第十七話 狙われる者
森を進んだ先にある小さな村の宿屋についた俺たちは一度落ち着くことにした。ここなら人目にもあまりつかないだろうから安全だろう。
「えっと…。まずは助けてくれてありがとうございました。私は小笠原美織といいます。」
「俺は黒野春人。それで銀髪の子が真白で、でかい男がアレンで、この子がマイ。」
自己紹介をしたところで本題に入る。
「どうしてあんなところで倒れていたんですか?」
「…追われていたんです。私の『パラメータアッパー』というスキルを狙って…。」
パラメータアッパーということはこの女性が情報屋の言っていた人物で間違いないだろう。
「あれほどボロボロになっていたということは相当ひどいことを…。」
「いえ、あれは私が勝手にドジっただけです。」
「…え?」
皆、口を開けてぽかんとしている。
「私昔からドジなんです。今回の怪我も夢中で逃げていたら木にぶつかってしまったんです。それでよろけたら落ちていた石に躓いて思い切り転んでしまって。音で気づかれないようにと急いで逃げようと思ったら、そこが坂になっててそのまま転がり落ちてそのままの勢いでまた木にぶつかって、気を失ってしまったというわけです。」
「…。」
誰かに危害を加えられたのではなく、自分でドジったなんて。こんな絵にかいたようなドジっ子本当にいるのだなと思わずにはいられなかった。
「それにしても誰かにずっと襲われ続けるのは大変ですよね。なんかいい方法はないのかな。」
真白が言う。
「うーん、そんなスキルはなかったって広めることができたらなぁ。」
「とりあえず私たちとしばらく一緒にいてはどうでしょう?一人でいるより安全だと思いますよ。」
真白の提案を聞くと、突然彼女は立ち上がる。
「…いえ。私がここにいては皆さんに迷惑が掛かってしまいますので。それでは私はグロウフラワーを手に入れなければならないので失礼しますね。」
「え、ちょっ…。」
止めようとしたが、彼女は振り向くことなく去っていった。
「…おい、どうすんだよ。あのまま行かせてもいいのか。」
俺は少し考える。
「…このまま彼女をパーティーに入れたとしても、襲われなくなるという根本的な解決はできないからな。やはりそこをどうかしないと安心して入ってもらえないかもな。」
何はともあれ彼女をあのまま行かせるのは危ないかもしれない。なんせあのドジっぷりだ。またいつ襲われるかわからない。
「まだそんな遠くには行ってないはずだ。もう一度話をしてみよう。」
彼女の跡を追って宿を出たが、すでに彼女の姿はなかった。
「どこへ行ったんだ。」
「…確かグロウフラワーを探すって言っていたよね。」
「それだ!でもそれってどこにあるんだ?」
「とりあえず村の人に聞いてみるか。」
「それにしても優しい人たちでした。仲間になりたかったです。」
彼女にとって、スキル目当てで迫ってくる人たちはたくさんいても、彼女自身に手を差し伸べてくれる人はいなかった。
「…だめです。私がいては皆さんに迷惑が掛かってしまいます。これでよかったんです。それよりもグロウストーンを探さなくては。」
美織は自然の広がる草原へと森を進んでいく。
「…おい、いたぞ。お前ら。せーので取り囲め。」
美織が歩いていると、木の陰から人がでできた。
「!?」
「くっくっく。もう逃がさねーぞ。」
「そんな…。」
美織が大きな口を開けて叫ぼうとする。しかし、気づかれてしまい、口をふさがれてしまった。
「騒がれたら面倒だからな。おい、お前らさっさとずらかるぞ。」
「グロウフラワー?悪いが知らんねぇ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
一通り村の人に聞いてみたが、手掛かりになるものはつかめなかった。
「まずいな、かなり時間がたってしまったな。」
「みんな―――。」
マイが叫びながら走ってくる。
「花の情報はわからなかったけど、さっきのおねーさんを見た人がいたよ。」
「本当か!」
「うん!森のほうへ歩いて行ったって。」
森か…。襲うなら絶好の場所だ。以前襲われているのならなおさら危険だ。
「マイちゃんよくやった!」
俺たちは早速森のほうへ向かった。
「これは…靴?でもどこかで見た気が…。」
「どうしたの?」
俺が何かを見つけたのに気が付いた真白が話しかける。
「!?これって…小笠原さんの靴じゃ…!」
「なんだって!?」
言われてみれば彼女はこんな靴を履いていた気がする。
「まさか、もう襲われたっていうのか…!」
いつ襲われたかはわからないが、俺たちと別れてすぐならかなり時間がたってしまっている。
「何とかして探し出すぞ!」
「探すってどこをだよ!あまりにも広すぎるぞ!」
この森にしても全部見て回るには1日はかかる。
「くっそ、なんか手掛かりは…。」
あたりを見渡すと、そこには赤い布切れが落ちていた。
「布がどうしてここに…?」
「ねえ、あっちにも落ちてるよ。」
その先にもいくつか落ちている。まるで意図的にそこに置かれているようだった。
「…これをたどれば見つけられるかもしれない。」
もし彼女が残してくれたものなら助けを待っているということだ。
「よし、行くぞ!」




