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第十三話 情報屋

 あれから1週間がたった今日も、俺たちは夜までレベル上げをしていた。


「ふぅ、かなりレベル上がったな。これならもう十分マイ一人でも戦えそうだな。」

「うん、ありがとう!」


 マイも初めの頃に比べて笑顔も増え、すっかり打ち解けていた。ここがマイにとって安心できる場所になれたのならよかった。


「そろそろ宿に戻るか。」


 マイはフードをかぶる。あれから街の人の目が厳しくなり、夜でも油断はできない。少しでも不審に思われれば、それだけで終わりだ。その場は切り抜けられたとしても、その後のことを考えると、やはりここは慎重にいかなければならない。


「宿に戻るのだけでも一苦労だな。」

「早くこんなことしなくて済むように頑張らないとね。」


 そのためには早く幹部を倒して、獣人は安全だということを証明しなければならない。






 その日の夜、俺はなぜか寝付けなかったので、気晴らしに街を歩くことにした。


「これがマナの木か。近くで見るとでかいな。」


 この街を魔物から守っているマナの木は、夜でも光り輝いており、街全体を照らしている。


「こんなにきれいならみんなも起こしてくればよかったかな。」


 そんなことを思いながら、休憩がてらその場に座り込む。


「あれ、こんな時間に人がいるなんて珍しいね。」


 俺が物思いにふけっていると、後ろから中学生くらいの男の子が話しかけてきた。


「君は…だれ?」

「僕?僕は…うーんとねー…。情報屋とでも言っておこうかな。」

「情報屋?」


 情報屋ということは、何か役に立つ情報を教えてくれるということなのだろうか。この世界にそんなものがあったなんて知らなかったな。


「それで、君はどうしてこんなところに?もう夜中の2時だけど。」

「たまたまだよ…って言いたいところだけど。実はあなたに話したいことがあってここまで来たんだ。」

「俺に?」


 ということは、この子には俺がここにいることがわかっていたということか。一体どうして?寝付けなくてたまたまここに来ただけなのに。


 俺はとりあえずこの子の話を聞いてみることにした。


「それで、話したい事って?」

「今日、幹部が見つかったらしいんだ。」

「幹部が見つかった!?いったいどこで!?」


 この子の言うことが本当か嘘かはわからないが、幹部が見つかったということであれば、一度聞いてみる価値はある。この子を信用するかどうかはその後でもいい。


「あなたたちが猫耳の少女を助けた山をさらに上に登った先に、もう一つ大きな洞窟があるんだけど。そこを進んでいった先にいたらしいよ。それはもう恐ろしい姿をした魔物だとか。」

「その話は一旦置いといて、どうしてマイのことまで知っている?」

「言ったでしょ。僕は情報屋だって。あなたたちが戦う代わりに、僕が情報を集める。そうやって生きているんだよ。誰もがあなたたちみたいに戦えるってわけじゃないからね。」


 なるほど。もしかして黒谷にマイのことを教えたのもこの子だっただろうか。もしそうであるなら、この子の話はきっと本当なのだろうな。


「明日にはあなたたちも会議に召集されると思うから、覚悟しておいたほうがいいよ。それじゃあ、僕はもう行くね。」

「それを伝えるためにわざわざここへ?」

「それが僕の仕事だからね。」


 そういうと情報屋と名乗る少年は、夜の街へと帰っていった。


「幹部が見つかった…か。」


 俺はこぶしをギュッと握り締め、夜空を見つめる。


「…できることをやるだけだ。」






 翌朝、情報屋に聞いた話をみんなに伝えた。


「…マイちゃんのことまで知ってるなんて。その子一体何者なの。」

「詳しいことは俺にもわからない。あの子が俺のいる場所を知っていた理由も結局分からなかったからな。」

「ひとまずそいつのことは置いとくとして、どうするつもりだ?」


 情報屋の言うことが本当なら、今日の内に俺たちは会議に召集されることになる。このためにレベル上げを頑張ってきたはずなのに、いざ幹部と戦うとなるとどうしても不安になってしまう。


 あの日のことは今でも何度も思い出す。目の前で人が殺される恐怖は消え去ることはないだろう。それに今回はマイのこともある。今のマイならそこまで心配することもないかもしれない。けれど、もし何かあったらと考えてしまう。幹部戦はきっと壮絶な戦いになる。そうなると他人の心配をしている余裕はなくなる。


 どうしてもマイナスな考えが頭の中をよぎり、俺たちは少し沈んでいた気持ちになっていた。


「私頑張るよ!怖いけど、みんなが一緒ならきっと大丈夫だもん!」

「マイちゃん…。」

「それに、もう逃げないってきめたから。」


 何やってんだ俺は。マイが頑張ろうとしているのに、俺たちがこんな気持ちでいてどうするんだ。

 

「…うん。そうだよね。私たちが弱気じゃだめだ。」

「マイに助けられちゃったな。よし、いっちょ気合入れるか!」


 マイの覚悟にあてられて、俺たちの沈んでいた気持ちはやる気へと変わる。勝負なんてやってみなければわからない。きっと誰も死なない未来だってあるはずだ。


「みんな、覚悟は決まったか!絶対勝つぞーーー!」

「おーーーー!」

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