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第二十三話 殺害現場

「久しぶりだなー、ここも。」


 幹部を倒して以来ここには一度も戻ってきていない。


「大体この辺りだね。」

「聞き込みはしたのか?」

「ああ、でも目撃者はいなかったそうだ。」

「そっか…。」


 とりあえず戻ってきたものの、手掛かりがないのではどうしようもない。


「そういえば情報屋はどこにいるんだ?俺たち情報屋を探していたんだけど。」

「君たちも知らないのか。実は俺たちも昨日から連絡がつかなくてな。困ってたんだよ。」

「優樹さんたちもなんですか。」


 情報屋がいなくなった?いったい何があったんだ。


「思ったよりも状況は深刻みたいですね。」

「そうみたいだな。」

「あえて離れた場所で時間をずらして犯行に呼ぶことで俺たちをかく乱しようとしているんだろうね。」


 それほどまでに相手も慎重だということだ。


「俺らに絶対にばれたくないのか。一体何を企んでやがる。」

「このまま考えていてもらちが明かないからな。やっぱり現行犯をその場で取り押さえるしかなさそうだな。」


 次にどこでいつ起こるかわからない以上この人数では少々厳しいが、今はこの方法しかない。


 俺たちは念のため二人一組で見回りをすることにした。湖周辺をアレンと優樹、平原を真白とマイ、街周辺を俺と美織がそれぞれ担当することになった。


「よし、何としても捕まえて情報を引き出そう!」

「おお!」






「春人さん。私戦闘では役に立てないので、ここでは頑張りますね!」

「そういえば美織ってなんの武器を使っているんだ?俺、まだ美織が戦ってるところ見たことないけど。」

「そういえばそうでしたね。私あまり体を動かすのが得意ではないので、戦うというよりは自分の身を守る意味で盾を使っているんです。」

「盾か、珍しいな。」

「なかなかいませんからね。」


 俺はいろいろな武器を試したが、一人で戦っていたので盾だけは試したことがなかった。


「盾は戦いに向いていないので、同じパーティーの人からも文句を言われてました…。」

「盾は誰かを守るのに一番向いているからな。美織にぴったりだと思うよ。」

「春人さん…。私みんなを守って見せますね!」

「よろしく頼むよ。」






「思ったよりも障害物が少ないわね。少なくなったとはいえまだ魔物もいるし。」

「じゃあ、ここでは何も起きないかな?」

「でもこの広さなら周りからは認識されにくいかも。」


 今ではこの大陸でレベル上げをする人はほとんどいない。しているとしても基本的にレベルは低いので、狙うには絶好の的になってしまう。


「マイちゃん、この辺に人のにおいとかするかな?」


 マイは頭を横に振る。


「マナの木みたいに強いにおいじゃないとわからない。」

「そっか。なら自分の目と耳に頼るしかないわね。」






「あんたとこうして一対一で話すのははじめだな。」

「そうだね。それにしてもまさかこんなことになるだなんてね。」

「まったくだぜ。人が人を殺すなんて、理解できねーよ。」

「そうだね。でも一度そのラインを踏み越えた奴は何をするかわからない。」


 ラインを踏み越えた人たちが集まっているのであればなおさらだ。厄介さは魔物の群れの比ではないかもしれない。


「本当に怖いのは人間だよ。まったく…。」






 見回りを初めて約2時間がたった。神経を張り巡らせ続けるのは疲れてしまう。


 集中力が切れ始めたそんな時だった。


「きゃあああああ!!!」


 街に叫び声が響く。


「なんだ!?」

「あちらの方からみたいです!急ぎましょう!」


 声のする方へ向かったがすでに遅く、俺たちが着いた時にはすでに犯行後だった。


 目の前には剣が突き刺されたまま壁に貼り付けになっている人の姿があった。


「…そんな…。」

「くっそ、いつの間に!美織はみんなに連絡を!」


 俺はまだ犯人がいるかもしれないので、街中を走り回ったが、それらしき人の姿は見当たらなかった。






「おいおい、まじかよ…。」

「ごめん…。俺たちがいながら。」

「二人は悪くないよ。悪いのはブラッディファナティックスなんだから。」

「そうだよ。今は街の人の安全の確保が先だ。」


 そういう優樹の手は固く握られていた。本当は悔しさでいっぱいなのだ。


「ああ、そうだな。」


 俺はふと黒谷の言葉を思い出していた。


『すべての人の命を守ることなんてできない』


 わかっている。俺はヒーローでも何でもない。みんなを守ることはできない。わかっているんだ。けど…


「ちくしょう……。」


 俺は壁を思い切り殴る。その手は赤くなっていた。

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