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第二十八話:洞窟へ

「初心者のアルタイル以外にも、再度徹底しておきたい」

 馬車の中で<陽だまり>の頭領であるジョンが話し始めた。

「洞窟内では俺の命令に従ってくれ」

 止まれ、と言われたらクシャミをしかけていても止めなければならない。

「これは毎回、全員に言い聞かせている。頭領として皆の命を預かる為、絶対に欠かせないルールだ」

 第一機動隊の全員が頷いた。

「守れない奴は置いて行く」

 真剣な顔で車内を見渡し宣言する。


「しかし、俺達は洞窟探索の専門なので、山の事は分からない。だから第一機動隊に協力を依頼した」

 洞窟で人為的な出入り口が発見されたが、そこが山の何処に繋がっているのか、彼等には判別できなかったのだ。

「暗い洞窟内に生息していた魔物が、外の光りに誘われて迷い出している」

 だが、明るさに慣れていない洞窟の魔物は、外の魔物達にとって格好の餌食になっていたらしい。

「いつ魔物の生態系が変化するのか、誰にも分からない状況だ」

 強力な洞窟の魔物が外へ出て、異常繁殖すれば危険な事態を招く恐れが高い。


「今日は洞窟を通って出入り口まで行き、そこが山の何処に繋がっているのかを調べて貰いたい。明日以降は外から辿り着く経路を確立して、内外に監視の為の拠点を築く計画だ」

 可能であれば、穴を埋め戻して塞いでしまう。

「出入り口までは、初心者が居ても四時間あれば辿り着ける」

 そこからは別行動だ。


「もう一つ、期待されている事がある。太陽の大山の内部に、洞窟がどの様に広がっているのか、位置関係を検証できる良い機会なんだ」

 これ迄にも大雑把に推測されてきたが、より精度の高い立体像が判明する。

「今後の魔物対策に、重要な情報である事は間違い無い」

 ウエストレイクの街にとっても、治安への影響が大きい案件だ。

「兎に角、俺達が魔物の脅威から街を護る」

 ジョンは基本に立ち返った言葉で締めた。



◇◇◇



「到着した様だ」

 頭領のジョンに先導されて、全員が静かに馬車を降りる。もう一台の馬車から降りて来たのは、全員が黒装束に身を包んでいた。洞窟探索のユニフォームなのだろう。

「馬車の中で説明した通り、第一機動隊は三組に分かれてくれ」

 フィリップとペネロペ、ウラジミールとソニー、アルはリーダーのカークと組む。それぞれに陽だまりのメンバーが一人付く事になっている。

「ジャックはフィリップに、ジョニーはウラジミールで、サブリナはカークと組むんだ」

 頭領は素早く指示を出す。

「トトは俺と二人で先頭を、メリーアンはポーター達と殿を務めてもらう」

 三人一組になって並んだ。


《陽だまりに女性が二人居たのか)

 アルには外見で見分けが付かなかった。

(おや? 二人共にダークエルフだぞ)

 日焼けして見えたのは、元から褐色の肌の持ち主である。

(だから体格が良かったんだな)

 黒装束の上から着けているのは、金属製で抑揚を抑えた形状の胸当てだ。それがボディラインを隠している。

(命懸けでも構わない、かも知れないぞ)

 その下に秘められている筈の、たわわに実った二房へ不埒な想いを馳せるアルタイル少年だった。


「宜しくお願いします」

 サブリナへアルから先に挨拶する。

「よろしく」

 初めて耳にした彼女の声は、鼻にかかったハスキーボイスだった。

「エルフの女顔だな」

 いきなり不躾な言葉で、文字通り高い視線から見下ろされる。

「でも俺は男ですよ」

 にこやかに返す。

「分かっているさ。魔女の匂いをプンプンさせて、深い仲だと直ぐに知れたからな」

 アルは思わず、指環と首飾り意識した。


「これを身に着けてくれ」

 頭領のジョンが、柔らかい樹脂製の棒を各自に一本ずつ配る。

ルミナ(発光)スライムのケミカルライトだ」

 彼が持つ真っ直ぐな棒を曲げると、乳白色だった中身が淡く黄色に光った。

「これで十時間は光り続けるぜ」

 そう言ってアルの左手の二の腕に巻いてくれる。

「お互いに取り付け合うんだぞ」

 アルは受け取った棒を曲げて、頭領の左腕に装着してあげた。

「棒は再利用するから、光らなくなっても捨てるなよ」

 陽だまりのメンバーが回収するのだ。


(エマの魔道具屋で見掛けた物だな)

