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他愛もない会話をしながら終えた食事の時間はとても素晴らしいものだった。

はじめに手をつけたスープはアーリィの帰りを待っていた時間のおかげで少し冷めてしまっていたが、スープに入っていた見たことない種類の野菜? にはしっかりと味が染みていてさらに野菜自体もとても美味しいものだったのでかなり満足した。

しかし黒パンが少しいただけなかった。何というか固すぎる。そんでもってすっごいジャリジャリするのだ。おそらく製粉技術が日本に比べて発達していないのが原因の一端ではあるのだろうが、感触がどうにも不快なものだった。

しかし味については文句はなかったので、スープと一緒に流し込んだらそこまで不満を言うほどではなかった。

結果的には美味しかったし、食事の時間はとても楽しい時間を過ごせたので俺としては満足だった。


「いやぁ、美味しかったです。ご馳走様でした!」

「ふふ、リンさんに満足してもらえたようで何よりね」

「おかあさん、今日もおいしかったです!」

「ええ、リラも毎日美味しく食べてくれてありがとう」


そう言ってアマーリエさんはテキパキと手際よくテーブルの上を片付け始める。リラも準備の時と同じようにアマーリエさんの作業のお手伝いを開始した。

俺? やっぱり手伝いはさせてもらえなかったよ……。


と、ここで玄関の扉が開く音がした。


「ただいまー」

「あら、アーリィ遅かったわね。もう先にごはん食べちゃったわよ」

「あ、本当だ! う〜、ちょっと遅かったか〜」

「どうしてこんなに遅れたのよ?」

「んーちょっとねぇ、リラがさらわれた時の状況で気になることがあってね〜。リラを助けてくれた人が起きてくれたら色々聞けるんだけど」


そう言ったアーリィの目が椅子に座る俺の姿を捉えた。


「起きてる!? え、君もう大丈夫なの? もう痛くないの?」

「いや、まだ結構痛いです」

「え、それでももう起きてるってすごくない? 普通起き上がるのもきつい傷のはずなんだけど……」

「そうなんですか? でも耐えられない痛みではないので」

「へー、やっぱり強いんだね君は!」

「いえ、痛みに慣れただけなので強い訳ではないですよ」

「そんなことないわ!」

「いや、そんなことありますって」


別に謙遜という訳じゃない。普通に考えてあれだけあの化け物——って冷静に思い出すとあいつらゴブリンだよな? そうだな今度からゴブリンと呼ぼう——にボッコボコにされて俺強いんだぜ!? なんて言える訳がない。


「じゃあなんでゴブリンたちを倒せたのよ!」

「まぐれです」

「まぐれで複数のゴブリンに勝てる訳ないじゃない! 本当に強くなかったらいたぶられて殺されているはずよ!」

「本当にまぐれなんですって! 俺も無我夢中だったんです! その証拠に俺はあんな化け物、ゴブリンたちとの戦い方なんて知らないんですよ!」


お互い一歩も譲らない。白熱する口論にアマーリエさんとリラはすでに退散したようで不毛なこの争いを止めてくれる者はいなかった。

アーリィが口を開く。


「……本当に戦い方知らないの?」

「知りませんよ」

「じゃあ自分の『スキル』も分からないの?」


聞き捨てならない単語が出てきた。スキルだと? やっぱりあるのかスキル!? さっき『アーツ』を使えば習得できるとは聞いていたけど、そもそもこの世界の住人はもしかしてデフォルトで持ってるものなのか!? だとしたら王道異世界転移っぽいしもしかして俺も持ってたりすんのかな!?


「『スキル』? そんなもん持ってないですよ」


大興奮した思考を見せまいと必死に言葉を紡ぐ。


「スキルを持ってない人なんているはず無いわ」


これキタんじゃね!?


「俺は自分が『スキル』を持っているかどうかなんて生まれてこのかた知りません。もしかして『スキル』があるかどうか調べられるものでもあるんですか?」


この言葉を聞いたアーリィは目を見開く。


「君、もしかして『託宣』受けてないの!?」

「……すみません、『託宣』ってなんですか?」

「……うそ、本当に知らないの?」

「ええ、分かりませんし聞いたこともないです」

「分かったわ。じゃあ今から『託宣』を受けてもらうわ。そこで自分の『スキル』を確認しなさい」

「え、そんなすぐにできるものなんですか?」

「ええ、誰でも教会に行けば受けられるから。今から案内するからついてきて」


信じられないものを見るような顔でそう指図するアーリィに促されて俺は教会で『託宣』とやらを受けるためにアーリィの後をついていくのだった。

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