。


「ちりんちりん。」


 どこかで鐘の鳴る音がした。


「聞こえた!」


 俺は急いで音のした方へと向かう。


 そこにははっきりと青い足跡が残されていた。鐘の音で相当焦ったのか、足跡は逃げるように街の外へと向かうように残っていた。


 足跡を追っていくと、途中から靴が脱がれており、足跡は途切れていた。


「ここまでは計算通りだな。」


 俺は鐘の音が聞こえた瞬間、美織にこの街の入り口2か所にそれぞれ待機している真白と優樹にメッセージを送るように言っていた。今頃入り口は封鎖されているはずだ。


「これで犯人が逃げるには残り一つの入り口しかないはずだ。」


 この街には3つ入り口がある。そのうちの2か所をふさいでしまえばこちらのもんだ。


「あとはアレンさんのマイさん次第ですね。」

「ああ。頼んだぞ、2人とも。」


 




「…くる!」


 街の人は外出を控えているため、足音が響く。


「今だ!」


 マイはバケツ一杯の染料を思い切り振り、中身をこぼす。


 すると姿が見えなかった犯人の姿が青い染料によってあらわになる。


「目に見えればこっちのもんよ!」


 アレンが犯人めがけて特製マナボールを投げる。


「いて!くっそ!」


 見事頭に命中した。


「どんなもんよ!」

「すごーい!」


 やがて俺たちもアレンたちのもとにすぐに駆け付けた。


「それにしてもよかったのか?ここで取り押さえなくて。」

「ああ、ああいう奴は大体話してくれないからな。だったらあいつに案内してもらう方が手っ取り早い。」


 もし問い詰めて自害なんてされてはたまらない。


「よし、じゃあ後を追うか。」


 マイの鼻を頼りに一定の距離を保ちつつ跡を追っていく。


 すると、においは湖で途切れていた。


「おいおい。まさかここで洗い落とされちまったってわけじゃねよな?」

「それはないよ。マナのにおいはそんな簡単には消えないから。」

「…とすると。」


 真白が湖の中をのぞく。


(あそこに大きな穴があるわね。もしかしたらあそこに逃げ込んだのかも。)


 しばらくして真白は湖から顔を上げる。


「なにかあったのでしょうか?」

「うん。いかにもって感じの穴があったわ。」

「…はは。まさか湖の中にあるかもしれないなんてな。そりゃ見つからないわけだ。」


 確かに湖の中にアジトがあるかもしれないなんて想像していなかった。隠れるにはもってこいな場所だ。


「みんな泳げるか?」

「私は大丈夫だよ。」

「俺も大丈夫。」

「…私泳げない…。」

「私も泳げません。」


 マイと美織は泳げないようだ。


「じゃあ私がマイちゃんをつれていくから、春人君は美織さんをお願い。」

「俺ですか!?」

「お願いします。」


 美織は両手を合わせて上目遣いで見つめてくる。


「…わかった。息を止めてしっかりつかまってろよ。」


 冷たい水の中を泳いでいき穴に入っていくと、少し行った先に広めの空間が広がっていた。


「はあ、どうやらここには空気があるみたいだな。」

「それにしても広いな。まさかこんな場所が湖の中に広がっていたなんてね。」


 明らかに人工物のキャンドルに照らされ薄暗い空間を進んでいくと、大きな扉があった。

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