 アルはその用途が分かって安心し、仕組みについて疑問が湧いてくる。

(棒の中で二つの液体が混合されると、何らかの反応が起こって発光するのか?)

 彼女は普段、何を研究しているのか気になった。


「アル、分かっているだろうな」

 ウラジミールが睨む。

「大丈夫だよ」

 軽く答えた。


「暗い洞窟内では目立つから、仲間を見分ける為の標識になる」

 魔物にも見つかり易いのでは、と思ったが、これ迄に運用されているから大丈夫だろう、と勝手に解釈しておく。

(実際の運用方法を見てから、分からない点を尋ねよう)

 アルは迷惑をかけない様に自重した。


「では出発するぞ」

 頭領のジョンが先頭に立って移動を始める。



◇◇◇



「第一機動隊の六名はこの先で別行動を取るので、今回は帰って来ないんだな」

 洞窟の入り口には小屋が在り、受付の老爺が台帳へ出入りする人員を記録していた。

「このアルタイルは、今回が初めてだが?」

 やはり老爺でも厳つい受付は確かめる。

「そうだ。初心者だが、フィリップと同じレベル扱いにしてくれ」

 リーダーのカークが言った。

「分かった。筆頭司祭のピクニックに、お供できる程のレベルなんだな。では問題無いだろう。気を付けて行っておいで」

 恐い笑顔で見送る。


「俺とトトが先頭を行く。皆は順番通りに着いて来てくれ」

 頭領のジョンが手を挙げて言った。

 洞窟の入り口は大きく、高さ八メートル、幅五メートルもある。そこには鉄条網で金網が張られており、魔物の流出を予防していた。係員の二人が左右の扉を押して、洞窟へ入る道を開けてくれる。

 頭領とトトは二人共にほぼ同じ体格で、身長一メートル八十五センチ、体重は八十キロ台に見えた。

 二十メートル程進むと下り坂になり、外の明りが届かなくなる。同時に天井も低く、道幅も狭くなってきた。


「暫くは道なりに進む」

 トトに前方を警戒させて、頭領が振り向いて教えてくれる。サブリナとリーダーのカークに続いて、アルは慎重な足取りで進んでいた。

(この距離なら隠密魔法を使っても、サブリナとリーダーの二人には無効だな)

 それでも一応かけておく。

「アル、居るのか?」

 即座にリーダーのカークが振り向いた。視線が合うと安心したのか、前を向き直して進む。黒豹獣人でマスタークラスのハンターは、アルの気配を背中で把握していたのだ。

 サブリナは黙々と前進している。


「今、一瞬でアルが消えたぞ」

 後ろに続いていたフィリップが呟いた。

「隠密魔法だよ」

 直ぐに見抜いたペネロペが答える。

「身体の動かし方も、優秀な斥候のレイラと同じレベね」

 彼女は常に後衛として、仲間達の行動を観察していたのだ。

「見事だぜ」

 付き添いのジャックが洩らす。彼は洞窟探索のベテランなのだが、アルの隠密魔法には驚いた。


(まだ入り口付近だからなのか、全く魔物の気配を感じないぞ)

 アルは慎重に歩みを進める。

(陽だまりのメンバーは、全員がマジックランタンを持っているんだな)

 ボンヤリと足元を照らす魔道具は、エマのお店でも見掛けた物だ。

(リーダーは何度か訪れているのだろう。道を覚えている歩き方だ)

 既に外の光が届かない暗闇でも、迷いなく進んでいた。

(俺も頑張って、追い付かねばならない)

 アルは決意して、全方位に意識を張り詰める。






続く

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