第7話〜覚悟〜
現在、神崎清人は最大の危機におちいっている。
聞き間違えかもしれないと、清人は顔を青くして聞いている。
「ヒメ、今なんていった?」
ヒメ・アン・グラシスは頬ふくらましながら言った。
「だから〜、お兄ちゃんだって言ったじゃん」
どうやら間違えじゃなさそうだ。
清人は抱きついているヒメを引き剥がし、説得をこころみる。
「ちょっと待て、なぜ俺?この学園ならたくさん強いやついるだろ?考えなおせ」
「やだよ、私はお兄ちゃんと戦いたいんだよ。」
説得失敗、清人がやばいと思っているときに、周りの生徒が手をあげる。
「はいはい!、俺戦いたいです!俺!」
「いや、ぜひ俺と!」
「お願いします!清人なんかと戦ってもつまらないですよ!俺とやりましょうよ!」
それぞれ勝手ことをいってんなと思いながらも、清人はもしかしたら別の人に変わるという可能性にかけていた。
しかしヒメはクラス男子の方を向き一言。
「私、お兄ちゃん以外に興味ありませんから」
その一言でクラスの男子が魔法にかかったように石化した。
そして清人は…
「俺に拒否権はないのか?」
「ないよ。」
可能性がなくなった。
「じゃあもう時間だから校庭いこ♪」
絶望している清人の腕をつかみながら、ヒメは校庭に向かった。
ーーーーーー校庭
清人とヒメは今、校庭中心で向き合って立っている。
シミュレーションシステムで縦、横、高さ500メートルに結界を貼った。ステージは、少量の岩場に設定している。ほとんど何もない、ところどころに大きめな岩がいくつかあるだけである。結界はSSランクの魔法まで防げるので、壊れる心配はない。結界の外では全校生徒が見学している。
結界の中の様子は、外に飛んでいるマジックカメラが数箇所設置しており、中の様子が巨大スクリーンに映し出されている。声まで聞くことができる優れもの。
ヒメが右手を前に出し、レイスを起動する。
「クラン・イン」
ヒメの右手に、自身の体よりデカイ大鎌が姿をあらわす。
「私のレイス、アークサイスだよ。」
アークサイス、鎌の形そのものは普通だが、刃の部分が赤と黒で半分にわかれており、かなり大きい、柄の部分は黒い
そしてヒメが鎌をおろし語りだした。
「この戦いはね、お兄ちゃんが力をうまく使えるかどうか確かめるように、お父さんに頼まれたんだ。この戦いの記録は、お父さん達も見るから、本気でいくよ。」
ヒメの目をみて本気だと気づいたのか、清人も一回溜息を吐き、覚悟を決めた
「…クラン・イン」
清人の左手に木刀が出現する。そしてその木刀を二つに折る、そこまですると、ヒメを一度見て告げる。
「ヒメ、俺が開放をする以上。手加減はしないぞ」
ヒメは清人に微笑みながら返す。
「もちろんだよ。でも勝つのは私だけどね」
「さて、それはどうかな」
そう言うと、清人は静かに目を瞑り、唱える
「−−我、人の中に封印されし第一の扉よ。解き放て・・・開神」
言い終えると同時に、清人に凄まじい魔力が宿る。そしてゆっくり目をあけ、さらに続ける。
「クラン・モード シスカ」
すると清人の木刀が二本の銃剣に姿を変えた。
ーーーーーーーー結界外
今の光景を見た隆起は手に持っていたジュースを落とし、呟いた。
「おいおいマジかよ…」
清人が木刀を出したところでは、ほぼ半数の人が、清人の悪口を口にしていた。もちろん詩織は今にもその口を塞いでやる、と言う感じだったが、必死に健司が止めるという、いつもの光景が見えていた。
しかし、清人が木刀を折ったことにより、清人に対して怒りあらわにする生徒もでてきた。逃げたと思ったのだろう、だがみんな次の光景を見て言葉を失った。清人がなにをしたのかはわからないが、突然清人の魔力が上がったからだ。しかもちょっとどころではない、魔力量だけなら少しだが、あのヒメをも超えている。おそらくSランクで間違えないと思う。しかも武器まで変わり、隆起たちにはなにが起きているのかまったくわからなかった。
もうだれ一人、清人のことを悪く言う奴はいなかった。詩織も健司もみんな、スクリーンを見たまま固まっている。
そしてみんな、これから起こるであろう戦いに、いつしか釘付けになっていた。Sランク同士の戦いなんて、見たくても見れるものではない。そして静まりかえった中で隆起は小さく呟いた。
「清人、負けんなよ…」
ーーーーーーーーー結界内
ヒメは清人を見てもまったく動じない、ヒメは清人の赤い左目を見ながら、無言でアークサイスを右下に構え、姿勢を少しかがめる。
それを見て、清人も銃剣を二本、前に構える。そしてしばらく見詰め合う・・・そして・・・
「…行くよ」
言葉と同時に駆ける。
今、戦いが始まった。ーーーー